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第58話 因果
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翼は落胆しながら家に戻った。
翼の母は、翼が浮かない顔で戻ったのを見て、キラリと会うことが出来なかったのかとかける言葉が見つからない。
翼の母「翼……」
翼は母に心配かけていることに気付き、精一杯の作り笑顔で
翼「母さん……ありがとう……」
翼の母「翼、お嬢さんにお会いすることが出来なかったの?」
翼「母さん……もう良いんだ……もうあいつのことは諦めるよ……」
翼の母「どうしたの翼!何かあったの?」
翼は寂しそうな表情で無理に口元だけ笑って見せて、何も言わずに自室に向かって歩いていった。
翼はベッドに転がりボーッと天井を見つめる。
キラリ……お前は……お前だけはそんなやつじゃ無いって思ってたけど……いや、そう信じたかったけど……全部俺の思い違いだったのかなぁ……
俺は何の為にこんなに必死にあいつの為に頑張ろうとしてたんだろ……
親父を説得してお前を迎えに行こうと考えてたのに……
お前と……
ずっとずっと一緒にこれからの人生の苦楽を共に分かち合って生きていきたいと思っていたのに……
俺にはもうお前以上の女は居ないって思ったのに……
それが全部幻に終わってしまうとは……
キラリ……
翼の目から溢れた涙が、耳の中に入って止まったその時、翼のスマホに電話が鳴った。
電話の相手は姉の美麗だった。
美麗「もしもし、翼?今お母さんから連絡があったんだけど、あんたどうしたの?」
翼「うん……実はさ……」
翼は先ほどの出来事を全て美麗に話した。
美麗「あら、呆れた!あんた、しばらくあのキラリちゃんの家に居候しといてそんなことで落ち込む?」
翼「いや、だってさ……」
美麗「それで虚しくなってキラリちゃんに何も声をかけずに帰ってきた……キラリちゃんの想いも考えずに?」
翼「だからあいつが……」
美麗「あんたさぁ……キラリちゃんが今どんな想いで居ると思う?凄く寂しくて、凄く孤独感に打ちのめされて、藁にもすがる思いであんたを待ってるんだよ?偶然見かけた男の車に乗ってたのだって、あの歩実が仕掛けた奴に決まってるでしょ!下手したらその男の悪の手に落とされてるかもしれないのに!キラリちゃんがどれだけ純粋な娘か、あんたならわからないわけがないでしょ!?」
翼「……………」
美麗「あんたはせっかくお母さんが作ってくれた千載一遇のチャンスを棒に振っちゃったのよ!その事の重大さに気付いてる?」
翼は段々と冷静になり、自分の愚かさに気付き始めた。
翼「そう…そうだよな……俺はどうかしてたよ……そう…あいつがそこら辺の女とは違うって、俺が一番感じてたはずなのに……俺があいつを守ってやらなきゃ……今ももしかしたらあいつは大変な目にあってるかもしれないのに……俺はバカだった!」
美麗「で?どうするつもり?」
翼「親父にもう一度談判しに行く!」
美麗「わかってると思うけど、言ってわかる相手じゃないわよ?」
翼「あぁ、何もかも全てを捨てる覚悟でやってみるさ。どのみち俺にはキラリの居ない人生なんて考えられないからさ……」
美麗「最悪、この齊藤家とは絶縁するってことね?」
翼「あぁ、その覚悟を持って説得に臨む」
美麗「わかった。でも、お母さんを悲しませるようなことは悠雅だけにしてよ?」
翼「うん、わかってる」
そう言って翼は父が帰宅するのを待つことにした。
一方翼の父にはある一報が届いていた。
~翼の父の会社~
〝コンコン〟
翼の父の本社ビルの一室、〝会長室〟のドアがノックされ、
秘書「会長、探偵の方がお見えになられました」
翼の父「あぁ、通してくれ!」
〝ガチャ〟
探偵「失礼致します」
翼の父が探偵を応接ソファに座らせた。
翼の父「新たな報告を持ってきてくれたのかな?」
探偵「はい……これがちょっと興味深い事実が発覚したもので……」
翼の父「ほう?勿体ぶらずに教えてくれないか?」
探偵「はい……実はその……過去に会長の窮地を救って命を落とされてしまった不幸な青年……矢崎透という方を覚えていらっしゃいますでしょうか?」
翼の父「それは……もしかして……あの事件のことか?」
あの事件とは
キラリの叔父に当たる矢崎透という青年が、まだ28才という若さで死傷事件に巻き込まれ亡くなってしまった件のことである。
矢崎透は、精神に異常をきたしてしまった当時二十代の若者が、無差別に公共の場で刃物を振り回し、数人の犠牲者を出した残酷な事件に巻き込まれ死亡した。
その時に、翼の父の窮地に割って入り、身を呈して助けた命の恩人が矢崎透だった。
翼の父は、この報告を聞いた瞬間、何か特別な因果関係を感じずにはいられなかった。
翼の父「あぁ、忘れもしないさ……告別式の日に悲しみに打ちひしがれた母親と、彼の妹の泣きじゃくる姿が今でも鮮明に思い出される……自分の身の危険など一切気にせず私を庇って……」
秘書「会長……これは何とも不思議なご縁でございますね。あの時の泣きじゃくる妹さんの一人娘が翼様の想いを寄せられるお嬢さんとは……」
翼の父は、頭を抱え込んでデスクに向かってうなだれていた。
翼の母は、翼が浮かない顔で戻ったのを見て、キラリと会うことが出来なかったのかとかける言葉が見つからない。
翼の母「翼……」
翼は母に心配かけていることに気付き、精一杯の作り笑顔で
翼「母さん……ありがとう……」
翼の母「翼、お嬢さんにお会いすることが出来なかったの?」
翼「母さん……もう良いんだ……もうあいつのことは諦めるよ……」
翼の母「どうしたの翼!何かあったの?」
翼は寂しそうな表情で無理に口元だけ笑って見せて、何も言わずに自室に向かって歩いていった。
翼はベッドに転がりボーッと天井を見つめる。
キラリ……お前は……お前だけはそんなやつじゃ無いって思ってたけど……いや、そう信じたかったけど……全部俺の思い違いだったのかなぁ……
俺は何の為にこんなに必死にあいつの為に頑張ろうとしてたんだろ……
親父を説得してお前を迎えに行こうと考えてたのに……
お前と……
ずっとずっと一緒にこれからの人生の苦楽を共に分かち合って生きていきたいと思っていたのに……
俺にはもうお前以上の女は居ないって思ったのに……
それが全部幻に終わってしまうとは……
キラリ……
翼の目から溢れた涙が、耳の中に入って止まったその時、翼のスマホに電話が鳴った。
電話の相手は姉の美麗だった。
美麗「もしもし、翼?今お母さんから連絡があったんだけど、あんたどうしたの?」
翼「うん……実はさ……」
翼は先ほどの出来事を全て美麗に話した。
美麗「あら、呆れた!あんた、しばらくあのキラリちゃんの家に居候しといてそんなことで落ち込む?」
翼「いや、だってさ……」
美麗「それで虚しくなってキラリちゃんに何も声をかけずに帰ってきた……キラリちゃんの想いも考えずに?」
翼「だからあいつが……」
美麗「あんたさぁ……キラリちゃんが今どんな想いで居ると思う?凄く寂しくて、凄く孤独感に打ちのめされて、藁にもすがる思いであんたを待ってるんだよ?偶然見かけた男の車に乗ってたのだって、あの歩実が仕掛けた奴に決まってるでしょ!下手したらその男の悪の手に落とされてるかもしれないのに!キラリちゃんがどれだけ純粋な娘か、あんたならわからないわけがないでしょ!?」
翼「……………」
美麗「あんたはせっかくお母さんが作ってくれた千載一遇のチャンスを棒に振っちゃったのよ!その事の重大さに気付いてる?」
翼は段々と冷静になり、自分の愚かさに気付き始めた。
翼「そう…そうだよな……俺はどうかしてたよ……そう…あいつがそこら辺の女とは違うって、俺が一番感じてたはずなのに……俺があいつを守ってやらなきゃ……今ももしかしたらあいつは大変な目にあってるかもしれないのに……俺はバカだった!」
美麗「で?どうするつもり?」
翼「親父にもう一度談判しに行く!」
美麗「わかってると思うけど、言ってわかる相手じゃないわよ?」
翼「あぁ、何もかも全てを捨てる覚悟でやってみるさ。どのみち俺にはキラリの居ない人生なんて考えられないからさ……」
美麗「最悪、この齊藤家とは絶縁するってことね?」
翼「あぁ、その覚悟を持って説得に臨む」
美麗「わかった。でも、お母さんを悲しませるようなことは悠雅だけにしてよ?」
翼「うん、わかってる」
そう言って翼は父が帰宅するのを待つことにした。
一方翼の父にはある一報が届いていた。
~翼の父の会社~
〝コンコン〟
翼の父の本社ビルの一室、〝会長室〟のドアがノックされ、
秘書「会長、探偵の方がお見えになられました」
翼の父「あぁ、通してくれ!」
〝ガチャ〟
探偵「失礼致します」
翼の父が探偵を応接ソファに座らせた。
翼の父「新たな報告を持ってきてくれたのかな?」
探偵「はい……これがちょっと興味深い事実が発覚したもので……」
翼の父「ほう?勿体ぶらずに教えてくれないか?」
探偵「はい……実はその……過去に会長の窮地を救って命を落とされてしまった不幸な青年……矢崎透という方を覚えていらっしゃいますでしょうか?」
翼の父「それは……もしかして……あの事件のことか?」
あの事件とは
キラリの叔父に当たる矢崎透という青年が、まだ28才という若さで死傷事件に巻き込まれ亡くなってしまった件のことである。
矢崎透は、精神に異常をきたしてしまった当時二十代の若者が、無差別に公共の場で刃物を振り回し、数人の犠牲者を出した残酷な事件に巻き込まれ死亡した。
その時に、翼の父の窮地に割って入り、身を呈して助けた命の恩人が矢崎透だった。
翼の父は、この報告を聞いた瞬間、何か特別な因果関係を感じずにはいられなかった。
翼の父「あぁ、忘れもしないさ……告別式の日に悲しみに打ちひしがれた母親と、彼の妹の泣きじゃくる姿が今でも鮮明に思い出される……自分の身の危険など一切気にせず私を庇って……」
秘書「会長……これは何とも不思議なご縁でございますね。あの時の泣きじゃくる妹さんの一人娘が翼様の想いを寄せられるお嬢さんとは……」
翼の父は、頭を抱え込んでデスクに向かってうなだれていた。
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