BLゲームのモブ(俺)は誰にも見つからないはずだった

俺らマブダチ！！！

そんなこんなで目立つか目立たないかの瀬戸際でダンスしていた俺だが、今のところ担任からの小言だけで済んでいるから奇跡だ。

そこかしこからの視線は気にしない気にしない！

でも、隣からのアツゥイ視線には応えなければなりません。
何故なら、元の世界に帰るために必須だからです。

イケメン怖いけど…やるしかないよね。
決意を固めていると、なんと向こうから話しかけてきたのだ。



「なぁ、田中」


「はぅっ！！あ、あ、田中です…」


これで確定だ。俺には何故かモブフィルターが作動してない。


「ふふ、なんだそれ。俺、主人って言うんだけど。」


「あ、知ってます。」


自己紹介済んでるからね！！！


「さっきの"そのまんまかーーーーい！"って、どう言う意味？」


「あっれぇ、そんなこと言ったっけなぁ～～～？

あ、そうだそうだ。凄くイケメンだから、なんか主人公っぽいなあと思ってたんだよね！」


我ながら取ってつけた感が凄い


「あぁ、ありがとう、嬉しいよ。…で？」


「で？！？！…で、と言われても…」


「いや、それだけであんなツッコミなんて入れないだろ。なんかもっとあるのかなと思ってな。」


コイツ…鋭すぎる…もしや名探偵か？


「滅相もございません！揺すっても叩いても、なにも出ないよ！！」


手をブンブンと前で振りながら訂正すると、主人はまた笑みを深めた。


「ふふ、そっか。面白いな、田中。」


「え、もしかして俺らマブ？？」


「は、なんでそうなるんだ？」


「いや、俺って他人ORマブみたいなところあるからさ！」


「知らん」


「だ、だよね～！」


もはやクリアに必須な要件を満たしたのかと思ってドキドキしちゃった！！もうっ俺のお茶目さん！


でも主人公とは知り合いになれた。

元の世界がグッと近づいた気がするぞぉ！
帰るまでにレポート20枚分の知識貯めて帰らないとな！


「ハハ、1人百面相して本当に面白いな。
マブダチではないけど、友達だ。

これからよろしくな。」


てか、マブダチっていつの言葉だよ。

と言いながら笑う主人。

(ああ、本当にイケメンだな。)

クールなんだけど、とっつきやすい。

そういえば容姿をよく見てなかったな。

ちょっと青っぽい黒髪を短く切り揃えて、黒目がきらりと光る。
日本人らしいといえば、らしいかもしれない。
捲った制服から露出する腕は、血管が浮かぶほど鍛えられていた。

イメージで言うと、朝ドラの主人公だ。

どこまで行っても主人公なこの人は、一頻り笑うと、またこちらを向き…微笑んだ。