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2章 新生活スタート

14 真の門番

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【お知らせ】
念のため総攻めタグ追加しました。
モフってしかいないですが、今後のことも考え、念のためにつけました。

****


食堂であの視線を受けながら食事を終えた。

今回は誰からも話しかけられることはなかった。

それだけの事で、疲労が段違いだ。
昨日は本当に酷かったな…

遠い目をしながら歩みを進めていると、
目の前のマーナが立ち止まった。

あれ、ここは…



「門の前?」


「そうだ。昨日カンザキが素通りした門だ。」


「素通りって…いや、門番さんにきちんと声をかけなかったことは謝る。

けど、最初に通りかかった時はただ突っ立ってただけだったからさ。」


だってあの門番の彫像、明らかに置物ですって顔してたし。
まさか動き出すなんて思わなかったし…


「それは大した問題じゃあるまい。
そもそもカンザキをのが問題なんだ。」


ー 弾く…?


「ここの門は持たざる者はそもそも学院自体を見ることができないよう魔法がかけてある。
それを全く意に介さず侵入出来たんだ。大問題だろう。」

「剰え、ここの門番の意識すら掻い潜った。…そうだろ?


(いやだからそれは俺のせいじゃな…
え、グリフォン…?)


ー 彫像にそんな大仰な名前つける訳ない…よな?

俺の考えを裏付けるかのように、
大空から翼をはためかせ降りてくる存在を視界に捉えた。


「お陰で大目玉だよ。本当に君、いつ入ったんだい?」


あああ…このワシのような頭と翼、獅子の肢体を持つこの生き物…
中二図鑑で見たことがあるぞ…


「グリフォン…」


「うん、正解。やっぱり知ってたんだ。僕が張ってたこと。」


(いや知らないってば!!)


緊張から、その反論は口の中で反芻されただけだった。

これは規格外の生物が出てきてしまったぞ…
助けを求めてチラリとマーナを見遣ると、爆笑の態勢に入っていた。
何故に。


「こいつにどうやって入った?と聞いたらな、入れたから入ったと…!ククク…ハハハ」


「なっ…!許可した覚えはないんだけどなあ!」


こちらをキッと睨みつける。


(ヒィィイイ怖い怖い!マーナのやつ、わざと煽りやがったな…!)


「もっと言うと、招き入れられた、とも言っていたぞ…とんだ失態だなあ、グリフォン。」


ストォォップ!!
それ勘違いだから、やめてくれ!!!


グリフォンの圧力のせいでツッコミを入れることもままならない。


ー もしかして、今日が命日…?


心の中でドナドナしていると、
マーナが肩を組んできた。

え?どう言う展開?


「まあそういう事で、カンザキは私が守っている訳だ。手出しは不要だぞ?」


いやいや、流れが全然見えない。


「ふぅん、君、カンザキっていうんだ?
覚えたよ。マーナガルムが気に入るなんて相当だね。

…何したの?」



ピリピリとした静電気が身体に纏わり付く感覚がした。

なんだろう、と思っているうちにその感覚が霧散した。



「…ッ!へえ、面白い。」


「おい、手出しするなと先ほど言ったはずだが。」


「こんなん味見程度じゃん。ケチ。」


なになに?また俺のいないところで話が進んでる。


「ねぇ、カンザキ少年。なんで魔法が効かないの?君、魔力もないのに。」


(え、魔法が効かない…?)

どういう事だ…?魔力がないだけじゃなくて、俺自身に魔法が効かないのか…?


「おい、やめろ。大人しく巣に帰れ。」


「何だよ呼び出しといて…
そんなに大事なの?…へえ…」


グリフォンはこちらに向き直り
クリッとした目を細めた。

こちらもやはりいちいち動きが人間臭い。


「ね、僕とお話ししようよ。
なんとなく君をスルーしちゃったワケも分かったし。

今度は君と仲良くなりたいなあ…」


「あっ、オイ!待て!」


素早く嘴で摘み上げられ、背中に乗せられると、瞬く間に上空に引き上げられた。

必死にその羽毛にしがみつき、瞑った目を開いてみると
マーナは既に見えなくなっていた。


(し、死ぬ…)


命綱なしでこんな上空まで連れてこられてしまったら、残された選択肢は死のみだ。

サヨナラ世界…

そんな間抜けな考えをしているうちに、本館の最上階に到着した。


(ここ、校長室よりも上の階だ…屋上に近いな。)


「とうちゃーく!急にごめんね。こうでもしなきゃ、君と2人でお話できないと思って。」


「構わない(ですよ…)」


空中散歩の余波で、口はガタガタしており無論キチンとした発音など出来るはずもなかった。


「ありがとう!」


グリフォンは嘴を俺の頬に寄せてきた。
グリフォン式の謝意の表し方なのだろうか。

咄嗟に隣の家のタロ(柴犬)の頬擦りを思い出し、ノスタルジーに浸ってしまった。

タロ、元気でやってるかな…


無意識で、グリフォンの嘴に口付けし、頬の毛をモフ、と堪能する。

首元の毛を撫でつけて…


ー ハッ!!!!


何やってるんだ俺!!
今のは完全に変態の所業だ。
弁明できない。

ホラ!グリフォンも固まってるじゃん!!!

バカ…俺…


警察に捕まった際の弁明を考え始めていたら、グリフォンから蚊の鳴くような声がした。


「どうしよ、話そうとしてた事全部忘れちゃった…」


ああああごめんね…

さっきから思ってたけど、外見と話し方のギャップ凄くない…?

って、どうでも良いよね…本当にごめん…


「ごめん、つい、可愛くて。」


「可愛…っ?!」


(これはまた言葉選びをミスりましたね…!)


「…もっかい、撫でてくれる?」


キュルン、と目を潤ませてこちらを覗くグリフォン。

…こんなの、陥落しないわけがない。



フサ…

マーナの毛の触り心地とはまた違う、羽毛特有の柔らかさと軽さ。

今まで触った事がない、繊細な感触だ。

(確か鳥は、顔付近以外は接触NGだったはず。)


まず嘴の辺りの羽を解す。

グリフォンは撫でられて気持ち良さげに目を瞑っている。

そこからスルリと頬の少し奥に手を伸ばした。


「!そこ…ッ」


ー ここがお気に召したらしい


柔らかく撫でつけ、クリクリといじってやると喉を鳴らし始めた。

身体を預け、こちらに擦り寄ってくる。

首辺りまで手を下ろし、撫であげるとブルリと身体を震わせた。


「ん、…」


あ、この角度めっちゃ顔にモフモフが当たって気持ちいい。

グリフォンは嘴で首辺りを甘噛みしてきた。


「すごい…気持ち良すぎておかしくなりそう…」


(え、そんなかな…凄いな俺の手…)


もしやこれでマッサージ店でも開けるのでは…?

ぼへっとそんな事を考えていると、
グリフォンが人型になっていた。

え、いつの間に??


「聖獣の姿の時は羽とか触られたくないんだけど、人型なら大丈夫なんだ!
ね、撫でてよ。」


緩くウェーブした金の髪の毛をウルフカットにしている20代後半の男性だ。

現代風にいうとチャラい。

喋り方で言うと、さっきのグリフォンの姿より、むしろこっちの方がマッチしているかもしれない。


「どこを撫でればいいんですか?」


「えっとそうだな…頭と首!あと羽の生えてる肩甲骨あたり!」


(注文が嫌に明確だな。)

もしかすると聖獣って皆面倒臭いタイプなのか…?

失礼な事を考えつつ、オーダー通りのモフモフを開始する。


重たい前髪を掻き上げるようにして、巻き込みながらサラリと指を通す。

その間に頬を撫でるのも忘れずに。


「クルル…」


おっ、ちゃんと鳥っぽいぞ。
マーナの時もそうだったけど、やっぱり鳴き声は変わらないのか。

顎を持ち上げ、喉を擽り、撫で付ける。

ピクピクと反応しながら大人しく撫でられている様を見ると、ちょっと悪戯したくなってきてしまった。

ごめんな、グリフォン。

羽を避けて肩甲骨の辺りを揉み解すついでに、背筋をツツーっとなぞってみた。


「ひぁ!」


短い鳴き声を上げながらビクリと反応する。

お、好感触。


「も、もう…恥ずかしいよ…」


顔を赤くしながら少しモゾモゾし始めた様子を見て、
なんかいけない事をした気分になってしまった。


「はい、お終い。」


「ええー!もうちょっと撫でてよー!」


「約束があるので。また今度。」


時計は既に16時を指していた。
マーナを拾ってから校長室に行くから、時間がかかる。


「カンザキ!大丈夫か?」


息を切らせたマーナがズカズカと歩いてきて、張り付いていたグリフォンをベリっと剥がした。


「いたっ!何するのさ!」


「それはこちらのセリフだ。突然拐かしておいて何を言っている。」


「ぶー!独り占めは無しだよ!僕にも少年と遊ぶ権利はある!」


言い争いを辞めそうにないので、こちらから割って入ることにした。


「グリフォンさん、そろそろ約束の時間が…」


「あ、そうだったね。
今度からグリフって呼んで?その方がいい。」


「わかったよ、グリフ。じゃあまた。」


それが気に障ったのか、マーナが尻尾で叩いてきた。


「おい、カンザキ。誰彼構わず愛称で呼ぶな。私だけにしろ。」


「ぶー!独占反対!きっとカンザキ少年は博愛主義ですぅー!」


お、よくわかってるじゃん。

いや、そんなことはどうでもいい。

これじゃ埒があかないから、とマーナを引きずって校長室まで辿り着いた。

とにかく、時間間に合ってよかった…

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