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痕跡
しおりを挟む「皆の者~!!!生きて帰ったぞ~っ!!!!」
俺が教室に到着すると、いち早く黒木が反応した。
「…大丈夫だった?」
「なんとか大丈夫だったわぁ…」
「なんとか?…ッそれは」
黒木は慌てた様に俺の襟元に手を掛けると、チラッと中を覗き見た。
すると暗い目を更に鋭くさせて、剣呑な雰囲気を纏い出す。
「…ねえ、この歯形何?」
あ、やべっ
あの後パン食べるのに夢中で、噛まれた事すっかり忘れてた…!
「えっと…犬に噛まれた?」
「君の首筋は昼前まで、いつも通り滑らかで美しかった。」
「ェェ…」
早口でその可能性を否定される。
めちゃくちゃ観察されてるじゃん!表現もなんか変態臭いぞ!!
「…先輩に付けられたんだよね?」
「ウッ…」
「殺す」
「待って待って待って!!不穏!ダメ絶対!!」
黒木は止める間も無く廊下に出てしまった。
止めなければ今にも誰かを手に掛けそうな危うさがあった。
噛まれただけでコレって…先生は既に命の危機ってことだな。ご愁傷様…
少し猫背気味な背にひっつき、動きを止める。
見た目ガリガリなのにどこにこんな力があるんだ、と言うほど強い力で引っ張られる。
やはり背が高い奴は同じ生物ではないのか…ッ!
「…田中君、先輩のこと庇ってるの?」
「いや、むしろ黒木が返り討ちに遭わないか心配でさ…」
あの人戦闘狂だから、確実に乱闘になる。
「そっか。それならやめる。」
突然黒木はぐるっと体を反転させ、上機嫌に俺を抱き締めてきた。
「田中君が悲しむことはしない…でも。」
突如として廊下の壁に押しつけられる。
「これは…上書きしなきゃね」
黒木は先輩の噛み跡に口を這わせると、
先輩よりは弱い力で歯を立てた。
「…っい!」
「ン…」
舐め上げてから、肌を吸われる。
ピリッとかゆい程度の痛みが走り、いわゆるキスマークを付けられたことを悟った。
「なんなんだよお前ら…」
「ふふ…」
黒木は満足そうに笑うと、襟元のボタンを留め始める。
きっちりと第一ボタンまで留めると、俺を解放した。
「痕をつけるなんて、随分な挨拶だ」
「いや漫画のセリフかよ…先輩は俺に対して怒ってたから噛んだわけだし。」
「違うよ。」
強めに否定される。
「気付いてないかもしれないけど、旧校舎の屋上って、新校舎の屋上から見える様になってるんだよ。」
近くはないけどね、と続けられた言葉に
俺は頭が真っ白になった。
ということは…さっきの耳ペロも見えてた…?!
「俺が睨んでいたことに気が付いたんだよ…あの先輩。性格悪いよね。」
「あ、あわわわ」
予想以上に策士な嘉賀先輩に震えが止まらない。
もしあそこで俺が抵抗を示さなければ、どうしていたんだろう。
黒木に最後まで見せつけるつもりだったのか?
いや、あれは本気じゃなかった。
楽しんでやがる…
「…でも大丈夫。次からは俺が迎えに行くく。」
「え!駄目だ!あの人は戦闘狂で…」
「問題ないよ。」
…へ?
「俺、こう見えても強いんだ。」
黒木はにこりと笑って、教室に戻っていった。
…初耳だよ…
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