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DLC本編
遭遇、破綻。
しおりを挟む「おぉ…これは中々じゃない?」
「だね」
俺たちは完成した展示物を見て回っていた。
夏休みの自由課題だからか、結構それぞれの個性が表れている。
「『夏休みに食べた夕食のレシピ本』かぁ、確かにこれ面白いね」
「これは…『市内のマンホールの摩耗と交通量の相関について』…誰が作ったんだろう、これ」
「え~!すご、めっちゃ詳しく調べてる」
和気藹々と内容を眺めいてたところに、ふと目に入ったのは、A4サイズの薄いノート。
「これ…江隅のじゃん」
当の江隅は別の人の作品を熱心に見ているし、こっそり見ちゃおっと!
ペラペラと捲ると、犬の写真が何枚も貼り付けられていた。
「色んな種類の犬の写真…犬好きなのかぁ。分かる、可愛いよね!」
江隅ったら可愛いところあるじゃん~と一人ニヤつきながらノートを戻した。
「江隅!帰ろっか」
「うん…なにニヤついてるの」
「なんでもない!」
江隅の背をズイズイと押しながら、帰り道を進む。
「江隅ってなんか可愛いところあるよね」
「…意味が分からない」
本気の言葉らしく、心底わからない、と言った表情をしている。
ちょっと長めの前髪が、目を少し隠してしまっているが、口元の表情や雰囲気で感情がありありと伝わってくる。
「分かんなくていいもーん」
「あっそ」
そんな会話を続けていた時、よそ見をしていたからか、肩が通行人にぶつかった。
(アテッ!って、このベタな展開は…)
「あ"ぁ?」
恐る恐る見上げると、ぶつかってしまった人と目が合う。
…というかメンチを切られた。
ガタイがいい学ランの男子高校生は、制服を見る限り、うちの学園の生徒ではないらしい。
虫の居所が悪かったのか、軽い衝撃にもキレそうな小物感も相まって危険人物感が漂っている。
けど、不幸中の幸い、声からして昨日のサッカーヤンキーじゃないことは確かだった。
「おい肩ぶつかっ……あ?!テメェ、江隅だな!」
「ひぃっ、江隅?!お知り合い?!」
「誰あんた」
「あ"ぁ"?!中学の頃の記憶吹き飛んでんのかテメェ!」
「知らないな。行こう」
「え、江隅?!あの人、お前のことめっちゃガン見してるけど?!」
「オラァッ!」
俺の手を引いてその場から立ち去ろうとした江隅に向かって、力の入った叫びと共に拳が飛んだ。
(速い…!俺じゃなきゃ見逃してたね)
声も掛けられないほど速い拳を受けた江隅は、あっけなく倒れて……いない。
なんと、飛んできた拳を自らの手で打ち付けて、軌道を逸らしていた。何事?!
江隅は苛立った表情で前髪をかき上げ、低い唸り声を上げた。
「お前みたいな小物、一々覚えらんねぇんだわ」
「ふざけやがって!」
威勢よく睨み合う二人のすぐそばに、わたわたする俺。
「え…え?どうなってますのん?」
(というか江隅、人格変わってない?おバカな優等生はどこへ!)
「た、たすけて嘉賀先輩~!!」
突然ストリートファイト会場に早変わりしてしまった広い道路に、俺の情けない声が響いた。
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