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DLC本編

記憶

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白色蛍光灯に目を焼かれ、重い瞼を開く。
外は既に夜のようで、カーテンは閉め切られていた。


「起きた?寝坊助」

「え、すみ…?」


俺は混濁する意識と記憶を整理していく。

俺、暗い空間に閉じ込められて、それで江隅もそれに巻き込まれて…その空間で、諸々致して脱出することができたんだ。

江隅には悪い事したかもしれない…途中からコイツもノリノリだったけど。


「何を考えてるかは大体想像できるけど、取り敢えず外に出られたみたいだよ。それを喜ぼう」

「う、うん」

「…身体は?」

「大丈夫、だけど…江隅って中々激しいタイプなん「へぇ、延長戦がお望みかな?」違います本当にすみませんでした」


布団をガバリと被って自己防衛してみるが、暑さで当てられそうだ。


「で?これからどうするの。信じられないけど、君の言っていることが本当なら、何か事情があるんでしょ」

「あ、そうだ!そろそろ時間だと思うんだけど…まだワープはしてないみたい」

「ワープって、その元居た場所に?そしたら、ここにはどうやって帰ってくるの?」

「それが…かなり不定期でさぁ。実は前にこっちにきた時は1年前。向こうに帰ったら、帰ってこれるかも分からない感じ」


顔だけを布団から出した俺を、江隅は猫でもじゃらしているかのように、顎下を撫ぜる。

俺人間だから、ゾワゾワするだけなんですけど。


「帰らなければ良い…なんて僕には言えないから。でも、こっちばっかり思い出に振り回されるのも腹立つから絶対忘れんなよ」

「忘れてくれて良いのに」


(…普通に皆の記憶から消えられたら良いのにね。)

別れが近づくと、何だかネガティブになってしまう。

そんな俺の額をバチン!と弾いた江隅は少しは寂しがってくれているみたい。


「ひとまず、何かあるまでいつものルーティンでもするかな」


重い腰を上げ、パソコンに向かう。


「ルーティン?」

「あ、そう。日記っぽいのを書いたり色々してる。こっちに来たらやらなきゃいけなくてさ」

「へぇ」


ついでに時間を確認してみると、もう夜だった。

江隅には包み隠さず話してしまったので、もう気にすることもないかと目の前でレポートを書き連ねた。


「よし、これでオッケー!…あ」


記入されたレポートは、2行に集約された。

✔︎DLC    文化祭本番編
✔︎豎滄?  SRスチル


(また文字化けしてる…)

結局のところ、この動作不良は解決されなかったな。

でも、達成した状況から見るに、これは江隅のことで間違いない。


俺はふと江隅の様子が気になり後ろを振り向こうとして、バランスを崩してしまった。

頭をぶつけそうになった瞬間、世界がグルンと回る。

その感覚には、覚えがあった。


(こんな中途半端なところで…!本当は今日の文化祭で皆に挨拶したかったけど)


ぐるりと回る視界の中、最後の瞬間に間に合うように、どこにいても届くような大きな声で。


「江隅ッ!皆、じゃあね!」








チュンチュン…


「お兄ちゃん!起きて~!遅れるよ!!」


「ハッ、今行きます妹…よ…?」


布団から立ち上がった俺は、感じた違和感に気が付く。


「あれ、俺…さっきまで誰かと喋ってなかった?」


風が通り抜けた気がして、振り向くが誰もいない。


「…勘違いかな」


パソコンのデスクトップに表示された"レポート"のフォルダは、俺の記憶を揺り起こすことはなかった。

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