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小さな仲間
しおりを挟む「って、なんでケンと君が…?知り合いだったの?」
「いやいや、俺もさっき話しかけられたんすよ。いつもみたいに城を抜けて隠れてたら、この子が近寄ってきて」
「はい、前にお兄さん達が路地裏で話し込んでるところを見たんです」
(前に、っていうと……ケンと衝突した時とか、勇者についての情報交換をした時とか?)
『助けになれます』って、そういうことか。
「も、もしかして、話の内容聞いた?」
「盗み聞きするつもりじゃなかったんですが……ごめんなさい」
眉を下げ、申し訳なさそうな顔をしている彼を見ると、どうやらバッチリ話の内容は聞いていたらしい。
俺たちの境遇を知って、手を差し伸べようとしてくれているんだ。
どうしたものかと困り果てていると、その子は慌てた様子で話し出した。
「あ!お兄さん達のことは、誓って誰にも言いません。僕、お兄さん……ユウさんに恩返しがしたくて」
あの時のこと、まだ恩義に思ってるのか。律儀な子だな。
「恩返しなんていいって、あの時は何も考えずちょっと手伝っただけだから。あ、そうだ……君の名前は?」
「セファです。路地裏の子供の中で1番の年長者なので、大抵の事は僕がやっています」
そう言ってセファは、俺に握手を求めてきた。
「セファか、素敵な響きだね。大抵の事をやっているってことは、君が路地裏の長なの?」
「長なんて凄いものじゃないですけど……皆を食べさせるために、必要な事を考えたりしてます」
セファは聡明な子だ。
それは初めて会話を交わした時に、すんなりと年上の俺を敬う言葉が出ていたことからも分かる。
「そっか。セファは凄いな」
(……俺なんか自分の生活さえ儘ならないのに)
セファや路地裏の住人たちは、その細い身体を寄せ合って懸命に生きている。
大人の俺が何もしないなんて、考えられないな。
俺は膝を折ってセファに言い聞かせるように、語りかける。
「よし、じゃあセファ。俺たちを手伝ってくれないか?見つかると厄介な事になるから、自由に動けないんだ……そのかわり」
「その代わり?」
「バイト代……えっと、お給料を出すよ。俺たちを手伝って貰うんだし、それくらいはさせて」
「えっ、いや、お給料なんてそんな…!」
「セファ、こういう時は大人に甘えた方がいいぜ!ほら、そのお金で体力つけて、また一緒に騎士団とのかくれんぼをしよう!」
ケンはセファの頭をグリグリ!と撫で回すと、持ち前の明るさで彼の笑顔を引き出す。
「ありがとうございます。あ、あの、ちなみにかくれんぼってなんですか?」
「マジか!かくれんぼ通じないの?!」
(それ俺もあったなぁ、カルチャーショックというか、異世界ショックというか……あれもあっちの遊びだからなぁ)
「じゃあセファ、もし騎士団や城の関係者がうちの薬草屋に近付いてきたら教えて欲しい。あ、団長のバレスさんは除いて」
「はい!分かりました。バレスさんとは仲良しですもんね」
「知ってたのか。いや、仲良しってほどでは……まあ、もう顔馴染みになっちゃったから」
「は、ユウさんあの鬼のバレス騎士団長と仲が良いんっすか?!何もされてないですか、痛いとこは?!」
(鬼の…?あの優しいバレスさんが?)
唐突に始まったケンの詰問を交わしていると、セファがソワソワとし始めた。
「あ、ユウさん、ケンさん。そろそろ食べ物を皆に渡さなきゃいけなくて……また今度、お話ししてくれますか?」
残念そうにこちらを見るセファの頭を軽く撫でた。
「もちろん。いつでも遊びにおいで」
(いつかその壁を感じる話し方も、砕けると良いな)
そんなことを願いながら、遠ざかっていく小さな背を見送った。
「…ところでユウさん、俺、お恥ずかしながらお金持ってないんですけど」
「はは!そうだよな、大丈夫。俺が働いてるから」
「ユウさん……!さすが!!カッコいい!」
「ケンはちゃんと帰れる?ここからの道、結構複雑だよね」
「大丈夫っす。俺、鼻効くんでっ!」
「何だそれ……ふふ」
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