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2章 新生活スタート
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ガタッ!
授業が終わり、昼休憩に入るというところで、誰かが目の前の机に腰掛ける音がする。
軽く顔に影が差した。
「あのさぁ、昨日の銀髪の獣人って友達ぃ?」
伸びをしていた俺に、グリムが話しかけてきた。
いつものヘラヘラとした表情は浮かんでおらず、どこか緊張している様子だ。
間伸びした喋り方も耳につかない程度で、何か真剣な話題なんだろう。
…でも、マーナのことを聞かれたのはこの学園に来て初めてのことだ。
「あ、あぁ。そうだけど、何だ?」
「へぇ、アイツ友達がいるんだぁ…しかもそれがカンザキだし…あ~残念」
「え、アイツ…?」
マーナを知っているかのような言動に驚いてしまう。
セシルさんも、マーナの人型は中々見る機会がないと言っていた。
(どういうことだ…?)
グリムの言動は確かに不可解なところが多い。
全てを見透かしたような、理解しているような気さえもしてくる。
この前の魔王の時の話だって、まるで目で見てきたかのような話ぶりだった。
…まさか。
(魔王が生み出した人間…とか?)
それなら全て辻褄が合う。
そういえばグリムも魔王も木属性だ。
でも、魔王が生み出したのなら、グリムは魔技クラスになっていてもいいよな…なんで剣技クラスなんだろう。
魔王から生み出されたとはいえ、魔法の技量まで受け継がれる訳ではないのだろうか。
「あのさ、グリム…」
「ん~?お昼一緒に食べる?」
「あ、いやそうではなくて」
「グリム。カンザキは俺と予定があるんだ。そろそろ返してもらってもいいか?」
耳の後ろからニョキッと影が出てきたと思ったら、目を覆われる。
その姿はもちろん捉えることは出来ないが、声でその判別はできる。
「おい、ユージン!」
「…ねぇちょっと、今オレが話してるんだけどぉ!」
「ごめんな?カンザキ、ほらいこう」
目を覆う手はすぐに退かされたが、その代わりにグイッと力強く肩と腰を引かれ椅子から強制的に立たされる。
強引さに驚いた俺はショックを受けたハムスターのように思考停止してしまった。
背景には宇宙空間が広がっていること間違いなしだ。
そんな状態の俺を連れ出したユージンは、食堂に繋がる道中で、急に足取りを遅くした。
「…ごめん。話遮ったよな」
「あぁ、まあ他愛もない話だったから大丈夫だ。それより、何か焦っていたのか?」
「そういう訳じゃなくて、今回も昼飯一緒に食べられないと思ったらつい…」
そう言って、ユージンは俺の耳に視線を向ける。
するとユージンは僅かに落ち着きを取り戻したらしく、俺の目を見て頭を下げた。
「でも、あんな遮り方良くないよな。ごめん!」
「謝るほどのことではないだろ」
「その、後ろめたくて。俺本当は…いや、なんでもない。」
ユージンは何かを言いかけたが隠すように言葉を切ると、前に向き直って歩き始める。
…俺の制服の裾を掴みながら。
「ユージン、裾が…」
聞こえるはずの距離にいるのだが、特に反応はなくユージンは歩き続ける。
離してもらうことを諦めた俺は、引っ張られながらも昼のメニューを決めることにした。
「そういえばカンザキは魔法模擬試験って受ける?俺、最近その対策に追われててさ…大変だよね。」
「あぁ、受けるつもりだよ。抜けていることも多いけど、物は試しだから」
ユージンと和やかに食事をとっていると、自然と模擬試験の話になった。
そうだよな、学生の本分は勉強。
話題に出ないはずがない。
「試験対策どこまで終わってる?」
「まだまだ序の口だ。対策が終わり切る前に本番が来そうで怖いな」
「ははっ!俺もそんなもん。はぁ、今年の優秀者は誰なんだろうなぁ…俺も優秀者特権欲しい~」
「ん?優秀者特権…?」
「あれ、カンザキは知らないか。そっか、ここの学院ならではなのかも」
ユージンは一旦食べる手を止める。
「実はこの模擬試験って、世界共通の質で行われていてね。魔法系学校の成績診断でもあるんだ。
この学院はこれだけの成績が取れる人間がいますよ、っていう対外的なアピールにも使われる」
「へぇ、何かメリットがあるのか?」
「そりゃもう!その成績次第で、寄付やら優秀な生徒やらが集まってくるんだ。」
「なるほど…で、特権ってどんなものなんだ?」
「あ、そうそう本題ね。その名の通り、成績優秀者に与えられる特権だよ。
各教科でトップの生徒に与えられる権利で、その教科に関わるお願いを一つ学院が聞いてくれるんだ」
「お願いって、勉強に関する希望か?皆勤勉なんだな…」
「それがさ、意外とそうでもなくて」
ユージンは秘密の話をするように、身を乗り出して耳元で囁く。
「少し前に優秀者になった先輩が、どうも少しイレギュラーなお願いをしたみたいなんだ。それでも、学院が聞き入れたらしい」
「へぇ、何のお願いを?」
俺も小声で囁き返すと、ユージンはビクッと肩を揺らし、少し顔を赤くした。
なんでだ。
「あ、えっと…騎士団への斡旋だってさ」
「斡旋?!」
思わず大きな声で反応を返すと、ユージンに口を塞がれる。
「シーッ!これ、一部しか知らない話だから!
…そういうことで、皆どれだけのお願いなら聞いてもらえるのか試す意味でも勉強を頑張ってるってこと」
「成る程な」
優秀者特典として、騎士団への斡旋か…セシルさんも思い切ったことをしたな。
「でも結構ハードルが高いのが、全学年共通の内容のテストなんだよ。それで得点を競うから、低学年が不利なんだ」
「そういうテストもあるよな」
元の世界の試験を思い出しつつ相槌を打っていると、ふとある可能性が思い浮かぶ。
…この特典を利用することができるかもしれない。
「ユージン。いい情報をありがとう。助かったよ」
「え?あ、あぁ…どういたしまして」
ユージンは不思議そうに再び食事に手をつけた。
そんな中、俺はある可能性にかけて、決意を固めていた。
(…一大決心だ。あと2週間、死ぬ気でやろう)
授業が終わり、昼休憩に入るというところで、誰かが目の前の机に腰掛ける音がする。
軽く顔に影が差した。
「あのさぁ、昨日の銀髪の獣人って友達ぃ?」
伸びをしていた俺に、グリムが話しかけてきた。
いつものヘラヘラとした表情は浮かんでおらず、どこか緊張している様子だ。
間伸びした喋り方も耳につかない程度で、何か真剣な話題なんだろう。
…でも、マーナのことを聞かれたのはこの学園に来て初めてのことだ。
「あ、あぁ。そうだけど、何だ?」
「へぇ、アイツ友達がいるんだぁ…しかもそれがカンザキだし…あ~残念」
「え、アイツ…?」
マーナを知っているかのような言動に驚いてしまう。
セシルさんも、マーナの人型は中々見る機会がないと言っていた。
(どういうことだ…?)
グリムの言動は確かに不可解なところが多い。
全てを見透かしたような、理解しているような気さえもしてくる。
この前の魔王の時の話だって、まるで目で見てきたかのような話ぶりだった。
…まさか。
(魔王が生み出した人間…とか?)
それなら全て辻褄が合う。
そういえばグリムも魔王も木属性だ。
でも、魔王が生み出したのなら、グリムは魔技クラスになっていてもいいよな…なんで剣技クラスなんだろう。
魔王から生み出されたとはいえ、魔法の技量まで受け継がれる訳ではないのだろうか。
「あのさ、グリム…」
「ん~?お昼一緒に食べる?」
「あ、いやそうではなくて」
「グリム。カンザキは俺と予定があるんだ。そろそろ返してもらってもいいか?」
耳の後ろからニョキッと影が出てきたと思ったら、目を覆われる。
その姿はもちろん捉えることは出来ないが、声でその判別はできる。
「おい、ユージン!」
「…ねぇちょっと、今オレが話してるんだけどぉ!」
「ごめんな?カンザキ、ほらいこう」
目を覆う手はすぐに退かされたが、その代わりにグイッと力強く肩と腰を引かれ椅子から強制的に立たされる。
強引さに驚いた俺はショックを受けたハムスターのように思考停止してしまった。
背景には宇宙空間が広がっていること間違いなしだ。
そんな状態の俺を連れ出したユージンは、食堂に繋がる道中で、急に足取りを遅くした。
「…ごめん。話遮ったよな」
「あぁ、まあ他愛もない話だったから大丈夫だ。それより、何か焦っていたのか?」
「そういう訳じゃなくて、今回も昼飯一緒に食べられないと思ったらつい…」
そう言って、ユージンは俺の耳に視線を向ける。
するとユージンは僅かに落ち着きを取り戻したらしく、俺の目を見て頭を下げた。
「でも、あんな遮り方良くないよな。ごめん!」
「謝るほどのことではないだろ」
「その、後ろめたくて。俺本当は…いや、なんでもない。」
ユージンは何かを言いかけたが隠すように言葉を切ると、前に向き直って歩き始める。
…俺の制服の裾を掴みながら。
「ユージン、裾が…」
聞こえるはずの距離にいるのだが、特に反応はなくユージンは歩き続ける。
離してもらうことを諦めた俺は、引っ張られながらも昼のメニューを決めることにした。
「そういえばカンザキは魔法模擬試験って受ける?俺、最近その対策に追われててさ…大変だよね。」
「あぁ、受けるつもりだよ。抜けていることも多いけど、物は試しだから」
ユージンと和やかに食事をとっていると、自然と模擬試験の話になった。
そうだよな、学生の本分は勉強。
話題に出ないはずがない。
「試験対策どこまで終わってる?」
「まだまだ序の口だ。対策が終わり切る前に本番が来そうで怖いな」
「ははっ!俺もそんなもん。はぁ、今年の優秀者は誰なんだろうなぁ…俺も優秀者特権欲しい~」
「ん?優秀者特権…?」
「あれ、カンザキは知らないか。そっか、ここの学院ならではなのかも」
ユージンは一旦食べる手を止める。
「実はこの模擬試験って、世界共通の質で行われていてね。魔法系学校の成績診断でもあるんだ。
この学院はこれだけの成績が取れる人間がいますよ、っていう対外的なアピールにも使われる」
「へぇ、何かメリットがあるのか?」
「そりゃもう!その成績次第で、寄付やら優秀な生徒やらが集まってくるんだ。」
「なるほど…で、特権ってどんなものなんだ?」
「あ、そうそう本題ね。その名の通り、成績優秀者に与えられる特権だよ。
各教科でトップの生徒に与えられる権利で、その教科に関わるお願いを一つ学院が聞いてくれるんだ」
「お願いって、勉強に関する希望か?皆勤勉なんだな…」
「それがさ、意外とそうでもなくて」
ユージンは秘密の話をするように、身を乗り出して耳元で囁く。
「少し前に優秀者になった先輩が、どうも少しイレギュラーなお願いをしたみたいなんだ。それでも、学院が聞き入れたらしい」
「へぇ、何のお願いを?」
俺も小声で囁き返すと、ユージンはビクッと肩を揺らし、少し顔を赤くした。
なんでだ。
「あ、えっと…騎士団への斡旋だってさ」
「斡旋?!」
思わず大きな声で反応を返すと、ユージンに口を塞がれる。
「シーッ!これ、一部しか知らない話だから!
…そういうことで、皆どれだけのお願いなら聞いてもらえるのか試す意味でも勉強を頑張ってるってこと」
「成る程な」
優秀者特典として、騎士団への斡旋か…セシルさんも思い切ったことをしたな。
「でも結構ハードルが高いのが、全学年共通の内容のテストなんだよ。それで得点を競うから、低学年が不利なんだ」
「そういうテストもあるよな」
元の世界の試験を思い出しつつ相槌を打っていると、ふとある可能性が思い浮かぶ。
…この特典を利用することができるかもしれない。
「ユージン。いい情報をありがとう。助かったよ」
「え?あ、あぁ…どういたしまして」
ユージンは不思議そうに再び食事に手をつけた。
そんな中、俺はある可能性にかけて、決意を固めていた。
(…一大決心だ。あと2週間、死ぬ気でやろう)
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