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担任といっしょ!
しおりを挟むピピピピ…
「~んむぅ…あと365日…」
いや一年か!
俺は自分に突っ込みながら目を覚ました。
なんか夢見が悪かった気がする。
内容は全く覚えていないけど、なんか悔しいって気持ちが心を占領していた。
多分世に蔓延るイケメンのせいだろう。
「うぉぉおお!!憎むイケメン!!」
俺はガバリと起き上がったが、時計を見るといつもより2時間も早く起きてしまった。
「昨日寝る時に間違えて設定しちゃったんだな…俺のおバカ…」
もう一度寝ると絶対に遅刻する自信があるし、もう起きるか…
身支度を整え、散歩がてら早めに家を出発した。
朝6時。
まだ人もまばらで、足早に歩く寝不足そうなサラリーマンや、運動部で全国目指してそうなジャージ姿の学生がポツポツと居るくらいだ。
「まだちょっと肌寒いな。」
今行っても早すぎるし、通学路にある公園で暇でも潰すか。
中学生の頃に唯一の友達と遊んだ時以来だ。
俺は昔を懐かしみながら、ルンルンとスキップして公園に近づいた。
「…あれ、」
狭い公園にはあまり遊具は置いておらず、ブランコと滑り台、ジャングルジムの3種しかなく、ベンチや自販機のラインナップが充実している。
数多あるベンチの一つで、見覚えのある茶金の髪をした大人が寂しげに項垂れていた。
「…担任?」
思わず声を掛けると、担任は勢い良く顔を上げ、こちらを凝視した。
「は?…田中?」
「お、おはよ」
「ああ…おはよう」
沈黙。
担任は俺を凝視しながら、ボソリと言った。
「なんで制服着てんだ…?」
「え…だって学校…土曜日!!!」
そこで俺は地面に膝をついた。
オオオオオオイ!!!!
そうだよ!今日土曜日!!!
「オオオ…」
「しかもこんな朝早くから何してんだ」
「いや、早く起きすぎたので散歩がてら登校しようと思って…」
「プッ」
「笑い事じゃねぇですよ!!!というか先生は何やってたんですか!!」
「…あー、俺な。まあ、気分転換だよ」
「こんな朝っぱらから?」
「そーだよ」
俺は立ってるのも何だな、と思い担任の隣に座る。
「うわっ、酒くさ!先生お酒飲んでるでしょ?」
「ア"?なんだよ。お前から寄ってきておいてそりゃないだろ」
「まあそれもそうか。」
担任は昨日夜から朝まで飲んでいたのか、昨日のスーツのまま、気怠げにタバコを吸っていた。
ちょっと酔いが残っているようで、どこかポワポワしている。
寝不足の秀先輩と似た感じだな。
「…帰んないんですか?」
「まあな」
「追い出されたんですか?」
「ンなわけないだろ。俺は一人暮らしだ。」
「じゃあ本当に気分転換なんですね。」
なんか通りかかった時所在なさげだったから、帰れない事情でもあるのかと思ったわ。
「…俺の家はオートロックなんだよ」
「へ?あ、はい」
「鍵家に忘れた」
ズゴォオオオオオ!
俺は日本伝統のズッコケをかました。
「いや帰れないんじゃん!」
「だぁから鍵屋か大家に連絡つくまでここで待ってんだよ。」
「納得ゥ~!でもまだ時間だいぶあるよね?」
「まぁ、あと3時間はかかるな。」
「それまでそんな酒の匂い漂わせてるの?!」
「お前本当いい度胸してんな!」
足を爪先で強めに突かれる。
全然痛くはないので、担任が疲れていることは伝わった。
「あ、先生。良い提案があるんですけど。」
「…ん?なんだよ。」
「俺の家、来ませんか?」
担任はゆっくりと俺の方に顔を向けた。
ありありと驚愕の表情が浮かんでおり、それを証明するかのようにタバコをポロリと落とした。
「は?どうしてそうなる。」
「だって先生、このままじゃ風邪ひいちゃいますし、あと数時間酒の匂いを振りまくことになりますよ!
俺も一人暮らしなので、気にせずお風呂使ってください。」
「…いや生徒の家に上がるのは…」
「え?ダメなんですか?」
「ダメとは言わないが…」
先生はタバコの火を足で消し、考え込んでいるようだった。
「さ!考えてないで行きますよ!!!俺、制服着替えたいし。」
「それはお前の勝手だろうが。」
「いーからいーから!」
俺は強引に先生の腕を引き、家に誘導して行った。
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