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部活動見学はホラーから

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最後の授業が終わると、すぐに里田が駆け寄って来た。


「田中ぁ~!見学、行こ?」


コテン、と首を傾げながらこちらを見る。
あざとっ!!!

耳の後ろほどまであるプラチナブロンドが、サラリと揺れた。


「おう!早速いこーぜ!!!」


「くっ…田中、俺今日生中継で番宣するんだ。見てくれよ?」


「えっ?!マジ?!凄過ぎるんだけど…

絶対見る。何時から?」


「19:30から」


「よし里田!!!19:00までに回ろう!!」


「えっ?!田中ッ待って!!…主人お前…」


俺はダッシュで廊下に出たため、その後の2人がどんな会話をしてたかなんて知る由もなかった。


「は~追いついた!」


「さ、さとだ…ハァッ…お前めちゃ足速いな…!」


「え、そうかな?」


大分リードしていた筈だが、あっという間に追いつかれた。

俺も結構な速度で早歩きしてたんだけどな…

これは多分コンパスの差だ。
悔しいから足の長さとは言わないんだからな!!!


「まずどこ行く?」


「そうだな~気になるのは、映画部と美術部かなぁ…」


「お~おもっきし文系だね。」


「なんか面白そうじゃない?!」


「うんうん。そうだね~」


里田は子供に言い聞かせるような口調だ。
こっちはおっさんなんだぞ?!
ナメてもらっちゃ困るなぁ!!!!

と、1人敵対意識を燃やしていた。



映画部は新校舎、美術部は旧校舎が活動場所らしい。

この学校には珍しく、防音室が二つある。
片方は音楽部、もう片方は映画部が使っているそうだ。

一先ず嘉賀先輩を回避するため、新校舎の映画部から向かう。


「お、ここかぁ!」


「中々でかいね。」


「あれ?もしかして部活見学かな?」


声を掛けられて見てみると、絵に描いたようなモブ顔の人がいた。
勿論顔は認識しづらい。


「ちょうど今から短編映画の上映会をやるんだ。見ていって!」


こんなに良い人なのに顔が認識されないなんて、めちゃくちゃ世知辛いな。


「ありがとうございます!ホラ里田!行くぞ。」


「え?今誰と喋ってたの??」


イケメンには面影どころか、存在さえ見えてないのかよ…ホラー過ぎるだろ。


「何でもない。どこ座る?」


防音室には、所狭しと椅子が並べられていた。
割としっかりしたチェアで、これなら長時間座っても腰が痛くならなそう。


「どこでも良いけど…田中の隣がいい。」


「えっ…じ、じゃあ、あそこ。」


今の聞きましたか全国の奥さん!!!!!!!!!
一言で全国のプレイヤーを落とせる口説き文句ですよ!!!


ドギマギしながら席に着くと、ちょうど映画が始まった。

途端に室内に響く断末魔。

思わず小声で囁く。


「ま、まさかこれ…ホラー?!」


「だね…あれ?田中ホラー嫌いなの?」


「ぜっ、ずぅぇーーーーぇんぜん!むしろすすす好きだけどぉ?!」


小声ながらも叫ぶと言う高等テクニックを披露するも、里田に笑われてしまう。


「嘘下手。…じゃあ、俺が手を繋いでてあげるね。」


と言うと、俺の腕を絡め取り、あろう事か恋人つなぎを始めた。


「人と触れ合う面積が多いほうが、安心するでしょ?」


ニコリと笑いかけてくるその笑顔は、
邪な心のない、清らかなものだった。
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