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第26話 どこまでも翼の思うつぼ
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~ダブルデート当日~
どんよりとした冴えない天候の中、凛花と下級生の男子、城 寿(じょうひさし)、そしてキラリと翼はダブルデートで映画鑑賞をしに映画館に来ていた。
四人は場内で並んで席に着いた。
凛花「ずっとこのラブロマンスの映画観たかったんだよねぇ」
キラリ「すっごく面白そうだもんね!」
寿「この映画けっこうラスト泣けるみたいっすよ!友達の彼女とか号泣したって」
凛花「だよねぇ!みんな絶対泣くとか言ってたもん!」
三人が盛り上がる中、翼だけは無関心な様子だった。
キラリ「翼は女心とかわかんないし、恋愛にも疎(うと)いからこういうのは興味ないんでしょう?」
翼「別に興味ないワケじゃ無いけど……」
寿「男はどっちかっていうと胸キュンよりも男らしさを求めますもんね!」
男らしさ?男らしさで言ったらキラリの方がよっぽど男らしいだろ…
翼は心の中で呟く。
やがて場内は照明が消えてまっ暗闇になり映画がスクリーンに映し出された。
そして話が進むにつれ凛花とキラリが目に涙を溜めながら鑑賞している。寿も切ない表情で鑑賞していたが、翼一人だけ眠りに落ちていた。
そして映画が終わりエンドロールが流れはじめて、キラリがふと横に居る翼に目をやると、翼はコックリコックリとキラリの肩に頭を乗せていた。
キラリは翼の頭を手で持ち上げて
キラリ「翼!翼!」
と起こす。
翼「ん…んん~…もう終わった?面白かったね……」
キラリは全くムードが無いことに腹が立った。
キラリ「もう!翼はいつも全然ムードが無いんだよ!」
凛花「まぁまぁ、キラリ…ここは映画館だから…」
凛花がキラリをなだめた。
四人は会場を出て歩き出した。
寿「今度映画観るときはアクションものにしましょうか!」
寿もすかさずフォローを入れる。
凛花は寿の気遣いや優しさに、徐々に心を奪われていく。
キラリ「翼ももうちょっと寿のこういうところ見習えよな!」
寿「いやぁ…翼さんのような容姿端麗で非の打ち所が無い人の方が羨ましいですよ…僕なんて何一つ秀でてるものなんかありませんから…」
凛花「寿は謙虚だね!」
キラリ「凛花、寿のこと好きになっちゃったんじゃない?」
凛花は恥ずかしそうに笑っている。
寿「凛花さん…」
寿も恥ずかしいような嬉しいような表情で上目遣いに凛花を見ている。
凛花達とキラリ達はここで別れ、キラリ達は家に戻った。
キラリ「ねぇ翼…寿のことどう思う?」
翼「どうって…俺は男だからあいつには興味ねぇよ…」
キラリ「んなことはわかってんだよ!そうじゃなくて、凛花にとってどうかって…」
翼「どうかな…俺はオススメ出来ないけどな…」
キラリ「どうして?あの子凄くいい子だったじゃん!」
翼「お前はそう思うか?」
キラリ「思うよ!少なくとも翼よりはよっぽど…だってさ、翼に対しても気遣いとかしてたし、映画観てる時だって感動して涙を目に浮かべてさ。きっとあの子は優しい子だと思うよ」
翼「そうか。ま、お前がそう思うならそういう優しい彼氏早く探せよ」
翼は全く興味がないと言わんばかりの冷めた表情でそう言った。
キラリ「そうだね!早く私の元へ優しくて素敵なイケメン王子様現れないかなぁ…」
翼「キラリ、これ知ってるか?素敵な人とめぐりあいたかったら、先ずは自分がその素敵な人と釣り合うように自分を磨かなきゃいけないんだぞ!そうすりゃ自然と向こうからそういう人が寄って来るもんなんだよ」
キラリ「つ…翼…けっこう痛いところ突いてくるな…」
翼「ちょっとあの寿って奴に引っ掛かるところがあるんだよなぁ…」
キラリ「もしかして翼…あんまり寿がいい人って言うから嫉妬してる?」
翼「あぁ…悪い…俺は何一つあいつに劣ってないから何の嫉妬も沸き上がって来ねぇなぁ」
キラリ「はぁ!?翼が何一つ劣ってない!?どんだけ自信過剰なんだよ!」
翼「キラリ…俺は俺だし、あいつはあいつだ!俺の良さはお前が一番よくわかってるだろ!」
キラリ「……………翼…そういうことよく自分から言えるよな…」
翼「それがお前の惚れた男なんだよ!」
キラリ「だっ……だから絶対それは無いって!私はもっと優しくてイケメンの…」
キラリが言いかけたとき、翼はキラリの頭を軽く押さえてニコッと笑って部屋を出て行ってしまった。
あ…あいつ~…またそうやってはぐらかして私をおちょくってる!
もう追わない!絶対追ってやらないんだから!
そう心の中で呟いて机に向かって椅子に座った。
そして何気に机に目をやると、付箋紙が貼られていることに気付いた。
〝引き出しを見ろ!〟
そう書かれているのを見て、キラリは机の引き出しをあちこち引き出してみた。
すると…
先日返って来たテストの答案用紙に、一枚の紙が上から貼られており、そこには大きな字でこう書かれていた。
〝キラリ!40点おめでとう!お前はやれば出来る!〟
キラリの高校生活始まって以来の初の点数だった。それを翼はこっそり見て激励していたのだ。
あいつ………
キラリは結局翼の虜(とりこ)になってしまうのだった。
どんよりとした冴えない天候の中、凛花と下級生の男子、城 寿(じょうひさし)、そしてキラリと翼はダブルデートで映画鑑賞をしに映画館に来ていた。
四人は場内で並んで席に着いた。
凛花「ずっとこのラブロマンスの映画観たかったんだよねぇ」
キラリ「すっごく面白そうだもんね!」
寿「この映画けっこうラスト泣けるみたいっすよ!友達の彼女とか号泣したって」
凛花「だよねぇ!みんな絶対泣くとか言ってたもん!」
三人が盛り上がる中、翼だけは無関心な様子だった。
キラリ「翼は女心とかわかんないし、恋愛にも疎(うと)いからこういうのは興味ないんでしょう?」
翼「別に興味ないワケじゃ無いけど……」
寿「男はどっちかっていうと胸キュンよりも男らしさを求めますもんね!」
男らしさ?男らしさで言ったらキラリの方がよっぽど男らしいだろ…
翼は心の中で呟く。
やがて場内は照明が消えてまっ暗闇になり映画がスクリーンに映し出された。
そして話が進むにつれ凛花とキラリが目に涙を溜めながら鑑賞している。寿も切ない表情で鑑賞していたが、翼一人だけ眠りに落ちていた。
そして映画が終わりエンドロールが流れはじめて、キラリがふと横に居る翼に目をやると、翼はコックリコックリとキラリの肩に頭を乗せていた。
キラリは翼の頭を手で持ち上げて
キラリ「翼!翼!」
と起こす。
翼「ん…んん~…もう終わった?面白かったね……」
キラリは全くムードが無いことに腹が立った。
キラリ「もう!翼はいつも全然ムードが無いんだよ!」
凛花「まぁまぁ、キラリ…ここは映画館だから…」
凛花がキラリをなだめた。
四人は会場を出て歩き出した。
寿「今度映画観るときはアクションものにしましょうか!」
寿もすかさずフォローを入れる。
凛花は寿の気遣いや優しさに、徐々に心を奪われていく。
キラリ「翼ももうちょっと寿のこういうところ見習えよな!」
寿「いやぁ…翼さんのような容姿端麗で非の打ち所が無い人の方が羨ましいですよ…僕なんて何一つ秀でてるものなんかありませんから…」
凛花「寿は謙虚だね!」
キラリ「凛花、寿のこと好きになっちゃったんじゃない?」
凛花は恥ずかしそうに笑っている。
寿「凛花さん…」
寿も恥ずかしいような嬉しいような表情で上目遣いに凛花を見ている。
凛花達とキラリ達はここで別れ、キラリ達は家に戻った。
キラリ「ねぇ翼…寿のことどう思う?」
翼「どうって…俺は男だからあいつには興味ねぇよ…」
キラリ「んなことはわかってんだよ!そうじゃなくて、凛花にとってどうかって…」
翼「どうかな…俺はオススメ出来ないけどな…」
キラリ「どうして?あの子凄くいい子だったじゃん!」
翼「お前はそう思うか?」
キラリ「思うよ!少なくとも翼よりはよっぽど…だってさ、翼に対しても気遣いとかしてたし、映画観てる時だって感動して涙を目に浮かべてさ。きっとあの子は優しい子だと思うよ」
翼「そうか。ま、お前がそう思うならそういう優しい彼氏早く探せよ」
翼は全く興味がないと言わんばかりの冷めた表情でそう言った。
キラリ「そうだね!早く私の元へ優しくて素敵なイケメン王子様現れないかなぁ…」
翼「キラリ、これ知ってるか?素敵な人とめぐりあいたかったら、先ずは自分がその素敵な人と釣り合うように自分を磨かなきゃいけないんだぞ!そうすりゃ自然と向こうからそういう人が寄って来るもんなんだよ」
キラリ「つ…翼…けっこう痛いところ突いてくるな…」
翼「ちょっとあの寿って奴に引っ掛かるところがあるんだよなぁ…」
キラリ「もしかして翼…あんまり寿がいい人って言うから嫉妬してる?」
翼「あぁ…悪い…俺は何一つあいつに劣ってないから何の嫉妬も沸き上がって来ねぇなぁ」
キラリ「はぁ!?翼が何一つ劣ってない!?どんだけ自信過剰なんだよ!」
翼「キラリ…俺は俺だし、あいつはあいつだ!俺の良さはお前が一番よくわかってるだろ!」
キラリ「……………翼…そういうことよく自分から言えるよな…」
翼「それがお前の惚れた男なんだよ!」
キラリ「だっ……だから絶対それは無いって!私はもっと優しくてイケメンの…」
キラリが言いかけたとき、翼はキラリの頭を軽く押さえてニコッと笑って部屋を出て行ってしまった。
あ…あいつ~…またそうやってはぐらかして私をおちょくってる!
もう追わない!絶対追ってやらないんだから!
そう心の中で呟いて机に向かって椅子に座った。
そして何気に机に目をやると、付箋紙が貼られていることに気付いた。
〝引き出しを見ろ!〟
そう書かれているのを見て、キラリは机の引き出しをあちこち引き出してみた。
すると…
先日返って来たテストの答案用紙に、一枚の紙が上から貼られており、そこには大きな字でこう書かれていた。
〝キラリ!40点おめでとう!お前はやれば出来る!〟
キラリの高校生活始まって以来の初の点数だった。それを翼はこっそり見て激励していたのだ。
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