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第12話 報酬の提案
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薫は朝のドタバタした家事と清の世話を終え送り出したあと、身支度を整えて時計を見た。
ハァ~…9時か…
薫は下から2階に居る翼に声をかけた。
薫「翼~?起きてる~?もう行けるよ~」
翼「はぁい!」
そう言って翼が階段から降りて来る。薫は玄関を出て先に車のエンジンをかけ待っている。そのあとすぐに翼も乗り込んできて駅前のデパートへと向かった。
薫が車の中で翼に聞いた。
薫「翼、昨日キラリと何かあった?キラリはけっこうワガママだから翼にはいろいろ負担になってるとは思うんだけど、あの通り素直じゃないからめんどくさく思えるかもしれないけど、わりと可愛い所もあるんだよ?」
翼「それはわかってますよ。別に俺も大して何も気にしてないし、キラリはわかりやすいから、つい面白くてからかっちゃって…ちょっと悪のりし過ぎてあいつを怒らせちゃったみたいっすね…」
薫「そっか。翼はキラリのことわかってくれてんだね。なら安心した」
翼「昨日…キラリの部屋片付けた時に本棚に少女マンガがあったの見て…それであいつは家庭教師に憧れてんのかな?って思って…」
薫「気付いた?あの娘さぁ…純粋ですごく乙女な一面があって、小学生の頃にあの漫画が欲しいって言うから買ってあげたら毎日毎日読んでてさぁ、もういい加減セリフ全部覚えてんじゃ無いの?っていうくらいあの本にとりつかれて…どこに行くんでも車の中でも常にあの本をバッグに入れて持ち歩いてたの…だから…あの娘にとって家庭教師ってすごく特別な存在なのよ」
翼「なるほど…やっぱそうですか…アイツやたらあの本の家庭教師像を意識してる感があったから、もしかしたら俺にあの本の中の家庭教師を求めてるんじゃないかなってのは感じてました」
薫「そうね、私もそう思うよ。だからって翼にあんな甘々な家庭教師を演じて欲しいなんて思っちゃいないよ?ただ…少しくらいはそんな甘い想い出を作って上げてくれたらって…やっぱ私も親バカだからさ…そんな風にちょっと思ったりするわけよ」
翼「………自信無いすけどね」
薫「翼はキラリには全く興味ない?」
翼「んー…どうかな?まだわかんないっすね…でも、俺…ああいう素直じゃなくて甘ったれで、わかりやすいのに必死で自分の気持ち隠すような純粋で真っ直ぐなやつは嫌いじゃ無いっすけどね」
~キラリの学校~
キラリはこの日、授業中も憂鬱に過ごしていた。
凛花「キラリ?ねぇキラリ?」
凛花は次の授業が始まっているにもかかわらず前の授業の教科書をそのまま机の上に置いてあるキラリに気付き、小声で声をかけた。
キラリ「え?」
凛花「え?じゃないよ!もう次の授業始まってるよ?」
キラリ「あ…あぁ…」
キラリは教科書を手に取りボーッと眺めている。
凛花はあきれていた。
ダメだこりゃ…全然心ここに在らず…こんなんじゃ家庭教師ついたって成績うんぬんの次元じゃないわ…
キラリは昨夜の一つの出来事を思い出していた。
翼…昨日どうしていきなり後ろから抱きついて来たんだろ?私にそんな気も無いのに…変に気を持たせるようなことしてきて…ああいうことされると返って辛くなるじゃん…興味が無いならとことん突き放してくれたら良いのに…期待してもしょうがないって分かってても…あいつは王子様なんかじゃない…悪魔だ!
~キラリ帰宅~
キラリは家の玄関ドアを開けていつものように薫に声をかける。
キラリ「母ちゃんただいま~」
すぐに薫の声が帰って来た。
薫「キラリお帰り~!」
キラリ「おっ!今日は母ちゃん居るじゃん!」
キラリはたまに薫が家に居ると妙にテンションが上がる。
キラリ「ねぇねぇ母ちゃん?翼は?」
薫はキラリが朝あんなにふてくされていたのに、すぐに翼を探す姿を見てつい可笑しくなって笑ってしまった。
薫「フフフフフッ…」
キラリ「母ちゃん何?なにかおかしかった?」
薫「だって…」
そのとき不意に翼がキラリの後ろから声をかけてきた。
翼「おっ、キラリお帰り…」
キラリ「………ただいま」
薫はキラリがついさっきまで翼を気にかけていたのに、翼を見ると急に素っ気ない態度を取る姿にとうとう我慢出来ずに吹き出してしまった。
薫「あははははははっ…」
キラリ「母ちゃん何!?さっきから気持ち悪いよ!?」
薫「いや…別に…プッ…フハハハハハハ…」
薫は可笑しくて笑いが止まらない。
翼もこの状況が呑み込めず不思議そうに薫を見ていた。
翼「キラリ、早速家庭教師してやるから上に行くぞ!」
キラリ「うん…」
キラリはうつむき加減に階段を上がって行く。
キラリは鞄を床に下ろしてすぐにベッドに寝転んだ。
翼「キラリ…お前やる気あんの?」
キラリ「一応ね…」
翼はキラリのふてくされた態度を見てしばらく考え込んでから
翼「そうだ!キラリ?ちょっと提案なんだけどな…お前がステップアップする度に俺が何か報酬としてお前の頼みを聞いてやるってのはどうだ?」
キラリ「報酬って?例えば?」
翼「まぁ、常識の範疇(はんちゅう)でその目標達成率に応じて俺がお前の言うこと何でも聞いてやるよ!」
キラリ「範疇って?」
翼「………と…とりあえず国語から勉強しよっか…日本語通じないと勉強の問題どころか会話すら成立しないからな…」
キラリ「例えばどんなことなら聞いてくれるの?」
翼「ラスボスまで倒したら何でも聞いてやるよ!」
キラリ「本当!?」
翼「あ…あぁ…本当だ…」
翼は目を輝かせるキラリを見て少し不安を覚えた。
ハァ~…9時か…
薫は下から2階に居る翼に声をかけた。
薫「翼~?起きてる~?もう行けるよ~」
翼「はぁい!」
そう言って翼が階段から降りて来る。薫は玄関を出て先に車のエンジンをかけ待っている。そのあとすぐに翼も乗り込んできて駅前のデパートへと向かった。
薫が車の中で翼に聞いた。
薫「翼、昨日キラリと何かあった?キラリはけっこうワガママだから翼にはいろいろ負担になってるとは思うんだけど、あの通り素直じゃないからめんどくさく思えるかもしれないけど、わりと可愛い所もあるんだよ?」
翼「それはわかってますよ。別に俺も大して何も気にしてないし、キラリはわかりやすいから、つい面白くてからかっちゃって…ちょっと悪のりし過ぎてあいつを怒らせちゃったみたいっすね…」
薫「そっか。翼はキラリのことわかってくれてんだね。なら安心した」
翼「昨日…キラリの部屋片付けた時に本棚に少女マンガがあったの見て…それであいつは家庭教師に憧れてんのかな?って思って…」
薫「気付いた?あの娘さぁ…純粋ですごく乙女な一面があって、小学生の頃にあの漫画が欲しいって言うから買ってあげたら毎日毎日読んでてさぁ、もういい加減セリフ全部覚えてんじゃ無いの?っていうくらいあの本にとりつかれて…どこに行くんでも車の中でも常にあの本をバッグに入れて持ち歩いてたの…だから…あの娘にとって家庭教師ってすごく特別な存在なのよ」
翼「なるほど…やっぱそうですか…アイツやたらあの本の家庭教師像を意識してる感があったから、もしかしたら俺にあの本の中の家庭教師を求めてるんじゃないかなってのは感じてました」
薫「そうね、私もそう思うよ。だからって翼にあんな甘々な家庭教師を演じて欲しいなんて思っちゃいないよ?ただ…少しくらいはそんな甘い想い出を作って上げてくれたらって…やっぱ私も親バカだからさ…そんな風にちょっと思ったりするわけよ」
翼「………自信無いすけどね」
薫「翼はキラリには全く興味ない?」
翼「んー…どうかな?まだわかんないっすね…でも、俺…ああいう素直じゃなくて甘ったれで、わかりやすいのに必死で自分の気持ち隠すような純粋で真っ直ぐなやつは嫌いじゃ無いっすけどね」
~キラリの学校~
キラリはこの日、授業中も憂鬱に過ごしていた。
凛花「キラリ?ねぇキラリ?」
凛花は次の授業が始まっているにもかかわらず前の授業の教科書をそのまま机の上に置いてあるキラリに気付き、小声で声をかけた。
キラリ「え?」
凛花「え?じゃないよ!もう次の授業始まってるよ?」
キラリ「あ…あぁ…」
キラリは教科書を手に取りボーッと眺めている。
凛花はあきれていた。
ダメだこりゃ…全然心ここに在らず…こんなんじゃ家庭教師ついたって成績うんぬんの次元じゃないわ…
キラリは昨夜の一つの出来事を思い出していた。
翼…昨日どうしていきなり後ろから抱きついて来たんだろ?私にそんな気も無いのに…変に気を持たせるようなことしてきて…ああいうことされると返って辛くなるじゃん…興味が無いならとことん突き放してくれたら良いのに…期待してもしょうがないって分かってても…あいつは王子様なんかじゃない…悪魔だ!
~キラリ帰宅~
キラリは家の玄関ドアを開けていつものように薫に声をかける。
キラリ「母ちゃんただいま~」
すぐに薫の声が帰って来た。
薫「キラリお帰り~!」
キラリ「おっ!今日は母ちゃん居るじゃん!」
キラリはたまに薫が家に居ると妙にテンションが上がる。
キラリ「ねぇねぇ母ちゃん?翼は?」
薫はキラリが朝あんなにふてくされていたのに、すぐに翼を探す姿を見てつい可笑しくなって笑ってしまった。
薫「フフフフフッ…」
キラリ「母ちゃん何?なにかおかしかった?」
薫「だって…」
そのとき不意に翼がキラリの後ろから声をかけてきた。
翼「おっ、キラリお帰り…」
キラリ「………ただいま」
薫はキラリがついさっきまで翼を気にかけていたのに、翼を見ると急に素っ気ない態度を取る姿にとうとう我慢出来ずに吹き出してしまった。
薫「あははははははっ…」
キラリ「母ちゃん何!?さっきから気持ち悪いよ!?」
薫「いや…別に…プッ…フハハハハハハ…」
薫は可笑しくて笑いが止まらない。
翼もこの状況が呑み込めず不思議そうに薫を見ていた。
翼「キラリ、早速家庭教師してやるから上に行くぞ!」
キラリ「うん…」
キラリはうつむき加減に階段を上がって行く。
キラリは鞄を床に下ろしてすぐにベッドに寝転んだ。
翼「キラリ…お前やる気あんの?」
キラリ「一応ね…」
翼はキラリのふてくされた態度を見てしばらく考え込んでから
翼「そうだ!キラリ?ちょっと提案なんだけどな…お前がステップアップする度に俺が何か報酬としてお前の頼みを聞いてやるってのはどうだ?」
キラリ「報酬って?例えば?」
翼「まぁ、常識の範疇(はんちゅう)でその目標達成率に応じて俺がお前の言うこと何でも聞いてやるよ!」
キラリ「範疇って?」
翼「………と…とりあえず国語から勉強しよっか…日本語通じないと勉強の問題どころか会話すら成立しないからな…」
キラリ「例えばどんなことなら聞いてくれるの?」
翼「ラスボスまで倒したら何でも聞いてやるよ!」
キラリ「本当!?」
翼「あ…あぁ…本当だ…」
翼は目を輝かせるキラリを見て少し不安を覚えた。
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