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DLC本編
準備とハプニング
しおりを挟む「やば…本当に一睡もできなかった」
あんなに大胆な事をしておきながら、ストーリー外だ、なんて目が醒めるような事実に直面した俺。
睡魔なんて一切来ず、ただただ里田の顔が飛び交う空間…否、虚空を見つめていた。
「どうすればいいんだ、俺…」
フラフラとした足取りで支度を整える。
寝なかった事で、逆に冴え過ぎてしまった目が、昨日のガチャ特典を捉える。
「こんなもんどっかに隠しておかないと、見つかったらなんて言われるか!」
(学校でも後ろ指刺されて"やーい変態!"って馬鹿にされるに違いない。)
寝不足のせいか中身のない想像を膨らませる。
本当にバレることになったら、良くて引かれる、最悪我が尻の治安が最悪になるだろう。
「くわばらくわばら…」
登校途中で、ここ最近で見慣れた背を見つけた。
「江"隅"ぃ~おはよぉ」
「おは…どうしたの、そのクマ」
江隅は俺の顔、主に目の下あたりをガン見している。
何となく視線があっていないのは、目のクマを気にしていたかららしい。
「え、そんなにひどい?」
「うん。正直にいうと酷い。声もガラガラだし」
(グッ、声については里田に文句を言いたい…!!)
「あ、はは…」
「今日明日は最後の詰めだから、多分こき使われるよ。どっかで寝てきたら」
江隅はさして心配している様子でも無かったが、一応配慮のある提案はしてくれる。
「倒れられたら僕が運ばなきゃいけなくなるし…」
「ぬ"」
掛けられた言葉に、思わずなんとも言えない反応を返してしまった。
(だって、不器用なツンデレみたいなこと言うからさ…!)
「ほら、さっさと教室に入って」
いつの間にか到着していた教室に押し込められる。
「さて、寝不足の体に鞭打って働いてね」
「さっきと言ってることがちがぁぁぁあう!!!」
「その元気があるならできる。頑張れ。」
江隅はあしらい方を日に日に磨いていたらしく、取り付く島もない。
軽くいなされるとメンタル弱々勢の俺は言い返すことも出来ず、フラフラと準備に取り掛かった。
昼頃になると準備もいよいよ終盤になり、クラスメイトたちがワイワイと最後の大掛かりな飾り付けをしている。
柱のようなものを立て、そこにカラフルなガーランドを飾るらしい。
男子校のわりに装飾が可愛らしいな…と遠い目で見ていたら、モブの一人に声をかけられた。
「田中君、この資材運んでくれる?今こっち誰も手が離せないんだ!」
「あ、もちろん!お任せ~」
振り返った先にいたモブたちの表情は、何だかとてもワクワクしていた。
少年期のような笑顔に、なんだかとても救われた気持ちになる。
(ストーリーとかそうじゃないとか以前に、皆すごく楽しそうじゃん)
にへらと笑って、モブに手を振ったその瞬間。
「っ、危ねぇ!!」
誰かの鋭い叫びが耳に届くか否か、俺は全身に強かな衝撃を受けて視界を暗転させた。
カァー!カァー!
夕陽が差しているのが瞼に透ける色で分かる。
鼓膜を震わすカラスの声で、意識が覚醒した。
(…あれ、俺、寝てる?)
目を開くと、白い天井が目に入る。
オシャレマイハウスの天井は少しグレーがかっているから、家ではないことは確か。
「そ、か。ぶつかった、のか」
「もはや奇跡的な確率だよ。僕がカバーに入れたから大した衝撃は無かったはずだけど、寝不足の田中君には効果覿面だったらしいね。
…まあ結局、僕が運ぶことになったわけだけど」
「ん、えすみ…?」
「…はぁあ、調子狂うなあ」
頭がまだボヤボヤして、江隅の言っていることが認識できない。
「えすみぃ」
「…何?」
「たんこぶ、できてない?」
「っぶは!」
事あるごとにぶつけていた頭部を心配すると、目の前の澄ました顔が思いっきり破顔した。
(え、おれ、なんか変なこといった?)
江隅は笑いながら俺の後頭部を軽く触る。
「で、出来てない、ぶふ…多分…ふふっ!」
「…笑うなし」
爆笑する江隅を見ていたら、段々と脳がクリアになってきた。
けど、なんでそんなに笑っているか未だに分からないぞ!!!
「は~、たんこぶなんて単語、久々に聞いた。元気そうだね。安心したよ」
「お騒がせしましたッ」
「…じゃあ、僕はそろそろ帰らなきゃだから。あ、先生も気にしてたから寄ったほうがいいと思う」
「ハイ先生!」
「僕が先生?面白い冗談だね」
最後までちょっと変な表情を浮かべた江隅が、保健室からそそくさと退出する。
なんだか逃げ帰るようなその態度に、違和感を覚えた。
…とりあえず、モブ先生に会いに行かなきゃ。
俺は、明らかに衝突事件が原因ではないだろう身体のだるさを我慢しながら、職員室へ向かった。
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