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お兄ちゃん、悪戯される
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ピリリリリリリ!
鼓膜を揺らすアラームが朝を告げる。
瞼を開けはしたが、割れそうなほど酷く痛む頭が起床を拒否した。
「……いでぇ」
何故か喉も乾燥していて、声も掠れていた。
そうだ、昨日の式の二次会でとんでもなく酔っ払った気がする。
でも、それだけでこんなに声が出ないなんて事態、あっただろうか。
考えが纏まり始めた矢先に、昨日の記憶が濁流のように迫ってくる。
怪しげな占い師、途中で消えた拓馬、ヒロトの一線を超えた介抱……あぁ、全部思い出した。
「ぅゔ~……どう接すればいいんだ!」
幸い今日は日曜日。
この二日酔いは明日には綺麗さっぱり解消されているだろう。
だが、ヒロトとした行為の感触は、いつまで経っても消えることはない。
悲しいかな下半身は至ってスッキリの状態で、むしろいつもより快調だ。
それもこれも、溜まっていたものを吐き出したからだろう。
ヒロトはなんであんな行動に出たんだ?それに、あの占い師は一体……。
分からないことだらけだ。
事の発端になった占い師には、もう一度会いに行かなければ。
こんなことが続くようじゃ、本当に家族が決裂してしまうのではないか。
真剣に悩みつつ、俺はいつも通り弟達の朝食の支度を始める。
エプロンを着けて準備を整え、熱したフライパンに卵やソーセージを一緒くたに乗せる。
世の中にはキチンと一種ずつ火を入れる人もいるんだろうが、愛野家の朝は短い。時短になるからと、このやり方が定着していた。
エプロンは中学の時に、家庭科の授業で作ったもの。
当時はかっこいいと思って、よく分からない英字がプリントされたキットを発注したんだ。
その頃から決して裕福ではなかったから、エプロンはこれでいいやと使い続けている。
着け心地も悪くはないし、満足だ。
……一つだけ後悔があるとしたら、このエプロンを着けたまま宅配のお兄さんを迎えてしまったことくらいだ。
とはいえ、俺も良い歳だし、そろそろ買い換えようかな。
「……はよ」
「カナタ、朝ごはん作ってるの?」
「ツキ、ソラ! おはよう。よく寝れた? あと10分くらいで準備出来るから、弁当詰めといて」
「はぁい!」
「……わかった」
ひょこっとキッチンに顔を出したのは、双子の弟であるツキとソラだ。
低血圧気味なツキは、どちらかと言うとクールなタイプ。
素直な黒髪を、軽いマッシュにカットしていて、今の世代の子って感じだ。
対してソラは朝から元気いっぱい。
こちらも黒髪ではあるけど、少し猫っ毛な所が違いだ。
センターパートにした前髪が、動きに合わせてふわりと揺れる。
二卵性だからなのか、2人は性格も、容姿の上でも似ていない。
だけど、何をするにも一緒に行動していた。
今年高校2年生になる2人は、毎朝部活動の朝練のために家を早く出る。
朝食担当は俺、2人は自分達のお弁当を作る。
これが愛野家の朝の一幕だ。
皆が出来る形で協力しているこの朝の時間が、この家の仲睦まじさの証なのに。
「ヒロトはなんで……」
「カナタ、目玉焼き焦げそう!」
「うわ~やっちゃったぁ」
「あれぇ珍しいね。カナタが目玉焼き失敗するなんて」
「……悩み事?」
2人に両側から話しかけられる。
スポーツを始めてから、メキメキとその身長を伸ばした双子の目を見ながら笑いかけた。
「ごめんね、大丈夫だから」
俺の答えでは、全く納得行っていないようだ。
「ふぅん」と緩い言葉を残して配膳を始めた。
あ、危ない…ツキとソラは勘が良いんだよな。
2人が着席して食べ始めたのを見計らって、洗い物を始める。
こういうのはサッサと洗ってしまった方が、汚れが取れやすいんだ。
ちょっと焦げついた目玉焼きのタンパク質と戦っていると、背後に気配を感じた。
「カナタ、おはよう」
ぎゅっ、と俺の身体を抱きしめる奴。ヒロトだ。
「ちょ、ヒロト?! おはよう?!」
「驚きすぎ。ツキとソラにバレるぞ」
その言葉と共に、するりとエプロンの下に滑り込んできた手に驚愕する。
「な、何考えて……っ!」
「昨日ここに触れてたんだな、と思ったらつい」
「ッん、ぁ」
朝だって言うのに、遠慮なく触れられたのは愚息の先端。
「ふざけるな!」と怒りたかったが、思い出されるのは昨日の占い師の言葉。
『キスやハグくらいはしろ』
なら、この行為は?それに類するもの?
答えは出ないのに、触れる指を強く意識してしまう。
くるくる、と円を描くように刺激され、昨日の熱が再燃する。
「待っ、2人が近くに居るのに…!」
「大丈夫だ。キッチンとリビングはカウンターで仕切られてて顔と胸から上しか見えない。それに、向こうではテレビを見てる」
朝のニュース番組のテーマソングが聞こえてきた。
「これ、どうにかするから少しだけ手伝ってくれ」
ゴリッと硬い昂りを尻に押し付けられる。朝から元気なこった。
「んっ!」
「声、抑えてて」
憎まれ口を叩いている内心とは裏腹に、俺は何故か、その指令を甘んじて受け入れてしまった。
***********
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鼓膜を揺らすアラームが朝を告げる。
瞼を開けはしたが、割れそうなほど酷く痛む頭が起床を拒否した。
「……いでぇ」
何故か喉も乾燥していて、声も掠れていた。
そうだ、昨日の式の二次会でとんでもなく酔っ払った気がする。
でも、それだけでこんなに声が出ないなんて事態、あっただろうか。
考えが纏まり始めた矢先に、昨日の記憶が濁流のように迫ってくる。
怪しげな占い師、途中で消えた拓馬、ヒロトの一線を超えた介抱……あぁ、全部思い出した。
「ぅゔ~……どう接すればいいんだ!」
幸い今日は日曜日。
この二日酔いは明日には綺麗さっぱり解消されているだろう。
だが、ヒロトとした行為の感触は、いつまで経っても消えることはない。
悲しいかな下半身は至ってスッキリの状態で、むしろいつもより快調だ。
それもこれも、溜まっていたものを吐き出したからだろう。
ヒロトはなんであんな行動に出たんだ?それに、あの占い師は一体……。
分からないことだらけだ。
事の発端になった占い師には、もう一度会いに行かなければ。
こんなことが続くようじゃ、本当に家族が決裂してしまうのではないか。
真剣に悩みつつ、俺はいつも通り弟達の朝食の支度を始める。
エプロンを着けて準備を整え、熱したフライパンに卵やソーセージを一緒くたに乗せる。
世の中にはキチンと一種ずつ火を入れる人もいるんだろうが、愛野家の朝は短い。時短になるからと、このやり方が定着していた。
エプロンは中学の時に、家庭科の授業で作ったもの。
当時はかっこいいと思って、よく分からない英字がプリントされたキットを発注したんだ。
その頃から決して裕福ではなかったから、エプロンはこれでいいやと使い続けている。
着け心地も悪くはないし、満足だ。
……一つだけ後悔があるとしたら、このエプロンを着けたまま宅配のお兄さんを迎えてしまったことくらいだ。
とはいえ、俺も良い歳だし、そろそろ買い換えようかな。
「……はよ」
「カナタ、朝ごはん作ってるの?」
「ツキ、ソラ! おはよう。よく寝れた? あと10分くらいで準備出来るから、弁当詰めといて」
「はぁい!」
「……わかった」
ひょこっとキッチンに顔を出したのは、双子の弟であるツキとソラだ。
低血圧気味なツキは、どちらかと言うとクールなタイプ。
素直な黒髪を、軽いマッシュにカットしていて、今の世代の子って感じだ。
対してソラは朝から元気いっぱい。
こちらも黒髪ではあるけど、少し猫っ毛な所が違いだ。
センターパートにした前髪が、動きに合わせてふわりと揺れる。
二卵性だからなのか、2人は性格も、容姿の上でも似ていない。
だけど、何をするにも一緒に行動していた。
今年高校2年生になる2人は、毎朝部活動の朝練のために家を早く出る。
朝食担当は俺、2人は自分達のお弁当を作る。
これが愛野家の朝の一幕だ。
皆が出来る形で協力しているこの朝の時間が、この家の仲睦まじさの証なのに。
「ヒロトはなんで……」
「カナタ、目玉焼き焦げそう!」
「うわ~やっちゃったぁ」
「あれぇ珍しいね。カナタが目玉焼き失敗するなんて」
「……悩み事?」
2人に両側から話しかけられる。
スポーツを始めてから、メキメキとその身長を伸ばした双子の目を見ながら笑いかけた。
「ごめんね、大丈夫だから」
俺の答えでは、全く納得行っていないようだ。
「ふぅん」と緩い言葉を残して配膳を始めた。
あ、危ない…ツキとソラは勘が良いんだよな。
2人が着席して食べ始めたのを見計らって、洗い物を始める。
こういうのはサッサと洗ってしまった方が、汚れが取れやすいんだ。
ちょっと焦げついた目玉焼きのタンパク質と戦っていると、背後に気配を感じた。
「カナタ、おはよう」
ぎゅっ、と俺の身体を抱きしめる奴。ヒロトだ。
「ちょ、ヒロト?! おはよう?!」
「驚きすぎ。ツキとソラにバレるぞ」
その言葉と共に、するりとエプロンの下に滑り込んできた手に驚愕する。
「な、何考えて……っ!」
「昨日ここに触れてたんだな、と思ったらつい」
「ッん、ぁ」
朝だって言うのに、遠慮なく触れられたのは愚息の先端。
「ふざけるな!」と怒りたかったが、思い出されるのは昨日の占い師の言葉。
『キスやハグくらいはしろ』
なら、この行為は?それに類するもの?
答えは出ないのに、触れる指を強く意識してしまう。
くるくる、と円を描くように刺激され、昨日の熱が再燃する。
「待っ、2人が近くに居るのに…!」
「大丈夫だ。キッチンとリビングはカウンターで仕切られてて顔と胸から上しか見えない。それに、向こうではテレビを見てる」
朝のニュース番組のテーマソングが聞こえてきた。
「これ、どうにかするから少しだけ手伝ってくれ」
ゴリッと硬い昂りを尻に押し付けられる。朝から元気なこった。
「んっ!」
「声、抑えてて」
憎まれ口を叩いている内心とは裏腹に、俺は何故か、その指令を甘んじて受け入れてしまった。
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