BLゲームのモブ(俺)は誰にも見つからないはずだった

はちのす

文字の大きさ
上 下
63 / 145

デッド オア アライブ!

しおりを挟む

「…は?なんでだ。かなり譲歩しただろう。」


俺がOKすることを前提にしてる自信に、驚いた方がいいのか…?


「…別に先生が嫌いとかじゃない。

けど、どうしても無理なんです。」


そういうと、先生は訝しげな顔をして、俺に目線で話を促す。

あ、まずい。
無理と言ってしまったはいいが…言い訳を考えてなかった。


「え~と俺、あと数日で転居する予定で…」


「ハァ?もっとマシな嘘つけよ。」


「いや、嘘じゃなくて…本当です。」


「学校に手続き取ってないだろ。申請されてない。」


「あ~そういうのいるんですね。」


俺が惚けるような反応を返すと、先生は項垂れながら俺を睨みつける。

少なからず動揺しているようで、俺の足に座り込んでしまった。


「…それよりも、なんで急にこんな話が出るんだよ。

何かなくても相談しろって言っただろ。」


「いやぁ、タイミングを逃してしまって…?」


「釈然としないな…どこに転居するんだ。理由はなんだ。」


「う~ん…言いにくいので…」


俺がうんうんと唸っていると、痺れを切らした先生に足を持ち上げられる。


「本当のことを言え。言わなきゃブチ込むぞ」


(ブチ込む…?!え、もしかしなくても、アレをだよな?!)


真顔の脅しに、俺はひたすら汗をかくしかなかった。

貴方達がゲームの世界の人間です、なんて言うのか?
いや無理だ。俺だったら絶対に信じない。

だからと言って、都合よくここから消えられる言い訳あるわけもない。

先生は俺の様子を少し眺めていたが、
次第に眉間の皺を深めていく。


「よし分かった。…どうされても良いってことだな?」


「あーっ!待った待った!!話します!話しますから!!」


「最初からそうしろ。」


俺は尻の裂けそうな恐ろしい脅しに負け、赦しを乞うてしまった。


(ウゥッ…漢田中、不覚を取った…!!!)


「…掻い摘んで言いますけど…俺には帰らなくちゃいけないところがあるんです。

そこに待ってくれてる人もいる…はず。」


そう言うと、先生は不機嫌そうな顔をそのままに、俺の足を下ろす。


「今後は会えない…そう言いたいのか?」


「はい。距離とかの問題もあって、もう会う事はないと…」


先生は、俺の発言を遮る様に俺の唇を塞いだ。

呼吸を奪うかの様に侵入してくる舌は、
俺から話す意欲を掠め取っていく。


「せ、んせ…っん」


「っふ…認めねぇ」


ギラリと欲に光った目で、上顎を舐め上げられれば、すぐに絆されそうになる。


(キスがうますぎるぅ…っ!!)


でも、俺はこのまま有耶無耶にされると、
また話す機会を失ってしまうと思った。

何の説明もできず、強制帰還なんて絶対に嫌だからな!!!


「っん…まっ、て…話を!」


「…俺もお前を待つ人間の一人だ。それ以上に何かあるか?」


キスしたその距離のまま、先生と視線が合う。


ゾクッ…


先生の怒りや絶望が渦巻いた瞳に、
足の先から冷える様な感覚になった。

蛇に睨まれた鼠のように俺は硬直する。

頭から足の先まで、支配される様な、食べられてしまいそうな…


「一度離れる事は理解した。

…だが、何があっても、帰ってこい。」


その言葉は、呪いの様に俺の身体に染み込んでいった。
しおりを挟む
感想 193

あなたにおすすめの小説

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい

椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。 その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。 婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!! 婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。 攻めズ ノーマルなクール王子 ドMぶりっ子 ドS従者 × Sムーブに悩むツッコミぼっち受け 作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤバい薬、飲んじゃいました。

はちのす
BL
変な薬を飲んだら、皆が俺に惚れてしまった?!迫る無数の手を回避しながら元に戻るまで奮闘する話********イケメン(複数)×平凡※性描写は予告なく入ります。 作者の頭がおかしい短編です。IQを2にしてお読み下さい。 ※色々すっ飛ばしてイチャイチャさせたかったが為の産物です。

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

Q.親友のブラコン兄弟から敵意を向けられています。どうすれば助かりますか?

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
平々凡々な高校生、茂部正人«もぶまさと»にはひとつの悩みがある。 それは、親友である八乙女楓真«やおとめふうま»の兄と弟から、尋常でない敵意を向けられることであった。ブラコンである彼らは、大切な彼と仲良くしている茂部を警戒しているのだ──そう考える茂部は悩みつつも、楓真と仲を深めていく。 友達関係を続けるため、たまに折れそうにもなるけど圧には負けない!!頑張れ、茂部!! なお、兄弟は三人とも好意を茂部に向けているものとする。 7/28 一度完結しました。小ネタなど書けたら追加していきたいと思います。

処理中です...