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第46話 翼の光明
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翼は父に拉致されてから24時間監視された状態で軟禁され、自由に行動することはおろか、すべてのアクセスを遮断されていた。
~翼の自宅~
翼の母「ねぇ、翼………美麗(みれい)から聞いたんだけど、あなた家を飛び出してからずっと他所のお家にお世話になってたんですって?」
美麗とは翼の姉の名前である。
翼「あぁ……」
母「どういったお知り合いなの?お友達のお家?」
翼「いや………たまたま俺が絡まれてる時に助けてもらった縁があって、それからだよ……」
母「まぁ!それだけでこんなにも長い間翼を置いて下さったの?」
翼「そうだよ……何て言うか……俺………今まであんなアットホームな家庭を見たこと無いから………凄く新鮮だったっていうか………」
母「ごめんね翼………お父さんがあなたに厳しく当たるのは、あなたがいつかウチの会社で重役を担って欲しくて………だから……」
翼「母さん……それは俺だってわかってるさ………ただ………親父は何でもかんでも自分の思い通りになると思って勝手過ぎるんだよ!兄貴は親父の思った通りになったかも知れないけど、俺は絶対会社を継ぐとか向かないんだよ!俺は俺なんだ!俺のことは俺が自分で決めたいんだよ!」
母「翼………それはよくわかってるわ………私だって勿論翼の意思を尊重してあげたいの………でも………」
そのとき翼の姉がやって来た。
美麗「お母さんただいま~!」
母「あら、美麗!来てくれたのね」
美麗「翼………やっぱりお父さんに捕まっちゃったわね………」
翼「……………」
美麗「翼、さっきお父さんと話して来たわ………」
翼「それで?」
美麗「まぁ………結果は言わなくてもわかるでしょ?私も何とか翼の意向に沿うように話を持ってくつもりだったけど、お父さん全然折れる気は無いわ………」
翼「だろうね………」
美麗「ねぇ、翼………あんたがどんなに頑張ってもお父さんを変えることは出来ないわよ!今までだってあんたが抵抗すればするほどお父さんは意地になってあんたのこと抑えつけて来たでしょ?だったら………もう少し利口に立ち回った方が賢いと思わない?」
母「ねぇ、翼………私もそう思うの………翼だっていつまでもこの家に缶詰め状態で居るのは辛いだけでしょ?」
翼「それって………俺に人生全て諦めろって言ってるようなもんだよな………何もかも棄てて………何もかも諦めて………一生会社という牢獄の中で生きていけと………」
母「翼………」
美麗「でもさ、考え方一つだと思うよ?牢獄って言うけど、行く行くは自分の会社なんだし、翼なんか人に使われるのが苦手なタイプなんだから、むしろ条件的には悪く無いと思う」
母「そうよ翼……ウチの会社は磐石だから、ある程度は社員の方々にお任せして、最終的な方向性だけあなたが舵を取るだけなの………あなたが自由に居たいのなら、それもある程度叶うと思うわよ?」
翼「母さん……姉さん……それでも俺は他に………」
美麗「何かやりたいことがあるの?」
翼「いや………そういう訳じゃ無いんだけど………」
美麗「もしかして……翼……お世話になったお宅に居るお嬢さんに未練が?」
翼「………」
母「あら!翼………そこのお嬢様とそういうご縁があるのかしら?」
翼「縁っていうか………」
美麗「そうだ!翼、それよ!」
翼「それって何だよ………」
美麗「お父さんは何が何でも翼に継がせたい。そして、翼はどうしてもそのお嬢さんと離れたくない。だったらそこを逆手に取れば良いじゃない!」
翼「え?」
美麗「お父さんに条件として提示するのよ!翼が会社を継ぐ条件としてそこのお嬢さんを迎え入れたいって!そうすれば翼だってお嬢さんと一緒になれるし、無駄な労力遣ってお父さんに抵抗することも無くなるじゃない?」
翼「そうは言っても……」
母「何?相手のお嬢様は翼のことをそういう目では見て頂いて無いのかしら?」
翼「それは………ハッキリと聞いて無いから………」
美麗「じゃあお嬢さん次第で翼はお父さんの条件が呑めるっていうこと?」
翼は葛藤しているが、翼自身も父の権力を笠に着たやり方に抵抗するのは骨が折れることをわかっているだけに、美麗の提案は心が揺れる想いだった。
しかし、堅物の父がキラリのことを知れば、先ず間違いなく猛反対するのは火を見るより明らかなことだと思っていた。
翼「悪いけど……多分そう上手くは行かないと思う……」
母「それは……どうしてかしら?」
美麗「もしかしてお父さんが認めてくれなそうなお嬢さんなの?」
翼「……………」
美麗「なるほどね……一度私がその娘のこと確かめてあげる!」
翼「えぇ!?」
美麗「大丈夫!翼の姉だって気付かれなきゃいいんでしょ?」
翼「いや……だけど……キラリは一度姉貴のことを見てるらしいから………」
美麗「あら………どこで?私見られた覚えが無いけど……」
翼「一度喫茶店で落ち合ったことがあるだろ?あの時見られてたらしい……」
美麗「あらら……それじゃあ、その娘に嫉妬させちゃったんじゃない?」
翼「まあね……ちょっと揉めたよ……」
母「私も一度お会いしてみたいわ………」
翼「や……止めてくれよ!恥ずかしい………とりあえずもう少し考えさせてくれよ」
~翼の自宅~
翼の母「ねぇ、翼………美麗(みれい)から聞いたんだけど、あなた家を飛び出してからずっと他所のお家にお世話になってたんですって?」
美麗とは翼の姉の名前である。
翼「あぁ……」
母「どういったお知り合いなの?お友達のお家?」
翼「いや………たまたま俺が絡まれてる時に助けてもらった縁があって、それからだよ……」
母「まぁ!それだけでこんなにも長い間翼を置いて下さったの?」
翼「そうだよ……何て言うか……俺………今まであんなアットホームな家庭を見たこと無いから………凄く新鮮だったっていうか………」
母「ごめんね翼………お父さんがあなたに厳しく当たるのは、あなたがいつかウチの会社で重役を担って欲しくて………だから……」
翼「母さん……それは俺だってわかってるさ………ただ………親父は何でもかんでも自分の思い通りになると思って勝手過ぎるんだよ!兄貴は親父の思った通りになったかも知れないけど、俺は絶対会社を継ぐとか向かないんだよ!俺は俺なんだ!俺のことは俺が自分で決めたいんだよ!」
母「翼………それはよくわかってるわ………私だって勿論翼の意思を尊重してあげたいの………でも………」
そのとき翼の姉がやって来た。
美麗「お母さんただいま~!」
母「あら、美麗!来てくれたのね」
美麗「翼………やっぱりお父さんに捕まっちゃったわね………」
翼「……………」
美麗「翼、さっきお父さんと話して来たわ………」
翼「それで?」
美麗「まぁ………結果は言わなくてもわかるでしょ?私も何とか翼の意向に沿うように話を持ってくつもりだったけど、お父さん全然折れる気は無いわ………」
翼「だろうね………」
美麗「ねぇ、翼………あんたがどんなに頑張ってもお父さんを変えることは出来ないわよ!今までだってあんたが抵抗すればするほどお父さんは意地になってあんたのこと抑えつけて来たでしょ?だったら………もう少し利口に立ち回った方が賢いと思わない?」
母「ねぇ、翼………私もそう思うの………翼だっていつまでもこの家に缶詰め状態で居るのは辛いだけでしょ?」
翼「それって………俺に人生全て諦めろって言ってるようなもんだよな………何もかも棄てて………何もかも諦めて………一生会社という牢獄の中で生きていけと………」
母「翼………」
美麗「でもさ、考え方一つだと思うよ?牢獄って言うけど、行く行くは自分の会社なんだし、翼なんか人に使われるのが苦手なタイプなんだから、むしろ条件的には悪く無いと思う」
母「そうよ翼……ウチの会社は磐石だから、ある程度は社員の方々にお任せして、最終的な方向性だけあなたが舵を取るだけなの………あなたが自由に居たいのなら、それもある程度叶うと思うわよ?」
翼「母さん……姉さん……それでも俺は他に………」
美麗「何かやりたいことがあるの?」
翼「いや………そういう訳じゃ無いんだけど………」
美麗「もしかして……翼……お世話になったお宅に居るお嬢さんに未練が?」
翼「………」
母「あら!翼………そこのお嬢様とそういうご縁があるのかしら?」
翼「縁っていうか………」
美麗「そうだ!翼、それよ!」
翼「それって何だよ………」
美麗「お父さんは何が何でも翼に継がせたい。そして、翼はどうしてもそのお嬢さんと離れたくない。だったらそこを逆手に取れば良いじゃない!」
翼「え?」
美麗「お父さんに条件として提示するのよ!翼が会社を継ぐ条件としてそこのお嬢さんを迎え入れたいって!そうすれば翼だってお嬢さんと一緒になれるし、無駄な労力遣ってお父さんに抵抗することも無くなるじゃない?」
翼「そうは言っても……」
母「何?相手のお嬢様は翼のことをそういう目では見て頂いて無いのかしら?」
翼「それは………ハッキリと聞いて無いから………」
美麗「じゃあお嬢さん次第で翼はお父さんの条件が呑めるっていうこと?」
翼は葛藤しているが、翼自身も父の権力を笠に着たやり方に抵抗するのは骨が折れることをわかっているだけに、美麗の提案は心が揺れる想いだった。
しかし、堅物の父がキラリのことを知れば、先ず間違いなく猛反対するのは火を見るより明らかなことだと思っていた。
翼「悪いけど……多分そう上手くは行かないと思う……」
母「それは……どうしてかしら?」
美麗「もしかしてお父さんが認めてくれなそうなお嬢さんなの?」
翼「……………」
美麗「なるほどね……一度私がその娘のこと確かめてあげる!」
翼「えぇ!?」
美麗「大丈夫!翼の姉だって気付かれなきゃいいんでしょ?」
翼「いや……だけど……キラリは一度姉貴のことを見てるらしいから………」
美麗「あら………どこで?私見られた覚えが無いけど……」
翼「一度喫茶店で落ち合ったことがあるだろ?あの時見られてたらしい……」
美麗「あらら……それじゃあ、その娘に嫉妬させちゃったんじゃない?」
翼「まあね……ちょっと揉めたよ……」
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