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DLC本編
忍び寄る足音
しおりを挟む「ただいマイハウスゥ…」
ぼすん!とソファに身を沈めて、足をジタバタさせまくる。
「先輩、もう会ってくれないのかなあ…」
(でもそうだよな、俺なんか1年間ほっつき歩いてた訳だし、こうやって受け入れてくれてる皆に感謝しなきゃなぁ)
ワードソフトを立ち上げ、レポートを書き始める。
その間も、ちょっとした胸のモヤモヤは取れない。
「あぁもう!ダメダメ、田中!
前向きに行こう。俺はポジティブな元引きこもり!!
おもしれぇ現ニートとして、出来ることを頑張らなければ!」
俺は決意を新たに、慌てて寝る準備を始めた。
詰めが甘々でガバガバと言われがちな男こと俺。
昨日全く進まなかったストーリー回収画面にあまり注意を払わなかったことを、後に後悔することになるのだけど…
その時はもうホカホカなお風呂とフカフカなお布団の事しか頭になかった。
「よっしゃ寝るぜ~!!!」
✔︎ ストーリー分岐 "○○○"
✔︎嘉賀 SRスチル
文化祭準備最終日。
学園内は、明日から始まる文化祭に合わせ、熱量も爆増していた。
そこかしこで楽しげな声が聞こえる中、俺は忍者の様に教室に向かっていた。
ひとり寂しい奴だと思われようと、致し方なし。
なんせ昨日あんなアウトローな現場を見てしまったのだから警戒もする。
(我隠之者也…)
影から影へコソコソと移動する様を見た他の生徒は、この時の田中の様子を『コソ泥かと思った』としか表現できないだろう。
「…ねぇ田中君、何してんの」
影に乗じてしなやかに移動していた俺に声を掛けたのは、お馴染みの江隅だった。
「ッワァッダァ?!?!」
「うわ煩っ」
江隅は俺のマジビビりに気圧され、耳を塞いでいる。
失敬な!!
「どっから声出てるの…?オペラかなんかやってた?」
「わっ、すごい煽り方してくる…まさか見られてるとは思わないじゃん!」
(とにかく、江隅と合流出来たし、闇討ちの危険性は無くなったな。)
朝から誰かに見られているような、そんな感覚だった俺は、ほっと胸を撫で下ろす。
「あ、江隅!そういや昨日は保健室まで運んでくれてありがとう~心の友よ!」
「なんか怒られそうだから、その呼び方やめて。…今日はしっかり寝てきた?もう準備も大詰めだよ」
「今日はしっかり寝たし、昨日の分も働かせていただきますっ!」
腰が痛い事は隠しつつも、明るく振る舞う。
江隅は特に反応は見せず、ふぅんと相槌を打つとそのまま教室に向かって進み出した。
「ていうか、さっきの怪しさ満点の動きはなんだったの」
「へ、あぁ…そうだ、聞いてよ江隅ぃ~!
昨日江隅と別れた後なんだけど、旧校舎の屋上に行ったんだよ」
「…は?」
「そしたらさ、なんか喧嘩したのかな…人を蹴り倒してる奴を見かけちゃって」
「え、なんで…学園の不文律、教えただろ」
「あ~まあね、その時はすっかり忘れててさ!」
そこまで話して江隅の顔を見た。
(…あれ、なんか顔色悪くないか?)
江隅は眉根を寄せ、青い顔をしていた。
さっきまでこんな表情はしていなかったはずだけど。
「そ…そいつの顔は見たのか?」
「いや、逆光になってて見えなかった…でも向こうからは見られてた可能性があるわけ…もう終わりだぁ!」
「…そうか」
俺がダンダカと地団駄を踏んでいる間に、落ち着きを取り戻したらしい江隅は、急に歩く速度を上げる。
「え?どしたの江隅」
「話終わったんなら、教室に行こう」
「えぇ~、江隅から聞いたのに!なんか冷たい!プンプン」
俺の寒い効果音にも感心を示さない。
(なぁんだ、江隅に一緒に対策考えてもらって欲しかったのになぁ)
そうやって少し気まずい雰囲気になったまま、俺たちは遅れてクラスの準備に合流した。
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