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1章 ようこそ魔法の世界!
10 食堂
しおりを挟むマーナに案内してもらい、食堂に到着した。
今は丁度20時。
食堂も混む時間帯なのかもしれない。
かなりの人数が食事をとっていた。
マーナの様な獣人も珍しくないらしく、
至る所にモフモフな耳があった。
全体の割合で言うと3割ほどだろうか。
「なあマーナ、この学校ってかなりの人数が所属しているのか?」
「ふむ、前に小童が話していたな…確か3000人程と聞いたぞ。」
「へぇ、結構いるんだなあ…あ、あそこの席空いてる」
盛況のため、中々席が見つからずなんとなく周りを見渡していたが、
席を立つ2人組を見つけた。
(あそこに座らせてもらうか。)
「ここ座っても問題ないですか?」
席をたった二人組に声をかけた。
話を中断し、こちらを振り返った二人組は仰天した顔で、
「「ど、どうぞ!!」」
と走り去ってしまった。
「は?何?」
「詮無いことだ。気にするな。」
「おい、マーナ何か知ってるのか?」
「知らぬがなんとやら、というやつよ。
それよりも早く飯が食いたい。」
マーナに言いくるめられ、渋々と席につく。
あの二人組、驚愕の表情をする直前、俺をみた気がするんだよな。
(俺に何かあるのか…?)
ふと、隣に座る3人組がこちらをみている事に気づいた。
「何か?」
「あ、すんません。とても珍しい色を持ってるんだなと思って。」
「色?」
「その錆色です。髪と目の。」
「錆…(ダークブラウンなんだけど…)」
確かにこの世界、赤や黒や緑、金銀の髪や目を持つ人が多いな。
この目の前の3人組も赤黒緑と分かりやすい。
「まあ、確かに。この食堂でも唯一かもな。」
「何属性なんですか?錆色だから木とかですか?」
(属性…?やばい、なんて答えよう…
ここで魔力ないって言ったらセシルさんに迷惑がかかるかもしれない)
一縷の望みをかけて、チラッとマーナに視線をやる。
マーナはそれまでメニューに夢中だったが、俺の視線を感じフォローに入った。
「おい、カンザキ。早く注文するぞ。
腹が減りすぎて、そいつの飯を食ってしまうかも知れん」
「え"っ…」
話しかけてきていた緑の男の子は、急いでご飯を食べ出した。
ああ、巻き込んでごめんな…
俺は小声でマーナに話しかけた。
「ありがとう、助かった。」
「後で撫でろ。」
「え、なんで?」
ちょっと意味の分からない要求も承諾しつつ、パソコンの様な機械に表示されているメニューに目を通す。
これあれだ。格安居酒屋みたいにタッチで注文できるやつだ。
後で仕組みを聞いてみよう。
「私はこの肉料理にする。」
「あー、ステーキみたいなやつね。OK、俺は…卵料理にしようかな。」
メニューに掲載されている写真をタッチすると、注文が完了した旨が表示される。
「あ、やべ、俺金持ってない。」
「問題ない。ここでは支払いは発生しない。個人の口座から引き落とされるんだ。」
「へぇ、でも俺口座持ってないよな。明日セシルさんに聞いてみるか。」
セシル、と聞いて少々不機嫌そうに尻尾を揺らす。
本当に分かりやすいな。
「あの、」
あ、緑の人…まだ話しかけてくるのか。
「ここの生徒…ではないですよね。
数ヶ月経ってるけど、錆色は初めて見たんだ。」
「あー、まあね。使用人以上生徒未満ってところかな。」
「はあ…」
どことなく腑に落ちていない様だが、赤と黒の生徒から声をかけられる。
「ユージン、ズケズケと失礼だぞ。食い終わったんなら帰るぞ。」
「明後日までの課題終わってないらしいじゃん。さっさとやった方が身のためだよ。」
「あ!待ってってば!
…色々聞いちゃってすみません。またどこかで。」
「ああ。(できれば会いたくないな…)」
あの話ぶりからして1年生か。だとしたら同学年に近い。
もしこの髪の色や目の色がそんなにも珍しいのであればあの少年でなくても疑問に思うのだろう。
なにか答えを用意しておかなければ。
にしても、
「何でマーナは不審がられないんだ?
どう見ても生徒の年齢ではないだろ。」
いつのまにか配膳されていたステーキを頬張るマーナに問い掛けると、不思議そうな顔をされた。
「そりゃあ獣人の人型なんてこれくらいの見た目だからだろ。
先程も言ったはずだ。長く生きているから人型を取れると。」
「…成る程。」
周りの獣人を見てみると、確かにどの生徒も30代に見える。
獣人は人型にならなければ学院には通えないそうで、スタートラインはみんな一緒だという。
「まあ持たざる者とは過ごす時間が違うんだ。年齢などさほど問題にならん。」
「へぇ。寿命とかってあるのか?」
「ふむ、一般的には700年、800年と言われているな。」
(長寿どころの話じゃない…)
「へ、へえ。もしかして、セシルさんとかも…」
「あの小童か。そうだな。まだ200年と言ったところだろうか。」
「に、200…?!」
改めて、この世界の異質さを知った。
もっと周りを敬う姿勢でいかなければ。
「そんなことより、いいのか?卵料理が冷めるぞ。」
「そうだな。ありがとう。」
「食べて早く帰るぞ。」
「何焦ってるんだよ…」
「私を撫でるのだろう?早くしろ」
「へーへー」
まあモフれるなら早めに帰るか。
周りの視線をビシバシと受けながら、
オムライスに似た料理を頬張った。
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