31 / 145
おまじない
しおりを挟む「では、本日の部活動は終了だ。解散。」
部長の掛け声で、部員たちは各々帰宅の準備を始める。
個々人で自主的にやるタイプの部活らしい。
何人かのモブ先輩に声をかけられたりしながら、俺は教室から人が引き払うのを待った。
俺たち2人だけになると、どこか気まずそうにこちらを見る先輩と視線が合う。
「あー…お前も帰っていいんだぞ。」
「遠慮しますよ。きちんと約束はきちんと守ってもらいますから。」
俺はいつになく強気な姿勢で説得を試みる。
そもそも俺秀先輩より年上だからね!!!!
お兄さん風吹かせちゃおう。
「どこか仮眠を取れるところって無いんですか?」
「はぁ…美術室にはない。
俺の知る中で使い勝手がいいのは生徒会室だな。簡易ベッドがいくつかある。」
「じゃ、そこにしましょ!」
「俺に拒否権は無いのか」
「なんですか先輩!
さっき約束したのに、俺への扱いがあんまりだ!!!」
父さんにだってこんな事されなかったのに!
と少し古めのギャグでバタバタと地団駄を踏み不平不満を全身で表現すると、先輩が諦めたように息を吐く。
「案内する。」
やはり顔が青白く、よく見たら濃い隈も出来ている。
足取りがどことなく重い先輩の後ろをヒョコヒョコとついて行くと重そうな扉の前で止まった。
「ここだ。」
先輩は扉に手をつくも、力が入り切らず押せどもピクリともしない。
え、この人こんなになってたんだ…
(この頑固な真面目さが、少しでも嘉賀先輩に分け与えられていればなあ~)
とめちゃくちゃ失礼な妄想をしながら、
先輩の手助けをしつつ、生徒会のベッドまで辿り着いた。
「じゃ、寝て下さい。最低1時間は寝ないと返しません。」
「長くないか…」
「そんなんだから寝不足でフラつくんですよ!」
「ウッ…」
先輩はもう何も言うまいと、布団に潜り込んだ。
俺はベットの隣に勝手に椅子を持って来て、
漫画を読み始める。
…が、2ページ程読んだところで、ベッドから注がれる視線に気がついた。
「…どうしたんすか」
「いや、眠くならないんだ。」
「え?そんなフラフラなのに?」
先輩はまた図星を突かれたように顔を顰めると、諦めたように会話を始める。
「…俺は寝付きが悪くてな」
「寝付きの悪さレベルめちゃ高いですね。
普通その状態ならすぐ寝れるのになあ…」
どうすりゃいいかなあ~
あ、昔やってもらったアレ、試してみるか。
母親にやられた"おまじない"。
「先輩、目を閉じて下さい。」
秀先輩は疑う事もなく、目蓋を閉じた。
(…掛かったなッ!!!)
俺は先輩の頭に手をやり、数度頭を撫でた。
「おやすみなさい」
息を飲むような音が聞こえた気がしたが、
すかさずアイマスクのように、先輩の目に手で蓋をした。
数回頭を撫でていると、そのうち寝息が聞こえ始める。
その瞬間、俺の頭に勝鬨が鳴り響いた。
ミッションコンプリート!!!!
71
お気に入りに追加
5,135
あなたにおすすめの小説
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
モブらしいので目立たないよう逃げ続けます
餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。
まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。
モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。
「アルウィン、君が好きだ」
「え、お断りします」
「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」
目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。
ざまぁ要素あるかも………しれませんね
俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
風紀“副”委員長はギリギリモブです
柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。
俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。
そう、“副”だ。あくまでも“副”。
だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに!
BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる