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DLC本編
クール&クレイジー
しおりを挟む眩い光が引き、画面の表示が見えるようになってくる。
「これは…嘉賀先輩…?」
ネオンが煌めく夜の街で、嘉賀先輩が一人佇んでいるスチルだ。
「アバター作った瞬間に引くとか…
もしかしてそういうシステムなのかな、って、わぁ!!!!」
はっきり言うと油断していた。
(そういえば、スチルを引いたら何故かワープするんだった!)
何かの引力に巻き込まれたかのように、目の前が回転する。
「おぎゃぁあああ!」
「へぶしっ!」
「オイなんだ…は?」
「いてて…あ、嘉賀先輩。お久しぶりっす!」
「…」
あまり綺麗とはいえない床に、べショッと落下した俺。
その音に驚いて振り返った嘉賀先輩とバッチリ目が合った。
1年前の記憶の通り、髪色は煌めく銀のまま。
ただ、その容貌はより洗礼されていた。
そう思うのも、嘉賀先輩が着ているスリーピースのスーツせいだろうか。
先輩は驚愕した表情を浮かべていたが、徐々にその顔立ちを怒りに染めていく。
(え、あれ…?俺、気に障ること言った?)
「オイ、テメェに聞きてぇことは山ほどあるが…いつからそこにいた」
「今しがた到着しました!!」
「チッ、何で気が付かなかったんだ」
先輩は未だ床に突っ伏している俺のすぐ隣まで歩んでくると、その長い足を折り膝をついた。
俺の頭上で、綺麗な形の口がニヒルな笑みを作る。
「なぁ、田中。通行料は持ってきたんだろうな?」
「え?…やきそばパンですか?!」
「そうだよ、ホラ出せよ」
「こんなに洗礼されたイケメンが、やきそばパンに執着しているなんて…っ!」
「冗談に決まってんだろ」
軽く腹パンを食らわせてきた先輩は、そのまま俺の手を掴み、力強く引っ張り上げた。
「おわっ!ビックリしたぁ」
「お前何しに来たんだよ、こんなところまで」
「えっと…たまたま通りかかって先輩を見かけたので会いにきましたっ!」
「たまたまで、学園から数キロも離れたビルの屋上まで上がってこねぇだろうが」
「うぐっ」
「それとも何だ、奴らに唆されたか?」
「へ、奴らってなんですか?」
「…んな訳ねぇか。奴らも馬鹿じゃない」
嘉賀先輩は一人でブツブツと話し続けている。
一瞬揶揄われたようにも思うが、先輩のご機嫌を損ねないように黙っておいてあげた。
俺は大人だらかね!!!
「だったら、本当にお前は俺に会いにきたのか?」
「そう言ったじゃないですか!もう、随分疑いますね!!」
「そうか、ならどんな事になっても文句ねぇな?」
「なに…っい"!」
言い終わるより早く、先輩は俺をひっくり返して、頸に顔を埋めた。
そしてその勢いのまま、肌に歯を突き立てる。
その力強い刺激に、皮膚がギシリと悲鳴を上げた。
「あ"ッ!…せ、んぱ」
「抱かれにきたのかって聞いてんだよ」
「そ、そんなわけ…っひ」
最後にチロッと舐められた首筋が、ヒヤリとした秋の空気に晒されて、背中がむず痒く感じる。
「っ、首噛むの好きですよね」
「あぁ?余裕だなお前…まあ気分は良いな。虫除けにはなるだろ」
「こんなん普通の人からも避けられますって!!」
「喚くな、俺にだけ構われてれば問題ねぇだろ」
「ひぇ」
なんか1年会わないうちに、言葉選びが過激になってないか…?!
先輩は俺の頸から口を離すと、正面からガンをつけてくる。
いちいち怖すぎるって…!
「せ、先輩、素敵なスーツ着てどこかお出掛けなんじゃないですか?時間とか大丈夫なんですか」
「良い。くだらねぇ会合だ」
「会合…そ、そうですか」
「で?このビルの下は俺の部屋だが…どうする」
剣呑な目付きの奥底に秘められた欲情に晒され、チリッと焼き付くような痛みを身体中に伝播していく。
(あ、この感じ、めっちゃ狙われているぞ…)
ここ1年休眠期間を経ていた俺の尻が、連続勤務で疲れ切っているのだ。
これ以上稼働させられない。
「せんぱいっ、後でお願い聞いてくれますか?」
「あ"?何…っ」
俺は怪訝な顔をする嘉賀先輩を揶揄うように、目の前の銀髪をそっと撫で、首に擦り寄るように抱きついた。
「えっちなことはしませんけど、部屋でお話ししたいです!後でパン買ってきますから!」
「お前…イイ性格してんなぁ、本当に」
「それほどでもぉ」
「褒めてねぇよ」
嘉賀先輩は諦めたように溜息を吐きながら、逞しい腕で俺を抱き上げ、下の階へ続く階段に向かった。
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