BLゲームのモブ(俺)は誰にも見つからないはずだった

はちのす

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DLC本編

奇跡と必然

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「お兄ちゃん、ご飯まだ~?」

「はいはい出来てるよ~、お兄ちゃん張り切っちゃった!」


ここ1ヶ月ほど、俺はなんだかフワフワと宙に浮いたような気持ちで過ごしている。


長い夢を見ていたような、そんな気がしていた。


それと、何故だかは分からないけど、パソコンやゲームが気になりすぎて仕方ない。

一度起動してみても、特にやりたいこともなくただ閉じるだけ。

(俺、なんでこんなに電子機器を気にしてるんだろう)


「うぅ~ん、なんだろうこの感覚。持っていなきゃいけない物を忘れて来たみたいな…」

「なぁに、忘れ物?今日から新しい学校なんだからしっかりしてよね!」

「はぁい…てかお前こそ弁当忘れてるって!」


今日から俺たちは、新たな学校で、新たな生活を始めるんだ。


父が死んで塞ぎ込んでいた俺たち兄妹には更なる不幸が待っていた。
父の死をきっかけに、母が不倫相手と蒸発してしまったんだ。

保険金に一切手をつけず行方を晦ましたのは、不幸中の幸いだったけど。

そんな記憶とは決別して、俺たちは手元に残ったお金で心機一転、新たな土地で生活を始めることにした。


「今日から新しい学校とか、信じられないね!ひと月前に急に引っ越すって言い出した時はビックリしたよ…何かあったの?」

「いやぁ、ほら…色々あったし、吹っ切れるためにもね?」

「まぁ、あのクソ幼馴染から離れられると思うと清々するね!」


そのままの土地に残り続ける選択肢もあったけど、両親の記憶が強く残るあの土地と、虐めっ子気質の幼馴染とも離れられる良い機会だと思った。

(手痛い出費だったから、妹の学費を考えると、しっかりとした企業に就職しないといけないけど…)

今までの俺ならこんな思い切ったことは出来なかったと思う。

でも、誰かに背を押されるような、不思議な感覚がして、思い切って転校を決めたんだ。


「で、お兄ちゃんが行く学校何だっけ…あの…ゆ、勇者学園?」

「違うってば『勇都陽亜ユートピア』学園!……あれ、こんな名前だったっけ」

「ああそれ。当て字にも程がある!ってお兄ちゃんが言ってたんじゃん。忘れたの?」

「なんか既視感というか…いや、なんでもない。お互い初日頑張ろうね!」

「も~しっかりしてよね!じゃ、また家で!」


別々の道を歩き始める。

イレギュラーな編入時期だけど、クラスには馴染めるかな。

実を言うと、妹の環境は中学入学という段階からなため特に問題ないんだけど、
俺は3年からの編入なのだ。

(今度の学校では友達作り成功させるぞ…!)

俺はドキドキしながら、学園の門を潜った。



朝の通学時間ということもあり、人通りは多い。

さて、まずは職員室に向かわなければ。
そう思って一歩を踏み出そうとした瞬間…


「っ、おい田中!!」

「え?」


誰かに強く肩を掴まれて強制的に後ろを向かされた。

(なになに?!俺初日だよね、なんで名前呼ばれたの?!)

綺麗な茶髪の生徒が、驚愕の表情でこちらを見ている。


「え、す…み?」


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