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田中、現着です!

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「やあやあ!皆の者。息災か!」


首の歯形は大きめの絆創膏で塞ぎ、きっちりと制服を着込んで登校した。


「おはよう、田中君。」


「…はよ。相変わらず、自分を見失った挨拶だな。」


「え?なになに?ソクサイ?」


昨日色々とあった主人も含め、皆返事を返してくれるが、約1人おかしな奴がいる。


「里田お前…」


「呪文か何か?!ドラマの話?」


里田は放っておこう…多分もう手遅れだ。


「今日の課題やってきた?」


「やってきたよ。」


「一応な。解らないとこは適当に書いた。」


「あっ!即再会のソクサイとか?!

てかその絆創膏ナニ?!」


「…俺も一問解らないところあったわ~」


里田が1人大喜利大会を開催し始めた辺りで、先生が入ってきて話が中断する。



(さあて、今日は嘉賀先輩にどやされる日だぞ…)


俺は授業中も気持ちがソワソワとしてしまい、どうも落ち着かなかった。

嘉賀先輩は優しいんだけど、やっぱり掴みどころの無い人だ。

急に首噛んだりするし。


「今日は機嫌がいいと良いんだけどなあ…」


俺は放課後の人が疎らになった旧校舎を急ぐ。

旧校舎には、そもそも3年の教室と部室しかない。
最初から人が少ないこの校舎は、先輩の住処(?)としては最適なのかも知れないな。

屋上に続く廊下や階段には、人っ子一人いなかった。


「皆、嘉賀先輩を怖がってるのかなあ…」


(そこまで凶悪な人じゃない気がするんだけど…)


ちなみに、これをこの前主人に言ったら、遠回しにお前は鈍感なだけだと諭された。

そんな事ないし!!!


ついに到達してしまった銀のドアを、
ゆっくりと開ける。

ギィ…


「せんぱぁ~い!田中、現着しましたぁ~!!」


ブルブルと震えながら屋上に入ると、
視界には誰も映らなかった。

…いない?


(あ、いつも通り貯水槽のところか。)


そう当たりをつけて梯子を登ると、
そこにはスヤスヤと寝息を立てる嘉賀先輩がいた。


「あれ…寝てる」


いつも寄っている眉間の皺や好戦的な笑みもなく、無警戒で寝ている姿は、


「めちゃくちゃキレイ…」


特徴的な銀の髪が夕陽を受けて、薄黄色にキラキラと輝いている。

刻々と変わる夕焼けを味方につけているこの人の容貌や素性も含めて、映画のワンシーンか何かの様な神聖さがあった。


(でもどうすっかなぁ~!!!

起こすと戦闘狂スイッチを押しちゃうしなあ…)


「あ、そうだ!」


俺は先輩に当たらない様にゴロリと隣に寝転ぶと、自然に先輩が起きるまでの少しの間、惰眠を貪ることに決めた。
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