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理解と納得はノットイコール
しおりを挟む「え?なんて言ったの…?」
「あ~、えっと…何でもない。」
バッッカ俺!!あまりにも黒木が嬉しそうだから、ついついポロリしちゃったよ!
この反応は完全に聞かれたな…どう言い訳するか考えなきゃ。
「その顔、何でもないわけない。」
「ウッ…!」
「その"世界"って言うのが、転校の原因?」
もう駄目だ…黒木はどう言っても忘れてくれないだろう。
話せば気が楽になるかもしれないし、黒木にだけは話してしまおうか。
「あ~、信じなくても良いけど…俺、違う世界?っぽいのから来たんだよね」
「うん」
黒木は相槌を打つだけで、口を挟む気はないようだ。
「それで、帰りの期限が決まってるぽくて…それが月曜日の朝。」
「…うん」
「行き来は出来ないと思う…から、月曜の朝で会えるのは最後かな。」
「……」
黒木は、ソファで俯いたまま、数秒考え込んでいた。
(あれ、反応無し…?)
やっぱり頭のネジが飛んでると思われたか…?
不本意だが、黒木の中では里田と同類として扱われることになりそうだ…ッ悔しい!!
俺が心の中でハンカチを噛み締めていると、
ようやくフリーズ状態から戻った黒木がこちらに向き直る。
「分かった。」
「そうだよな…別に信じなくても……ん?」
"分かった"…?
「どうしても遠くに行くって言ってた理由、理解できた。」
「く、黒木ぃ…」
想像以上の頭の柔軟さに、俺は感動に打ち震えた。
こんなにすんなり受け入れてくれるとは…!!
黒木はそのままのテンションで、言葉を続ける。
「でも、もしこれが、俺を避けるための嘘なら…」
黒木は繋いだままだった俺の腕を引き、
グイッと顔を近寄せた。
(あれ…デジャヴ?!)
「どこにも逃げられないように、閉じ込める。」
「ひぇ」
ほ、本領発揮だーッッッ!!!!
黒木の見せた暗い部分に、俺の脳内はお祭り騒ぎだ。
いや、恐怖で騒いでるからね?!
そんな状態の俺に気が付くことなく、
黒木はうわごとの様に何かを溢した。
「ここで我慢しても、月曜日には田中君は帰っちゃう…
そしたら、もう触れられない…」
小さすぎるその声は、俺の耳には届かない。
聞き返そうとしたが、黒木の動きによって阻まれた。
繋いでいた手を突然解き、縋るように抱き着いてきたのだ。
「田中君、月曜日までしか時間がないなら…今いっぱい触れたい。」
ガッシリと抱き込まれ、身動きが取れない。
黒木は俺に抱きついたまま、肩口に顔を埋める。
「お願い。」
もう既にソファーに座るような体勢ではなく、押し倒されている状態になっていた。
ここから復帰するには、黒木を蹴り上げるしかないが…
そんな気は到底ない。
脱出方法を探っている間も、黒木は俺に甘い刺激を与えてくる。
黒木は首が好きなのか、首筋を舐め上げ、喉仏を甘噛みしている。
歯を立てられれば怪我につながる場所を、ゆっくりと、優しく舌で弄ぶ。
「っん!」
チュッ、と言う音が聞こえ、ピリッとした痛みを感じた。
「離れたくない…行かないで」
懸命に訴えかける黒木の身体は小刻みに震えていて、何かしなければと言う衝動にかられる。
(いや、何も出来ないから!!ダメダメ!!絆されるな俺!!)
俺はと言うと、情に流されそうになるところを、寸で踏みとどまっている状態だ。
俺は向こうに帰ってからも、彼らの存在をゲームを通して感じることができるが、黒木にとっては今生の別れなわけだし…
ハッ!
意思を強く持つんだ田中悟!!
これは犬の戯れ、これは犬の戯れ…
よし、NOと言うんだ俺!!!!
確固たる決意で、黒木を押し退けようとした。
その時、視線がピタリと合わさる。
黒木の目は潤み、眉は切なげに歪んでいた。
「俺を置いていかないで…」
甘く囁き、俺に口付ける。
優しく唇に触れるようなキスを受け入れながら、俺はぼんやりと思う。
(こりゃあ…抵抗出来ないっすわ…)
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