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おまじない

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「では、本日の部活動は終了だ。解散。」


部長の掛け声で、部員たちは各々帰宅の準備を始める。

個々人で自主的にやるタイプの部活らしい。

何人かのモブ先輩に声をかけられたりしながら、俺は教室から人が引き払うのを待った。

俺たち2人だけになると、どこか気まずそうにこちらを見る先輩と視線が合う。


「あー…お前も帰っていいんだぞ。」


「遠慮しますよ。きちんと約束はきちんと守ってもらいますから。」


俺はいつになく強気な姿勢で説得を試みる。

そもそも俺秀先輩より年上だからね!!!!
お兄さん風吹かせちゃおう。


「どこか仮眠を取れるところって無いんですか?」


「はぁ…美術室にはない。

俺の知る中で使い勝手がいいのは生徒会室だな。簡易ベッドがいくつかある。」


「じゃ、そこにしましょ!」


「俺に拒否権は無いのか」


「なんですか先輩!
さっき約束したのに、俺への扱いがあんまりだ!!!」


父さんにだってこんな事されなかったのに!

と少し古めのギャグでバタバタと地団駄を踏み不平不満を全身で表現すると、先輩が諦めたように息を吐く。


「案内する。」


やはり顔が青白く、よく見たら濃い隈も出来ている。
足取りがどことなく重い先輩の後ろをヒョコヒョコとついて行くと重そうな扉の前で止まった。


「ここだ。」


先輩は扉に手をつくも、力が入り切らず押せどもピクリともしない。

え、この人こんなになってたんだ…


(この頑固な真面目さが、少しでも嘉賀先輩に分け与えられていればなあ~)


とめちゃくちゃ失礼な妄想をしながら、
先輩の手助けをしつつ、生徒会のベッドまで辿り着いた。


「じゃ、寝て下さい。最低1時間は寝ないと返しません。」


「長くないか…」


「そんなんだから寝不足でフラつくんですよ!」


「ウッ…」


先輩はもう何も言うまいと、布団に潜り込んだ。

俺はベットの隣に勝手に椅子を持って来て、
漫画を読み始める。
…が、2ページ程読んだところで、ベッドから注がれる視線に気がついた。


「…どうしたんすか」


「いや、眠くならないんだ。」


「え?そんなフラフラなのに?」

先輩はまた図星を突かれたように顔を顰めると、諦めたように会話を始める。


「…俺は寝付きが悪くてな」


「寝付きの悪さレベルめちゃ高いですね。
普通その状態ならすぐ寝れるのになあ…」


どうすりゃいいかなあ~
あ、昔やってもらったアレ、試してみるか。

母親にやられた"おまじない"。


「先輩、目を閉じて下さい。」


秀先輩は疑う事もなく、目蓋を閉じた。


(…掛かったなッ!!!)


俺は先輩の頭に手をやり、数度頭を撫でた。


「おやすみなさい」


息を飲むような音が聞こえた気がしたが、
すかさずアイマスクのように、先輩の目に手で蓋をした。

数回頭を撫でていると、そのうち寝息が聞こえ始める。

その瞬間、俺の頭に勝鬨が鳴り響いた。


ミッションコンプリート!!!!
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