キラリの恋は晴れのち晴れ!

CPM

文字の大きさ
上 下
13 / 80

第12話 報酬の提案

しおりを挟む
薫は朝のドタバタした家事と清の世話を終え送り出したあと、身支度を整えて時計を見た。

ハァ~…9時か…

薫は下から2階に居る翼に声をかけた。

薫「翼~?起きてる~?もう行けるよ~」

翼「はぁい!」

そう言って翼が階段から降りて来る。薫は玄関を出て先に車のエンジンをかけ待っている。そのあとすぐに翼も乗り込んできて駅前のデパートへと向かった。
薫が車の中で翼に聞いた。

薫「翼、昨日キラリと何かあった?キラリはけっこうワガママだから翼にはいろいろ負担になってるとは思うんだけど、あの通り素直じゃないからめんどくさく思えるかもしれないけど、わりと可愛い所もあるんだよ?」

翼「それはわかってますよ。別に俺も大して何も気にしてないし、キラリはわかりやすいから、つい面白くてからかっちゃって…ちょっと悪のりし過ぎてあいつを怒らせちゃったみたいっすね…」

薫「そっか。翼はキラリのことわかってくれてんだね。なら安心した」

翼「昨日…キラリの部屋片付けた時に本棚に少女マンガがあったの見て…それであいつは家庭教師に憧れてんのかな?って思って…」

薫「気付いた?あの娘さぁ…純粋ですごく乙女な一面があって、小学生の頃にあの漫画が欲しいって言うから買ってあげたら毎日毎日読んでてさぁ、もういい加減セリフ全部覚えてんじゃ無いの?っていうくらいあの本にとりつかれて…どこに行くんでも車の中でも常にあの本をバッグに入れて持ち歩いてたの…だから…あの娘にとって家庭教師ってすごく特別な存在なのよ」

翼「なるほど…やっぱそうですか…アイツやたらあの本の家庭教師像を意識してる感があったから、もしかしたら俺にあの本の中の家庭教師を求めてるんじゃないかなってのは感じてました」

薫「そうね、私もそう思うよ。だからって翼にあんな甘々な家庭教師を演じて欲しいなんて思っちゃいないよ?ただ…少しくらいはそんな甘い想い出を作って上げてくれたらって…やっぱ私も親バカだからさ…そんな風にちょっと思ったりするわけよ」

翼「………自信無いすけどね」

薫「翼はキラリには全く興味ない?」

翼「んー…どうかな?まだわかんないっすね…でも、俺…ああいう素直じゃなくて甘ったれで、わかりやすいのに必死で自分の気持ち隠すような純粋で真っ直ぐなやつは嫌いじゃ無いっすけどね」




~キラリの学校~


キラリはこの日、授業中も憂鬱に過ごしていた。

凛花「キラリ?ねぇキラリ?」

凛花は次の授業が始まっているにもかかわらず前の授業の教科書をそのまま机の上に置いてあるキラリに気付き、小声で声をかけた。

キラリ「え?」

凛花「え?じゃないよ!もう次の授業始まってるよ?」

キラリ「あ…あぁ…」

キラリは教科書を手に取りボーッと眺めている。

凛花はあきれていた。

ダメだこりゃ…全然心ここに在らず…こんなんじゃ家庭教師ついたって成績うんぬんの次元じゃないわ…


キラリは昨夜の一つの出来事を思い出していた。

翼…昨日どうしていきなり後ろから抱きついて来たんだろ?私にそんな気も無いのに…変に気を持たせるようなことしてきて…ああいうことされると返って辛くなるじゃん…興味が無いならとことん突き放してくれたら良いのに…期待してもしょうがないって分かってても…あいつは王子様なんかじゃない…悪魔だ!


~キラリ帰宅~

キラリは家の玄関ドアを開けていつものように薫に声をかける。

キラリ「母ちゃんただいま~」

すぐに薫の声が帰って来た。

薫「キラリお帰り~!」

キラリ「おっ!今日は母ちゃん居るじゃん!」

キラリはたまに薫が家に居ると妙にテンションが上がる。

キラリ「ねぇねぇ母ちゃん?翼は?」

薫はキラリが朝あんなにふてくされていたのに、すぐに翼を探す姿を見てつい可笑しくなって笑ってしまった。

薫「フフフフフッ…」

キラリ「母ちゃん何?なにかおかしかった?」

薫「だって…」

そのとき不意に翼がキラリの後ろから声をかけてきた。

翼「おっ、キラリお帰り…」

キラリ「………ただいま」

薫はキラリがついさっきまで翼を気にかけていたのに、翼を見ると急に素っ気ない態度を取る姿にとうとう我慢出来ずに吹き出してしまった。

薫「あははははははっ…」

キラリ「母ちゃん何!?さっきから気持ち悪いよ!?」

薫「いや…別に…プッ…フハハハハハハ…」

薫は可笑しくて笑いが止まらない。
翼もこの状況が呑み込めず不思議そうに薫を見ていた。

翼「キラリ、早速家庭教師してやるから上に行くぞ!」

キラリ「うん…」

キラリはうつむき加減に階段を上がって行く。
キラリは鞄を床に下ろしてすぐにベッドに寝転んだ。

翼「キラリ…お前やる気あんの?」

キラリ「一応ね…」

翼はキラリのふてくされた態度を見てしばらく考え込んでから

翼「そうだ!キラリ?ちょっと提案なんだけどな…お前がステップアップする度に俺が何か報酬としてお前の頼みを聞いてやるってのはどうだ?」

キラリ「報酬って?例えば?」

翼「まぁ、常識の範疇(はんちゅう)でその目標達成率に応じて俺がお前の言うこと何でも聞いてやるよ!」

キラリ「範疇って?」

翼「………と…とりあえず国語から勉強しよっか…日本語通じないと勉強の問題どころか会話すら成立しないからな…」

キラリ「例えばどんなことなら聞いてくれるの?」

翼「ラスボスまで倒したら何でも聞いてやるよ!」

キラリ「本当!?」

翼「あ…あぁ…本当だ…」

翼は目を輝かせるキラリを見て少し不安を覚えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

ルピナス

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の藍沢直人は後輩の宮原彩花と一緒に、学校の寮の2人部屋で暮らしている。彩花にとって直人は不良達から救ってくれた大好きな先輩。しかし、直人にとって彩花は不良達から救ったことを機に一緒に住んでいる後輩の女の子。直人が一定の距離を保とうとすることに耐えられなくなった彩花は、ある日の夜、手錠を使って直人を束縛しようとする。  そして、直人のクラスメイトである吉岡渚からの告白をきっかけに直人、彩花、渚の恋物語が激しく動き始める。  物語の鍵は、人の心とルピナスの花。たくさんの人達の気持ちが温かく、甘く、そして切なく交錯する青春ラブストーリーシリーズ。 ※特別編-入れ替わりの夏-は『ハナノカオリ』のキャラクターが登場しています。  ※1日3話ずつ更新する予定です。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

やさしいキスの見つけ方

神室さち
恋愛
 諸々の事情から、天涯孤独の高校一年生、完璧な優等生である渡辺夏清(わたなべかすみ)は日々の糧を得るために年齢を偽って某所風俗店でバイトをしながら暮らしていた。  そこへ、現れたのは、天敵に近い存在の数学教師にしてクラス担任、井名里礼良(いなりあきら)。  辞めろ辞めないの押し問答の末に、井名里が持ち出した賭けとは?果たして夏清は平穏な日常を取り戻すことができるのか!?  何て言ってても、どこかにある幸せの結末を求めて突っ走ります。  こちらは2001年初出の自サイトに掲載していた小説です。完結済み。サイト閉鎖に伴い移行。若干の加筆修正は入りますがほぼそのままにしようと思っています。20年近く前に書いた作品なのでいろいろ文明の利器が古かったり常識が若干、今と異なったりしています。 20年くらい前の女子高生はこんな感じだったのかー くらいの視点で見ていただければ幸いです。今はこんなの通用しない! と思われる点も多々あるとは思いますが、大筋の変更はしない予定です。 フィクションなので。 多少不愉快な表現等ありますが、ネタバレになる事前の注意は行いません。この表現ついていけない…と思ったらそっとタグを閉じていただけると幸いです。 当時、だいぶ未来の話として書いていた部分がすでに現代なんで…そのあたりはもしかしたら現代に即した感じになるかもしれない。

処理中です...