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2章 新生活スタート
43 自由とは
しおりを挟む俺の言葉の意味を理解したマーナは、
目が零れ落ちそうなほど見開かれ、握った手を振るわせていた。
何度か口を開こうとして、言葉が出てこないのかそのまま閉じるを繰り返している。
…なんか金魚みたいだ。
「マーナがもし出たいなら、って思っただけだ。気乗りしないなら断って欲しい。」
「そうじゃないが…私が出て行けば、国家的な問題になりかねない…。」
「そう言うこともあるかもしれないけど、それよりも前に、マーナはマーナとして選びたい道を選んで欲しいんだ。」
ピコピコと忙しなく動く耳が可愛くて、優しく撫でてしまう。
「んっ…!」
…考え事の邪魔をしてしまったらしい。
慌てて手を離そうとすると、逆にマーナに腕を掴まれ、身体全体で擦り寄られた。
「…っはぁ、ずっと共にいてもいいのか?」
「マーナが嫌になるまでな。」
(あとは俺が帰り方を見つけるまで…か。)
「カンザキッ…!」
ギュッと抱きつかれ、ぐりぐりと頭を擦り付けられる。
「あとグリフにも声をかけないと」
「なっ…?!」
マーナは上半身を離し、"嫌だ!"とでも言うかのように毛を逆立てた。
珍しく、唸り声まで上げている。
「え、もしかして、グリフのこと苦手だったか?」
「違う!…私だけではないのか、旅をする者は!」
「ごめん、さっきの話だとグリフもマーナと同じ状況だって聞いたからな…」
「む"、う…そ、そうだ。」
「それなら、置いては行けないだろ?」
「……」
先程まで喜びで引きちぎれんばかりの動きを見せていた尻尾が、今や垂れ下がって足の間に入ってしまっている。
(え、俺そんなやばいこと言ったかな…?)
考えられるのは、マーナが俺と一緒にいたいと言う…独占欲。
俺は顔が勝手に赤くなっていくのを感じた。
こんなにも大切に思ってもらえるとは、予想外だったな…
「マーナ、2人で行きたいと思ってくれるのは嬉しい。でも、出来れば、グリフの意思も尊重したい。」
それじゃダメか?と、優しく笑って問いかけてみるとマーナは再び抱きついてきて、小さく頷いてくれた。
これが答えだ。
「ありがとうマーナ。グリフには明日聞いてみる。」
「カンザキ、私は…恐らくグリフもだ。こうして連れ出そうとしてくれたヤツはなかった。
だからこそ、その感情を独占したいと、愛のように注がれたいと…そう思ってしまうんだ。」
それは困った…!!
「大丈夫だ。きっとこの先も、俺がいなくなったり、死んだ後にもきっと俺と同じような人は現れる。」
「私は、カンザキがいい。」
「はは…」
聞かん坊の子供のように、耳をペタリと折り曲げて"聞こえません"のポーズをしている。
「さて、色々教えてくれてありがとう…とりあえず、食事済ませようか。」
マーナは食事中、ずっと尻尾を揺らして嬉しそうにしていたことを追記しておこう。
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