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屋上ベタ展開

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「やっきそっばパァン~」


人生初、購買でやきそばパンを買い、屋上で食べるの巻!

ドラマとかで見たやつや…ゴクリ…

俺は購買で最後の一つになっていたやきそばパンを勝ち取り、意気揚々と屋上に向かっていた。

2人に自慢してやろう。
俺と競ったモブは儚く散っていったとな…


「ラス1のやきそばパンを手に入れた勇者のおな~りぃ~~!!!」


半ば叫びながら勢いよくドアを開けると、
そこはもぬけの殻だった。


「あれぇ、誰もおらん。」


「いるぞ、後ろに。」


「はぇ?」


突然、頭上から声が降ってきた。


「お前活きがいいな…力試しにでも来たか?」


チカラダメシ…?
何だこの声、RPGのナレーション枠かなんかなのか。


「ちょっと何言ってるか…ひぃっ!」


分かりません。と言おうとした瞬間、声をかけて来た男は貯水槽のあたりから飛び降りてきた。


(あっ!筋肉競う系の番組に出られる人だ~!!)


現実逃避気味に、脳内でハイテンションなツッコミを繰り出す。

第一印象は野生動物っぽい男。
制服もラフに着崩し、チラリと見える鎖骨と胸筋が実戦により鍛え上げられているぞ、とこちらに訴えかけてくる。

190cmはあるだろう鍛え抜かれたその身体に、さらに優位に立つ顔面がくっついていた。

彫りの深い顔立ちには、薄い古傷があり、脱色を重ねた銀の髪と相まって凄みがある。

主要キャラの1人だ。


(屋上と言ったらヤンキー…!定番中の定番!)


「あのぅ、すみません。ここに2人組が来ませんでした?」


「この状況で俺に質問か?

…まあいい。来てねぇよ、誰もな。」


「ええ、おかしいですね。ここでメシ食う約束なんだけどなあ!!ありがとうございます。

じゃ、俺はこれで!」


聞きたいことを聞けたのでそそくさと逃げようとすると、ヤンキーに道を阻まれる。


「おいテメェ、俺の昼寝を邪魔したんだ…殴り合う覚悟は出来ているよな?」


そうなるんか~!!
この人、こんなもやしっ子のどこを見て殴り合いに来たと思ったんだよ!!

エンガチョ!!!


「出来てないので見逃して下さい!!」


「無理だ。」


「なんでぇ!!」


「俺は一度起こされたら誰かを殴るまで寝付けない。」


なんだコイツ、ヤンキーとはまたちょっと違う人種じゃないか?!


「じゃあ寝ないでください!」


「お前、無茶苦茶だな。」


そのセリフ、あんたにだけは言われたくないな!!

ヤンキーは何かに後押しされれば、俺をボコリそうなくらい尖った雰囲気を醸し出していた。

斯なる上は…


「これ献上しますので、やっぱり寝てください!」


俺は全身全霊を込めてやきそばパンを差し出した。

(怒りをお鎮めくだされ~!)


「…は、何だコレ、パン?」


「これ食べて寝てください!」


「意味わからねえ…はぁ、なんかやる気無くした。もういいよ。」


ヤンキーは物凄く深い溜息を吐き、
俺の手からやきそばパンを取った。

(あああ…マイフレンドやきそばパン…)

ヤンキーは器用にそのパンを半分にすると、俺にもう半分を寄越してきた。

え、半分くれんの?


「ここに来るやつは大抵俺に喧嘩を売りに来んだよ。お前、喧嘩する気がないなら最初から来るな。」


もぐもぐ

いや、ここお前の私有地じゃねえだろうが!!!

と言いたい気持ちを抑え、勢い余って渡されたもう半分のやきそばパンを貪る。


「ふぉーでふか。」


もぐもぐ、もぐもぐ。
無言ながら、ヤンキーともやしがやきそばパンを半分こする図が爆誕してしまった。

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