お兄ちゃんに任せなさいっ!

はちのす

文字の大きさ
上 下
6 / 6

お兄ちゃん、流される

しおりを挟む
ぐちゅ

粘着質な音が耳を刺激する。
存在を主張するように太ももの付け根を擦られて、息が詰まった。
今俺は、兄弟にしてはあり得ない距離感で、ヒロトの熱を感じていた。

……何を間違えて、こんな状況に?
答えなんて分かるはずもなかった。

「ヒロト、やばいって!」

「静かに」

「んな無茶な……ぁう」

下げられたトランクスの隙間がみっちりとヒロトのモノで埋められ、擦られる度にゾワゾワとした快感が背筋を駆け上がる。
必死に手で口を覆うが、揺れが酷くて漏れる声が抑えられない。
どうしよう、処理を手伝うってだけなのに、俺まで釣られてる。

何故か『そもそも処理を手伝うって可笑しくない?』なんて、当たり前の疑問も浮かばなかった。
ヒロトの荒い息を頸に受けて、脳の奥がじんわりと熱くなっていく。

無意識に、ヒロトの動きに合わせて下半身を捩らせたその時。

「カナタ~! 今日雨降るってよ」

「折り畳み傘、持とうね」

ツキとソラがこちらに軽く視線を流した。
そう、カウンター越しにバッチリと目が合ってしまったのだ。

……あ、人生終わった。

「あれ? ヒロト兄さん起きてきたの」

「……何してるの」

「よう、おはよう。カナタのエプロン直してやってんの」

あれ、バレてない?
カウンターで視界が遮られているからか、ヒロトに何をされているかも勘付かれていないようだ。
休止に一生を得た、と安心したのも束の間。

軽く身体を揺らしながら事もなげに話し始めるヒロトに仰天する。

嘘だろ、何考えてるのヒロトの奴?!
あまりの事に声をあげそうになったが、唇を強く噛んでなんとかやり過ごす。

「それもうボロボロだもんね、今日僕たちが買ってくるから」

「夜ご飯、楽しみ」

「……っん、ありがと」

優しい眼差しでこちらを見る2人に、罪悪感が募る。

── 頼むから見ないで、見ないでくれ!

「……ッ!」

そんな感情に苛まれながらも身体は正直で、与え続けられる刺激にあっという間に果てた。
ヒロトの熱も後を追うように放たれて、エプロンと足をじっとりと濡らしていく。
つぅ、と脛を流れ落ちる液体は妙に熱く肌に纏わりついた。

「カナタ、具合悪い?」

「え、あと、大丈夫!」

「もしかして二日酔いなんじゃないの~? お酒もほどほどにしなよ!」

も~!と文句を言いながら、テレビに向き直る2人。

く、首の皮一枚繋がった……。
俺はあらゆる緊張から解放されて、思わずキッチンに凭れ掛かる。

「邪魔が入ったな」

「ヒ~ロ~トォ~?! もう2度とキッチンに入るなよ!」

「ごめんって。明日の掃除担当、追加でやるからさ」

謝罪の意味も込めてなのか、ヒロトが甲斐甲斐しく後片付けを始める。
ウェットティッシュで敏感になったままの足を拭う感触……これだけでも変な気分になりそうだ。

「これ兄弟でやることじゃないよ、本当に」

「俺はカナタだからやってるんだけど」

「……へ、どういう意味?」

問い直しても、片眉を僅かに上げるだけで何の返答もない。
長年見ているから分かるが、これはヒロトが「言いたい事を我慢している」時の癖だ。きっと今俺のこと小馬鹿にしてるはず。

だってそうだろう、俺だから何だと言うんだ。
特別太腿が柔らかい訳でもない。至って普通の男の肉体だ。

「今時の若者が考えることは分からんな~」

「何の話だよ」

たかが3年、されど3年。
社会人デビューが早かった俺と、絶賛在学中の弟との壁は案外厚いんだなと、無理矢理納得する。

完璧とは言わずとも、家の中を歩き回れる程度に身支度を整えた頃、ツキとソラがひょっこりとキッチンに顔を出した。

「カナタ~! エプロン何柄がいい? やっぱり英字?」

「……強そうなドラゴンとか?」

「お前ら俺のことイジってるよね?! 可愛い奴らめ!」

いつものテンションで抱き着こうとしたが、さっきまでの淫行が頭を過った。
流石にこの体で2人をハグするなんて出来ないだろう。

「えっと……なんでもいいよ」

そう言って笑顔で2人を見送るに止めたのは英断だっただろう。
虚しい気持ちを抱えながら、ヒロト達を見送った後、俺はいつもより10分遅れて家を出た。
しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

マルル
2024.02.07 マルル

WOWFANTASTICS!?
凄く魅力的なタイトルに引かれて
読みに来てしまいましたァーァァィ
ヒロトくん大胆ですね(。´´ิ∀ ´ิ)
大胆とは素晴らしいですねぇ!
初めまして、こんにちは、こんばんは
これからも貴方の作品が投稿される度
読みに来ると思います。
とても面白い作品なので誇りに思って
ください( ¯︶¯ )私が保証します。
では、またのときに
ほなまたねぇ〜

はちのす
2024.02.13 はちのす

マルル様

熱量の高いご感想ありがとうございます!🕺🎶ダンシンッ
大胆なチョロインが大好きなので、共感いただき光栄です。
これからもちょくちょく更新していきますので、是非お付き合いくださいませ!

解除
毒林檎
2024.01.20 毒林檎

次回更新楽しみにしてます。
ヒロトもですが、双子がこれからどうなるか特に楽しみです。他のシリーズも見ています。

はちのす
2024.01.30 はちのす

ゆま様

不定期連載にも関わらずコメントいただきありがとうございます…!
嬉しさのあまり筆が乗りまくっております。
今後もぜひよろしくお願いいたします!

解除

あなたにおすすめの小説

ヤバい薬、飲んじゃいました。

はちのす
BL
変な薬を飲んだら、皆が俺に惚れてしまった?!迫る無数の手を回避しながら元に戻るまで奮闘する話********イケメン(複数)×平凡※性描写は予告なく入ります。 作者の頭がおかしい短編です。IQを2にしてお読み下さい。 ※色々すっ飛ばしてイチャイチャさせたかったが為の産物です。

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい

椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。 その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。 婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!! 婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。 攻めズ ノーマルなクール王子 ドMぶりっ子 ドS従者 × Sムーブに悩むツッコミぼっち受け 作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。

第二王子の僕は総受けってやつらしい

もずく
BL
ファンタジーな世界で第二王子が総受けな話。 ボーイズラブ BL 趣味詰め込みました。 苦手な方はブラウザバックでお願いします。

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

騎士は魔王に囚われお客様の酒の肴に差し出される

ミクリ21
BL
騎士が酒の肴にいやらしいことをされる話。

スフェーノスの瞳

はちのす
BL
大規模災害により荒廃した2000mの壁に四方を囲まれた荒廃都市── 「ドグマ」 国家機能が失われた島国で台頭したのは、商業団体「ユグノ」、自警団「ドラン」、そして中流階級以下の下層集団「スラム」だった。 対人戦ランクで日々の配給と娯楽が決まるドグマで、便利屋として食い繋ぐ< 主人公 ノア >は、パトロンの訃報をきっかけに、自らスラムへと足を踏み入れる。 組織に属さず他人に生かされ続けていたノアは、知らぬ間に望まぬ争いの渦中に巻き込まれていく。 彼を囲うための楔を手に入れようと狂う男達と、何にも期待せず刹那的に生きる男の話。 ※予告なく性描写が入ります

俺が総受けって何かの間違いですよね?

彩ノ華
BL
生まれた時から体が弱く病院生活を送っていた俺。 17歳で死んだ俺だが女神様のおかげで男同志が恋愛をするのが普通だという世界に転生した。 ここで俺は青春と愛情を感じてみたい! ひっそりと平和な日常を送ります。 待って!俺ってモブだよね…?? 女神様が言ってた話では… このゲームってヒロインが総受けにされるんでしょっ!? 俺ヒロインじゃないから!ヒロインあっちだよ!俺モブだから…!! 平和に日常を過ごさせて〜〜〜!!!(泣) 女神様…俺が総受けって何かの間違いですよね? モブ(無自覚ヒロイン)がみんなから総愛されるお話です。

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目

カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。