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クラスメイト
しおりを挟む「は~主人凄かったね!なんか…いつもと全然違った!!」
「ブッ!なんだその感想!内容については無いのかよ。」
「面白かった。」
「……」
俺以外のメンバーで和気藹々している中、俺は一人ムスッとしている。
理由はもちろん、あの台詞たちだ。
映画を見たかっただけなのに、あらゆる記憶が蘇ってしまって一人で百面相してしまったのも悔しい。
(このまま主人とは口聞いてやらないもんね!)
「田中は?どうだった?」
「ぐぅっ…面白かったと…思う。」
主人に直接話しかけられて仕舞えば、細やかな抵抗も一瞬にして無いものになってしまう。
一部内容が猛烈に記憶に残ってしまっているが、それ以外の面も確か面白かった気がする。多分。
「んじゃ、メシでも食って帰るかあ~」
「割といい時間だね。」
「俺オムライス~」
「里田がオムライスになってるらしい。」
肩を並べて周辺の飲食店を探す姿を見ていると、自分の中でストンと憑き物が取れた感覚がした。
…俺が居なくても、3人で仲良くやっていけそうだ。
「田中!なんか食いたいもんあるか?」
「…俺もオムライスがいいな!!」
中途半端に出て行ってしまうこと、少し気掛かりだったけど…これなら大丈夫だな。
俺は3人の背をポンッ!と叩くと"ありがとう"の念を送った。
若干力の加減が出来なくて痛がられたけど、それもご愛嬌だ!
「よし!今日は語り尽くすぞッッ!!」
******
「ただいマイハウスッ~!!!」
俺はドアを軽やかに開け放ち、部屋に転がり込んだ。
あの後、3人には月曜日は朝から用事が立て込んでるから、と当日は会えないかもしれないと伝えた。
俺としては皆に笑って送り出してもらいたかったが、気が付いたら俺が泣きそうな顔になりながら皆に抱き着いていた。
皆嫌がることは勿論なく、俺の頭をわしゃわしゃと撫でてくれた。
(皆、前を向いて歩いてくれるだろう。)
俺はそう確信して皆と別れた。
「辛気臭いのやめっ!!!」
まだここに居たい、という甘い誘惑を振り切るようにパソコンを確認する。
「そういえば、嘉賀先輩とのエンドってどうなったんだろ…」
主人: ✔︎初期 ✔︎友情 ✔︎R18
里田: ✔︎初期 ✔︎友情 ✔︎R18
黒木: ✔︎初期 ✔︎友情 ✔︎R18
嘉賀: ✔︎初期 ✔︎友情 ✔︎恋愛
皇秀: ✔︎初期 ✔︎友情 ー?
皇輝: ✔︎初期 ✔︎友情 ✔︎R18
「変わってない…てか、そうだったぁぁあ!!」
「もう俺帰ります、みたいな空気漂わせてたけど、秀先輩のエンド回収してないんじゃん…っ!!!」
今日一日が楽しすぎて忘れてた…っ!!
タイムリミットは明日を含めあと2日。
相手は連絡先も知らない先輩で、そもそも金曜日にしか会う予定がない。
「……詰んだ。」
先輩のこと知らなさすぎて、何処にいるかなんて分からないし。
月曜日は何時にタイムリミットが来るかも分からない。
…どうする事もできず、俺はベッドに倒れ込んだ。
「俺、本当に帰られるのかな…?」
限りなく濃く漂う手詰まりの香りに、
俺は毛布にくるまって不安をやり過ごすしかなかった。
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