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2章 新生活スタート
40 ご機嫌取り
しおりを挟む「ただいま」
帰宅すると、マーナはベットでゴロゴロしていた。
「遅かったな。」
「まだ15時…結構早めに帰ってきたつもりなんだけどなあ」
「ふん。」
マーナは毛布に尻尾をビシビシと叩き付けている。
「寂しいんだと…言っただろう」
「うっ…」
タロが久しぶりに帰ってきた俺を見て、
『クゥ~ン』と鳴いている様を思い出してしまった。
あぁ、寂しい思いをさせてしまったんだな。
「マーナ」
「?」
「…俺に何して欲しい?」
ちょっと意地悪い聞き方かもしれないが、
やっぱり満足して貰いたいと言う一心で、このような聞き方をしているのだ。
「添い寝しろ」
「は?」
「聞こえなかったか?添い寝しろ、と言ったんだ。」
予想外な返事に、俺は目を白黒させていた自覚がある。
あのマーナが撫でを要求するのではなく、添い寝…?
俺が戸惑っていると、マーナは更に機嫌を悪くしたようだ。
「出来ないのか?あの小童には出来て、私には出来ないと?」
「小童…?セシルさんのことか?別に添い寝なんてした事ないぞ。」
「アレは添い寝のようなものだろう。」
「アレ…?あ、もしかして…」
身元がわからない、と言われた時のあのハグのことか!!
「あぁ、アレはセシルさんが俺を気遣って…」
「じゃあ私にも気を遣え。」
「(とんでも理論だな…)分かった分かった、先に夜ご飯を食べようか。」
マーナは夜ご飯中も終始機嫌が良く、
添い寝でこんなに機嫌が良くなるなら、定期的にやるか、とまで思ってしまうほどだった。
食事を終え、寝る準備が整うと、マーナは布団に潜り込んでいった。
「早く入れ。」
「ちょっと待てって!今白湯飲み切るから。」
最近手足が冷たく感じて、温められるよう工夫している。
寝る前の白湯もそれの一環だ。
「湯の何が旨いんだ。」
「うーん、旨いというより、温まるためかな。」
マーナはきょとりとすると、布団を持ち上げながら言った。
「ならばここが1番だろう。」
「まあ…そうなんだけどな。」
お言葉に甘えて…俺はマーナの布団に潜り込んだ。
マーナの筋肉質な肉体は、確かに俺よりも平熱が高く感じる。
恐る恐る手を回すと、より温かい。
「温い…」
「だから言ったのだ。」
もっと温まりたくて、ギュッと力を入れて密着した。
「…っ、カンザキ。どうした?らしくもない」
「嫌だった?」
「嫌では…ないが…」
マーナは所在なさげに目線を彷徨わせる。
あ、もしかして撫でて欲しいのかも?
回した手を少しほどき、背中をさすり上げた。
「ぁっ!」
マーナは身体をピクリと震わせ、
尻尾で俺の手を軽く叩いた。
「オイ、擽るな。」
「撫でてたんだよ。感謝の意だ。」
「むっ、そうか…」
その手を腰の下まで下げると、ビク付きが増す。
あ、ヤバい…また楽しくなってきてしまった。
尻尾を緩く掴み、フニフニと刺激した。
「そこには然程感覚がない。やるなら付け根にしろ。」
「へぇ、そうなんだ。」
俺は改めて尻尾の付け根を刺激し始める。
「んん…ぁふ」
押したり、揉み込んでみたり、
色々試しているうちに、中心に近いある場所が熱を持っている事に、気が付いてしまった。
「ま、マーナ…お前これ…」
「んぁ…っふ、それは、生理現象だっ!」
撫では継続しながら、問い掛けてみると、
やはり聖獣でも人間の姿になってしまうとこのような事があるらしい。
「寝れば治る」
「そういうもんか…?」
俺は疑問に思ったが、今回はあまり掘り下げず、マーナのしたいようにやらせる。
「寝れそうか?マーナ」
「もとより寝るのはいつでも出来る。ただ、カンザキが最近部屋にいないからな…」
シュン、とする様子はタロそのもので、
思わずガバッと抱き締めてしまった。
「よしよし、良く眠れよ?」
「童扱いは、やめろ………」
抱き締めてトントンとリズミカルに背中を叩くと、そのまま寝息を立て始めた。
なんだかんだちょっと子供っぽいところもあるよな…
自分で言って少しウケながら、俺も睡魔に身を委ねた。
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