BLゲームのモブ(俺)は誰にも見つからないはずだった

はちのす

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どこからがヤンデレ?

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放課後。


「あ~疲れた…久しぶりの授業だからかねぇ~」


「なに年寄りみたいな事言ってるんだ。」


「おっふ…」


(そうだった。3秒に1回くらい忘れるけど、俺高校生の設定なんだった…)



「オイ田中ぁー!お前入学式寝てたからホームルーム後、雑用だからな!」


「ェェェそりゃないよ担任!」


「なんだその呼び方!ナメてんのか!」


この担任、嘉賀かが先輩よりよほどヤンキーなんだが…

ちなみに担任はすめらぎという苗字らしい。
このゲーム1キラキラしてないか?


「…ハァ…そういうことだから、一緒に帰れないな…」


「田中も大変だな。元気出せよ。」


「うう…里田でもいいじゃん…」


「え?俺、居眠り見つかってないし。」


「イケメンって生きる上での要領がいいなぁ!!!」


(くそぅ、こんなことなら俺もイケメンに生まれたかった…)



そんなこんなで2人と別れた俺は、日がちょっと落ち掛けるまでコキ使われた。


「これに懲りたらもう寝るんじゃねぇぞ」


「懲りているからと言って寝ないとは限りまs…約束します!!!」


担任の睨みがクリーンヒットした俺は、
MPをゴリゴリに削られながら脱走した。

(うう、イケメン恨むべし…)




雑用ということで、余計な荷物は教室に置いたままにしていた。
面倒ではあるが、家の鍵も入っているから教室まで取りに戻らねばならなかった。

…のだが、俺は今、教室の扉の前で立ち尽くしている。



「(あれは…黒木!)」


何故かヤンデレイケメンが教室に残っていたのだ。

(怖っ!何で夕暮れ時の教室で1人座ってるんだよ…)

でも入らないと俺の荷物は一向に手に入らない。


ゴクリ…


「(入るしか、ないか…!)し、失礼しまぁ~す…」


恐る恐る入室すると、虚な目と視線があった。


「…………」



「…………」



スゥ~…

数秒見つめ合い、そっと目を離した。


(いやなんか…目が怖いんだもん)


目があった瞬間だけ、周りの音が無くなったかのような錯覚に陥った。
それだけ、目に暗いものしか写ってなかったんだ。

ヤンデレって言うか、あれ病んでるぞ…


俺は机まで辿り着き、手早く荷物を纏めた。

さぁて帰ろう!と、振り向いたら


「ひぇっ」


「田中君…?」


ヤンデル君が真後ろに音もなく立っていたのだ。
あまりの事に、俺は腰を抜かしかけたが、寸での所で持ち堪える。


「え、そうだけど…。黒木君だよね?」


「…っ!俺の名前…」


「(あ、まずったか?)アハハ!黒木って名前、カッコいいなと思ってさ~俺なんか田中だし!!」


「そう…」


(反応薄っ!!俺だけ1人ペラペラ喋ってて馬鹿みたいじゃね?!)


「これ、さっき拾った…」


と、ヤンデル君が手渡してきたものは


「え?俺の学生証?」


「うん。…旧校舎の購買近くで拾った。」


ま、まさかヤンデル君…これを渡すためだけに俺を待ってたのか…?


「え、ありがとう…!」


ちょっと、何コレ感動なんですけど…!
カラスが木の実を分け与えてくれた時位に感動している俺がいる!!

分かりづらい?すまんすまん。


「じゃあ俺は…帰る」


「いやマジでありがとうな…!今度なんか昼メシ奢るわ!」


「……」


最後にチラリとこちらを一瞥すると、
やはり音もなく帰っていった。


「ええ奴やんけ、、、」

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