64 / 80
第63話 拉致
しおりを挟む
一方翼は、自室でどうやってこの家から抜け出そうか思案している。
前は影武者作戦がたまたま上手く行ったが、母さんには少し迷惑かけたようだしなぁ……同じ手は通用しないだろう……
やはり真っ向から親父と掛け合うしか他に方法が無いのかなぁ……
いや、これなら行けるかも……
翼は立ち上がり、すぐに母親に駆け寄った。
翼「母さん、申し訳ないんだけどまた頼めないかな?」
翼の母は、気持ちが沈んでいる息子を心配していたので、自分が翼に何かしてやれないものかと思っていたので、翼が自分を頼ってくれることが嬉しかった。
翼の母「良いわよ。翼のやりたいようにやって!翼が後悔しないように」
翼「母さん……ありがとう……」
翼は母の愛情に感謝し、頭を下げた。
翼の母「あ、もしもし?あの、今翼の学校から電話がありまして、翼が呼び出されたものですから向かわせますね」
翼の父「何!?それなら必ず付き添いを付けて見張っておかせるようにしておけ!」
翼の母「はい、わかりました。そのように……」
翼の母は翼にガッツポーズを見せて
翼の母「くれぐれも気を付けてね。行ってらっしゃい!」
翼「母さん、本当にありがとう……じゃ、行ってくる!」
翼は母に軽くハグをして唯一のこの豪邸の出口である玄関へと軽快な足取りで向かった。
玄関のドアを開けると、眩しい日差しが翼を照らす。
翼「久々の日光浴だな……」
そう呟いた瞬間、すぐに黒服の男二人が駆け寄って来た。
黒服「翼様、どこかお出かけでございましょうか?」
翼「えぇ、学校へ行くから送って下さい」
黒服「では、確認致しますので少々お待ち下さい」
その時玄関のドアが開いて翼の母が顔を出す。
翼の母「主人にはもう既に伝えてあります。確認の必要はありません」
そうピシャリと言ったのを黒服の男達は一瞬顔を見合わせたが、また翼の母の逆鱗に触れてはいけないと思い
黒服「かしこまりました。では、翼様を学校へ……」
翼の母「はい、お願いしますね」
そして翼は黒塗りの高級車に乗り込み、翼の通う大学へと向かった。
~翼の通う大学~
翼は車を降り、真っ直ぐ大学の建物内部へと吸い込まれて行った。
そして、黒服達から見えない場所まで入った瞬間、ダッシュで体育館の出入口まで走りグラウンドへ出て、そしてそこから高く囲まれたフェンスの方へと向かう。
フェンスに囲まれた一部に外へと通じる扉があり、そこから外へ出てまたダッシュで駅の方へと走った。
駅に着いた時には翼の心臓は壊れそうな程に暴れまわり、そしてふくらはぎはまるで自分の体の一部では無いかのように力が入らず、バランスを崩して倒れてしまう。しばらく家で軟禁され、なまった身体にはかなり堪えた。
周りにいた通行人が驚き翼に声をかけるが、翼はそれに気遣う余裕もなく立ち上がり、そしてまた歩きだした。
早く……早く行かなきゃ……
少しでも早くあいつに会って……そして俺が守ってやらなきゃ……
きっと歩実は、また必ずキラリに危害を加えようと企んでいるはずだ……
あの女は……
異常な程に執念深いんだから……
翼のシャツは汗でビッショリ濡れ、ズッ、ズッ、ズッと靴がアスファルトを引きずる音を立てながら止まること無く歩き続ける。
しかしこのとき翼には、万が一に備えて翼の父が翼の所持品にGPS信号を発信するマイクロチップを仕込んでいたことは気付いていなかった。
黒服の男達から一定距離を離れると、そのマイクロチップインGPS信号が働き、翼の行方を追うことが出来る。
これは、親心という名の完全なるエゴだが、逆に後で翼の追い風となる。
既に黒服の男達はこの緊急事態に気付いて翼を追っているのだが、翼が電車に乗り込んだ時点で追跡が困難を極めた。
翼は電車を降り、駅を出てキラリの通学路をまた走り出した。
ダメだ……足が鉛のように重い……早く……早くキラリを……
翼は腕時計に目をやり、思うように進まないことにイラつきながら、それでもゆっくりと走り、ようやくキラリの家から約500メートル程の場所までたどり着いた。
そこへ運良く交差点近くの道路を挟んで向かい側に、キラリが歩く姿が目に入った。
翼「キラリ~~~!」
翼は叫んだつもりだったが、疲労で声という声にならず、キラリの耳には届かない。
翼は焦り、横断歩道を渡ってキラリに追い付こうと鉛のように重くなった足を引きずって近付こうとしたその時、見覚えの無いワンボックスカーがキラリのすぐ横に勢いよくつけて、そして車から降りた数人の若者がキラリの口を塞いだと思った瞬間、キラリはぐったりとその場に崩れるのが見えた。
若者集団は、その脱力したキラリを車の中へ引きずり込み、そのまま逃走してしまう。
翼「キラリ~~~~~!!!」
翼は動揺し駆け寄ろうとどんなに力を振り絞ってもキラリとその若者集団の中へ入って行くことは出来なかった。
そこへ黒塗り高級車が翼の目の前に停まり、そして慌てて黒服の男が車から降りて翼に駆け寄った。
黒服「翼様!!!大丈夫ですか!?」
翼は去っていくワンボックスカーを睨み付けながら指差して
翼「あの車を追って下さい!!!キラリが拉致されたんだ!!!」
前は影武者作戦がたまたま上手く行ったが、母さんには少し迷惑かけたようだしなぁ……同じ手は通用しないだろう……
やはり真っ向から親父と掛け合うしか他に方法が無いのかなぁ……
いや、これなら行けるかも……
翼は立ち上がり、すぐに母親に駆け寄った。
翼「母さん、申し訳ないんだけどまた頼めないかな?」
翼の母は、気持ちが沈んでいる息子を心配していたので、自分が翼に何かしてやれないものかと思っていたので、翼が自分を頼ってくれることが嬉しかった。
翼の母「良いわよ。翼のやりたいようにやって!翼が後悔しないように」
翼「母さん……ありがとう……」
翼は母の愛情に感謝し、頭を下げた。
翼の母「あ、もしもし?あの、今翼の学校から電話がありまして、翼が呼び出されたものですから向かわせますね」
翼の父「何!?それなら必ず付き添いを付けて見張っておかせるようにしておけ!」
翼の母「はい、わかりました。そのように……」
翼の母は翼にガッツポーズを見せて
翼の母「くれぐれも気を付けてね。行ってらっしゃい!」
翼「母さん、本当にありがとう……じゃ、行ってくる!」
翼は母に軽くハグをして唯一のこの豪邸の出口である玄関へと軽快な足取りで向かった。
玄関のドアを開けると、眩しい日差しが翼を照らす。
翼「久々の日光浴だな……」
そう呟いた瞬間、すぐに黒服の男二人が駆け寄って来た。
黒服「翼様、どこかお出かけでございましょうか?」
翼「えぇ、学校へ行くから送って下さい」
黒服「では、確認致しますので少々お待ち下さい」
その時玄関のドアが開いて翼の母が顔を出す。
翼の母「主人にはもう既に伝えてあります。確認の必要はありません」
そうピシャリと言ったのを黒服の男達は一瞬顔を見合わせたが、また翼の母の逆鱗に触れてはいけないと思い
黒服「かしこまりました。では、翼様を学校へ……」
翼の母「はい、お願いしますね」
そして翼は黒塗りの高級車に乗り込み、翼の通う大学へと向かった。
~翼の通う大学~
翼は車を降り、真っ直ぐ大学の建物内部へと吸い込まれて行った。
そして、黒服達から見えない場所まで入った瞬間、ダッシュで体育館の出入口まで走りグラウンドへ出て、そしてそこから高く囲まれたフェンスの方へと向かう。
フェンスに囲まれた一部に外へと通じる扉があり、そこから外へ出てまたダッシュで駅の方へと走った。
駅に着いた時には翼の心臓は壊れそうな程に暴れまわり、そしてふくらはぎはまるで自分の体の一部では無いかのように力が入らず、バランスを崩して倒れてしまう。しばらく家で軟禁され、なまった身体にはかなり堪えた。
周りにいた通行人が驚き翼に声をかけるが、翼はそれに気遣う余裕もなく立ち上がり、そしてまた歩きだした。
早く……早く行かなきゃ……
少しでも早くあいつに会って……そして俺が守ってやらなきゃ……
きっと歩実は、また必ずキラリに危害を加えようと企んでいるはずだ……
あの女は……
異常な程に執念深いんだから……
翼のシャツは汗でビッショリ濡れ、ズッ、ズッ、ズッと靴がアスファルトを引きずる音を立てながら止まること無く歩き続ける。
しかしこのとき翼には、万が一に備えて翼の父が翼の所持品にGPS信号を発信するマイクロチップを仕込んでいたことは気付いていなかった。
黒服の男達から一定距離を離れると、そのマイクロチップインGPS信号が働き、翼の行方を追うことが出来る。
これは、親心という名の完全なるエゴだが、逆に後で翼の追い風となる。
既に黒服の男達はこの緊急事態に気付いて翼を追っているのだが、翼が電車に乗り込んだ時点で追跡が困難を極めた。
翼は電車を降り、駅を出てキラリの通学路をまた走り出した。
ダメだ……足が鉛のように重い……早く……早くキラリを……
翼は腕時計に目をやり、思うように進まないことにイラつきながら、それでもゆっくりと走り、ようやくキラリの家から約500メートル程の場所までたどり着いた。
そこへ運良く交差点近くの道路を挟んで向かい側に、キラリが歩く姿が目に入った。
翼「キラリ~~~!」
翼は叫んだつもりだったが、疲労で声という声にならず、キラリの耳には届かない。
翼は焦り、横断歩道を渡ってキラリに追い付こうと鉛のように重くなった足を引きずって近付こうとしたその時、見覚えの無いワンボックスカーがキラリのすぐ横に勢いよくつけて、そして車から降りた数人の若者がキラリの口を塞いだと思った瞬間、キラリはぐったりとその場に崩れるのが見えた。
若者集団は、その脱力したキラリを車の中へ引きずり込み、そのまま逃走してしまう。
翼「キラリ~~~~~!!!」
翼は動揺し駆け寄ろうとどんなに力を振り絞ってもキラリとその若者集団の中へ入って行くことは出来なかった。
そこへ黒塗り高級車が翼の目の前に停まり、そして慌てて黒服の男が車から降りて翼に駆け寄った。
黒服「翼様!!!大丈夫ですか!?」
翼は去っていくワンボックスカーを睨み付けながら指差して
翼「あの車を追って下さい!!!キラリが拉致されたんだ!!!」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる