BLゲームのモブ(俺)は誰にも見つからないはずだった

はちのす

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DLC本編

護衛任務(?)

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モブ先生のホームルームが済むと、クラスメイトみんなで最後の仕上げだ。


「こういうものって、凝りすぎるとゴールが分からなくなるよね。」

「おじさん臭いこと言ってないで、ちょっとは手を動かしてよ」

「はぁい」


こういうことには真面目ちゃんな江隅はテキパキと仕事をこなしているが、クラスのモブ達は昨日に比べてダラダラと働いている。

最後は適度に手を抜く方向になっているらしい。


「そういえばさ、江隅は屋上のヤンキーの素性は知らないの?学園の噂に詳しいんでしょ?」

「ヤンッ…いや、知らない」

「そっか~、まあいつまでもコソコソするのは癪だし…モブ先生に相談してみようかな」

「なんで?!」

「え、なんでってなんで?!むしろなんで相談しないの皆!」

「ま、まあそうだけど…僕は放っといた方がいいと思うけどな」

「え~、いつまでも屋上に行けないの嫌じゃない?青春といえば屋上だもん」

「別に困ることないでしょ」

「俺は困るの!」


モブ先生~!と俺が駆け出そうとした瞬間、ガッチリと腕を掴まれる。


「待て」

「へっ?」


腕を掴んできた江隅を振り返ると、いつもの澄ました顔はどこへやら、必死な表情で俺を見ていた。


「お…僕の傍に居ればいいんじゃないの」

「…ん?」


意を決した表情の江隅の口から飛び出てきた言葉。


「え、江隅…それって告白?!キャッ!」

「違うよ、耳大丈夫?」

「あ、あまりに辛辣な返しに俺…トラウマになりそう」


ウワァァン!と嘘泣きを披露していると、居心地が悪そうな表情をした江隅が俺の服を引っ張った。


「なんでもいいから、一回座って」

「ウゥッ、そんなら何?俺のこと、江隅が守ってくれるって?」

「まあ、そういうこと…になるかな」

「えぇ、でも江隅だし。なんか頼りないなぁ」

「よほど僕のことを舐め腐ってるようだね、腕を振り切れなかったのによく言うよ」


言い切った勢いのまま、フンッ!とそっぽを向いた。

(そういや、力めっちゃ強かったな…俺を保健室に運んでくれたのも江隅だし)


「よし。あと数日だけど、護衛よろしくお願いします!!!」

「まさか、文化祭当日も?」

「当たり前じゃん!学年跨いでたら、1番遭遇率が高いのは文化祭!」

「うっ」

「とにかく、今日は一緒に帰ろ?」


お願い!と両手で祈るポーズをとりながら江隅を拝み倒す。
ついでに少し高い位置にある江隅の目のあたりをジッと見つめておく。

これは頼み事を断り辛くさせる『おねだり戦法』だ。


「田中君って、"お願い"できたんだ」

「待って、俺ってどんなイメージだった?!」

「まあ…僕が言い出したことだし。一緒に帰ろうか」


頭の中で軽快なファンファーレが鳴り響く。
▼ 田中 は "ごえい" を手に入れた!


「よぉし!そうと決まれば準備早く終わらして帰ろうよ!」

「はいはい…もう怪我しないでよ」


(江隅って、なんだかんだ文句を言いながら面倒を見てくれる、優しいヤツなんだよなあ。)

帰りの楽しい時間を思って、るんるんと弾む気分が止められない俺は、機嫌良く準備に取り掛かった。


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