キラリの恋は晴れのち晴れ!

CPM

文字の大きさ
上 下
55 / 80

第54話 世間知らずは罪なこと

しおりを挟む
歩実「もしもし?おじ様?上手く行きましたわよ!あの生意気な女子高生、学校の校門のところで気を失って倒れちゃったんですよう!おじ様にもお見せして差し上げたかったですわ!」

翼の父「いやぁ、ありがとう!やはりウチの嫁には君のような育ちの良いお嬢さんでなければ、私としても色々と心配なんでね……今回の件が全て上手く行った暁には、是非とも歩実お嬢さんを翼の嫁として迎え入れたい!」

歩実「いやですわ、おじ様。私のようなおてんばをそう言ってくださるのは嬉しいのですけど、もし父がそれを聞いたら大笑いされてしまいますわ!」

翼の父「いやいや、翼が度重なる無礼を働いたにも関わらず、それでも翼を受け入れてくれるお嬢さんの懐の深さには本当に頭が下がる思いだよ……翼のことを宜しく頼むよ……」

歩実「おじ様!まだそれは早いと思いますわ!向こうの小娘の心は折ったけども、翼を諦めさせるもう一手が必要だと思います。その計画なんですが……」




~翼の自宅~

美麗「翼~?翼居る~?」

翼が自分の部屋のドアを開けて顔を出す。

翼「姉貴……俺はこの家から一切出れないんだから居るに決まってるだろ!」

美麗が翼の部屋に入って、二人は大きなテーブルに並べられた椅子に腰をかけた。

美麗「翼!お父さんったら歩実を遣ってキラリちゃんに酷い仕打ちを仕掛けてたわよ!」

翼「酷い仕打ち!?」

美麗「えぇ……お父さん、キラリちゃんの方から翼のことを諦めさせるように、まるで翼が歩実と婚約したかのように見せかけて……それで……キラリちゃんは精神が壊れる程のショックを受けたらしいの……ちょっといくら何でもやり方がえげつないと思うわ……だから……キラリちゃんのお母様と少し話して来たの。ごめんね……勝手なことしちゃって……」

翼「姉貴もよくそこまでヅカヅカと入って行けたな!」

美麗「あら、そういう翼だって、随分と長いことあのお宅にお世話になってたじゃない?」

翼「うっ……それは……」

翼は痛い所を突かれたと言わんばかりに顔をしかめる。

美麗「ねぇ、翼……お父さんがこれで止めると思う?」

翼「うーん……いや……きっと更に追い討ちをかけかねないな……これ以上キラリに被害が及ばなければ良いんだが……俺にはキラリを守ってやる術がない……」

美麗「まぁ、キラリちゃんにとっては私は占い師のようだから、どんなことがあっても私の魔法の言葉で立ち直らせることは出来ると思うけど……でも、見ていてあんまりにも可哀想で……本当は翼が直接キラリちゃんに信じて待たせるようなシチュエーションを作れれば良いんだけど……」

翼「なるほど!それなら一つ手はあるんだ!」



~翌日~



キラリは占い師の女性の言葉で、一度は完全に折れた心がだいぶ回復して学校に通えるようにまでなっていた。

そして、その日の放課後、凛花とキラリが家の側まで来て、いつものように二人は別れた。

そしてキラリが自宅の玄関を開けようとした時、不意に後ろから声をかけられ振り向いた。


謎の男性「あの~……キラリちゃん?」

声をかけて来たその謎の男性は、キラリの視線が斜め上を向く程の長身で、翼と比較してもなかなか優劣付け難い程のイケメン、年齢は恐らく二十代前半だろうが、屈託の無い優しい笑顔がもう少し若い印象を与える。声も少し可愛らしい柔らかな喋り方で、一気にキラリの警戒心を解いてしまった。

キラリ「はい………何で私の名前を……」

謎の男性「あっ……ごめんね。俺、フラップ・フリーリーのメンバーの中井っていうんだけど……実は翼から言伝てを頼まれてて……」

キラリ「え!?翼から!?」

謎の男性「そう……今翼は実家に軟禁されてるのは知ってるかな?それで、翼がどうにか家を抜け出すことに成功したから、キラリちゃんをちょっとだけ連れてきて欲しいって頼まれたのさ!」

キラリ「本当に!?本当に翼が!?」

謎の男性「そうだよ!だから、ちょっとだけ時間くれるかな?翼もあんまり時間無いから、もしこのチャンスを逃せば、今度はもう二度と会えなくなるかも知れないって……」

キラリ「わかった!お願いします!ちゃんと翼に会って確かめたいことがあるから!」

謎の男性「じゃあ、行こうか!付いてきて!」

そしてキラリはこの男性の後を付いて歩きだした。


キラリはこの男性の車に乗せられ、しばらく走った後、少し怪しげなホテルが建ち並ぶ場所で降ろされた。

キラリ「本当に翼に会えるの?」

謎の男性「あぁ、翼はそこのホテルに部屋を借りて待ってるんだ!さぁ、急ごう!」

流石のウブなキラリにも、このホテルがどういう場所かぐらいはわかっている。しかし、フラップ・フリーリーのメンバーということまで明かして来たこの男性を疑うには、まだ少し世間の恐ろしさには馴れていなかった。

そして、この謎のイケメン男性がキラリの肩を組んでホテルに入って行こうとする姿を、何者かが遠巻きに待ち伏せして居た事など、キラリが気づくはずも無かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

やさしいキスの見つけ方

神室さち
恋愛
 諸々の事情から、天涯孤独の高校一年生、完璧な優等生である渡辺夏清(わたなべかすみ)は日々の糧を得るために年齢を偽って某所風俗店でバイトをしながら暮らしていた。  そこへ、現れたのは、天敵に近い存在の数学教師にしてクラス担任、井名里礼良(いなりあきら)。  辞めろ辞めないの押し問答の末に、井名里が持ち出した賭けとは?果たして夏清は平穏な日常を取り戻すことができるのか!?  何て言ってても、どこかにある幸せの結末を求めて突っ走ります。  こちらは2001年初出の自サイトに掲載していた小説です。完結済み。サイト閉鎖に伴い移行。若干の加筆修正は入りますがほぼそのままにしようと思っています。20年近く前に書いた作品なのでいろいろ文明の利器が古かったり常識が若干、今と異なったりしています。 20年くらい前の女子高生はこんな感じだったのかー くらいの視点で見ていただければ幸いです。今はこんなの通用しない! と思われる点も多々あるとは思いますが、大筋の変更はしない予定です。 フィクションなので。 多少不愉快な表現等ありますが、ネタバレになる事前の注意は行いません。この表現ついていけない…と思ったらそっとタグを閉じていただけると幸いです。 当時、だいぶ未来の話として書いていた部分がすでに現代なんで…そのあたりはもしかしたら現代に即した感じになるかもしれない。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

ルピナス

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の藍沢直人は後輩の宮原彩花と一緒に、学校の寮の2人部屋で暮らしている。彩花にとって直人は不良達から救ってくれた大好きな先輩。しかし、直人にとって彩花は不良達から救ったことを機に一緒に住んでいる後輩の女の子。直人が一定の距離を保とうとすることに耐えられなくなった彩花は、ある日の夜、手錠を使って直人を束縛しようとする。  そして、直人のクラスメイトである吉岡渚からの告白をきっかけに直人、彩花、渚の恋物語が激しく動き始める。  物語の鍵は、人の心とルピナスの花。たくさんの人達の気持ちが温かく、甘く、そして切なく交錯する青春ラブストーリーシリーズ。 ※特別編-入れ替わりの夏-は『ハナノカオリ』のキャラクターが登場しています。  ※1日3話ずつ更新する予定です。

処理中です...