45 / 145
クラスメイトと俺
しおりを挟む「主人ぉ~!!」
「お、田中。おはよ」
主人は昨日のあの戸惑いを感じさせない、爽やかな笑顔でこちらに笑いかけた。
なんか吹っ切れたのか?
「はよはよ!主人、今日一緒に帰るって約束、忘れてないよな?」
「いいのか?昨日あんな面倒臭いこと言ったのに…」
「だから~っ!!ダチの間にエンリョはいらないんだよ!!また何か悩んだらすぐ話せよな!」
肘で主人の腕を軽く小突く。
改めて見ると、どこをどう見ても、1人の人間だった。息もしているし…。
ふと気になって、手を握ってみると温かい人間の体温を感じた。
黒木の病みゾーンから救出された時も、感じたはずの熱。
あの時はなんで感じられなかったんだろう。
(今までは心を通わせているようで、表面上しか付き合えてなかったんだなあ…)
引きこもりだった俺にとっては人付き合いなんて久しぶりだけど、もう何も怖くなかった。
今やどんな曲者でも、きちんと向き合える自信がある。
「…田中?どうした?」
「あ、ごめん…主人って生きてるなって思って。」
「は?急になんだよ。」
「いや、こっちの話!!」
主人は"当たり前すぎて怖いわ…"と言いながら俺の手を握り直して引っ張った。
その顔には、もういつもの調子が戻っていた。
「黒木達に取られる前に席まで連行するから。」
いつもの分かりづらい真顔のまま、主人は手を繋いだまま、俺を席まで誘導する。
なんかエスコートっぽくて落ち着かない。
でもここで振り解くと、後でネチネチと真顔で嫌味を言われそうだからな!!!!
しかし、野生の勘の鋭い里田を撒けるわけもなく、繋いだ手が見つかってしまう。
「あー!!!田中っなんで主人と手繋いでんの!」
「…おはよう」
黒木はいつも暗い目を4割り増しに暗くしながら、挨拶してきた。
主人は2人に顔を向けると、ベッと舌を出した。
「お前らにはやんねーよ」
「えっ!なになに、主人どうしたの?!宣戦布告?」
「田中君…なんで主人君なの?」
「え、ええ~…どうもこうも無いんですけど…」
勝手に手を繋がれており連行されてます。としか答えようがない…
「俺は素直になるって決めたからな」
主人の謎の宣言により、クラスは混沌と化した。
と言うよりも、俺の周りがザワついた。
「何それ!俺だってめちゃくちゃ素直なんだけどぉ!田中、俺とも手繋いで!!」
「やっぱり既成事実を作らないと…」
口々に好き勝手な発言をするクラスメイトを見て、現実では経験したことのなかったリアルな"青春"を感じた。
(なぁんだ、俺もコイツらも何も変わらないじゃん)
一人で勝手に罪悪感感じて、バカみたいだ。
ただ俺は俺として、皆に嘘偽りない心でぶつかって行くだけだ。
「うぉら!!!!物理でぶつかるぜーーーっ!!!!」
「ぎゃっ!」
「あぶねーよ!!」
「ビックリした…」
俺は嘘偽りない心(物理)で、皆に体当たりしながら、決心した。
例えあと数日で帰ることになっても、
ここでアホらしく騒いだ愛しい経験はなくならない。
ここで過ごせるのはあと数日。
(絶ッッッ対、皆と仲良くなって帰ってやる!!!!そう、目指すはやっぱりコンプリートだ!!!!)
69
お気に入りに追加
5,135
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
風紀“副”委員長はギリギリモブです
柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。
俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。
そう、“副”だ。あくまでも“副”。
だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに!
BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる