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最後の晩餐
しおりを挟む「…で、結局夕方だよ。」
俺は不貞腐れながらベッドで転がっていた。
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ…
「謝らねえぞ」
「いや強情か!そこは謝ってくださいよ!!」
「転校前最後にお前を抱いたのが俺って事実が、滅茶苦茶気分がいいからな。」
先生が何かをハッと思いついた様にこちらを向く。
「そうか…最初から最後まで、俺だな?」
ニンマリ、と笑ったその顔が憎たらしくて、俺は思わず枕を投げた。
「うるさい変態教師!!」
「田中、歩けそうか?飯の準備ができた。」
「…歩けないです」
秀先輩は相変わらずのスマートさで俺に歩み寄ると、俺の膝に腕を入れ横抱きにする。
死ぬほど恥ずかしいが、運んでもらう以外にご飯まで辿り着く方法はない。
「うう…」
「田中、色々苦労をかけたな。準備で大変だろうに…」
「あ、準備は終わってるので大丈夫です。」
そもそも準備とかないしな。
「そうか…。」
先輩は寂しげな空気を醸し出している。
そうだよな、親しくしていた部員が早々に辞めていくんだ。寂しくもなるよな。
「ごめんなさい、先輩…転校のこと。」
「あぁ、事情があるんだろう。
…仕方ないとはいえ、急だったな。」
「そうなんです。どうしても行かなきゃいけなくて…」
「……」
秀先輩は俺が喋っているにも関わらず、唇を重ねてくる。
不安定な体勢のため、逃げようがない。
「んっ…ふ」
「いつでも帰ってこい。…その時には俺も一人暮らしを始めよう。」
食卓に到着した秀先輩は、俺を席に座らせると、向かいでご飯を食べ始めた。
「あれ、先生は?」
「ああ、タバコでも吸ってるんだろう。
…口寂しいとすぐ吸い始めるからな。」
へえ、と思いつつそういえば俺の前では吸わないな、と考える。
(気を遣ってくれているんだろうか…)
…ちょっと嬉しい。
朝食兼昼食兼夕食を胃に入れると、
体の調子も戻って来た。
「じゃあ俺、帰ります。」
「もう行くのか…?」
「流石に引越し前日に他所に泊まるわけにはいかないので…」
「おー、行け行け。秀、送ってけよ。」
先生はこちらを見ずに、ヒラヒラと手を振っていた。
「兄貴はいいのか?」
「…捕まえたくなるからな。とっとと逃げろよ。」
煙草の煙を吐き出し、チラリと流し見られる。
ゾクっとした背筋の寒気を感じなかったことにして、俺は秀先輩と先生の家を出た。
「…元気で。」
「秀先輩も、お元気で!」
ポンポンと頭を撫でられ、秀先輩が去っていく後ろ姿を目で追う。
(良い人だったなあ…)
俺は重い体を引きずりつつ、心はホクホクさせて部屋へ帰った。
「ただいマイハウス!!!」
さて、いつものレポートを済ませちゃおう。
これが多分、最後のエピソードだ。
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