136 / 145
DLC本編
記憶
しおりを挟む白色蛍光灯に目を焼かれ、重い瞼を開く。
外は既に夜のようで、カーテンは閉め切られていた。
「起きた?寝坊助」
「え、すみ…?」
俺は混濁する意識と記憶を整理していく。
俺、暗い空間に閉じ込められて、それで江隅もそれに巻き込まれて…その空間で、諸々致して脱出することができたんだ。
江隅には悪い事したかもしれない…途中からコイツもノリノリだったけど。
「何を考えてるかは大体想像できるけど、取り敢えず外に出られたみたいだよ。それを喜ぼう」
「う、うん」
「…身体は?」
「大丈夫、だけど…江隅って中々激しいタイプなん「へぇ、延長戦がお望みかな?」違います本当にすみませんでした」
布団をガバリと被って自己防衛してみるが、暑さで当てられそうだ。
「で?これからどうするの。信じられないけど、君の言っていることが本当なら、何か事情があるんでしょ」
「あ、そうだ!そろそろ時間だと思うんだけど…まだワープはしてないみたい」
「ワープって、その元居た場所に?そしたら、ここにはどうやって帰ってくるの?」
「それが…かなり不定期でさぁ。実は前にこっちにきた時は1年前。向こうに帰ったら、帰ってこれるかも分からない感じ」
顔だけを布団から出した俺を、江隅は猫でもじゃらしているかのように、顎下を撫ぜる。
俺人間だから、ゾワゾワするだけなんですけど。
「帰らなければ良い…なんて僕には言えないから。でも、こっちばっかり思い出に振り回されるのも腹立つから絶対忘れんなよ」
「忘れてくれて良いのに」
(…普通に皆の記憶から消えられたら良いのにね。)
別れが近づくと、何だかネガティブになってしまう。
そんな俺の額をバチン!と弾いた江隅は少しは寂しがってくれているみたい。
「ひとまず、何かあるまでいつものルーティンでもするかな」
重い腰を上げ、パソコンに向かう。
「ルーティン?」
「あ、そう。日記っぽいのを書いたり色々してる。こっちに来たらやらなきゃいけなくてさ」
「へぇ」
ついでに時間を確認してみると、もう夜だった。
江隅には包み隠さず話してしまったので、もう気にすることもないかと目の前でレポートを書き連ねた。
「よし、これでオッケー!…あ」
記入されたレポートは、2行に集約された。
✔︎DLC 文化祭本番編
✔︎豎滄? SRスチル
(また文字化けしてる…)
結局のところ、この動作不良は解決されなかったな。
でも、達成した状況から見るに、これは江隅のことで間違いない。
俺はふと江隅の様子が気になり後ろを振り向こうとして、バランスを崩してしまった。
頭をぶつけそうになった瞬間、世界がグルンと回る。
その感覚には、覚えがあった。
(こんな中途半端なところで…!本当は今日の文化祭で皆に挨拶したかったけど)
ぐるりと回る視界の中、最後の瞬間に間に合うように、どこにいても届くような大きな声で。
「江隅ッ!皆、じゃあね!」
チュンチュン…
「お兄ちゃん!起きて~!遅れるよ!!」
「ハッ、今行きます妹…よ…?」
布団から立ち上がった俺は、感じた違和感に気が付く。
「あれ、俺…さっきまで誰かと喋ってなかった?」
風が通り抜けた気がして、振り向くが誰もいない。
「…勘違いかな」
パソコンのデスクトップに表示された"レポート"のフォルダは、俺の記憶を揺り起こすことはなかった。
34
お気に入りに追加
5,135
あなたにおすすめの小説
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
風紀“副”委員長はギリギリモブです
柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。
俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。
そう、“副”だ。あくまでも“副”。
だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに!
BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる