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目が覚めるとそこは〜ユートピア〜

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「スゴゴゴゴ…………ッハ!」


「危うく深く寝入るところだった!!!
…あれ、ココどこ…?」


辺りを見渡すと、俺は全く知らない部屋に寝転がっていた。

生活感あふれていたはずの部屋の中は、グレーの家具で統一されており、いつもとは違ってなんか良い香りもする。


(え、どこなのここ。)


手を動かそうとしたら、手元に落ちているカードが指に当たった。


「学生証…?え、これ俺の写真?!」


何を隠そう、実は俺は大層立派なニートだ。

大学なんて4年も前に卒業している。
学生証は卒業時に回収されているから、とうの昔にシュレッダーに掛けられただろう。


「しかもこの学生証、高校のやつっぽいぞ。

名前は…『勇都陽亜』学園…当て字もええ加減にせいや!!」


(ん?勇都陽亜…ゆうとひあ…ユートピア…!!!)


キラキラ度合いも甚だしいこの学園名を読み上げていると、どこかで似た響きを聞いたなと思い出す。

脳裏に過ったのは、つい先ほどまで俺が手に取っていたはずのゲームタイトルの名前。

もしやこれ、俺…


「あのゲームの世界に入ってる…?」


*************


それからの俺の立ち直りは人知を超えていた。

そう、何分ニートだった俺に失う物はなかったし、失われた学生生活をもう一度送ってみたいと言う期待もあった。

悲しいかな、光り輝くイケメン面した幼馴染(腐れ縁)からイジメのせいで、高校・大学生活は思い出したくもない悲惨な生活を送ったんだ。

今ぐらい現実を忘れて、楽しく過ごしてもバチは当たらんよな!


「とりあえず登校してみるか。

えっと、今日は4月1日か…ハッ、入学式だ!!!」


このゲームでは一人暮らしの設定らしい俺は、脱非モテ!と念じつつ、部屋にも芳しい香りを漂わせている香水を体に一振りし家を飛び出した。


「無いかと思った学校生活、待ってろアオハルぅうう!!」


と、目的地の校門に足を踏み入れた瞬間、大切なことを思い出した。


「オオオオオ…ココ…ダンシコウネ…」


辺り一面、男、男、男…

ちなみにゲームの補正なのか、モブらしき人間の顔が認識しにくい。

このゲーム、どんだけシビアなの。


「とりあえず、教室探すか…」


あ、ちなみに家出る前にちゃんとチェックしたんだけど、俺の顔は俺のままだったよ…。

ご都合主義な顔面補正なんてなかった。
一度でいいから、イケ面で生活してみたかった…。


「このゲームにもきちんとした主人公はいるし…ココでも存在感なしのモブ生活かぁ~」


まあでも、イケメンとアレやコレやなるよりはマシなんかなぁ。

というか、このゲーム、どんな条件でクリアーになるんだ…?


「そっか、とりあえず主人公!主人公とダチになって探れば良いのか!」


そんで俺が誘導しつつ、主人公が誰かとくっ付ければクリアーになるって寸法よ!!
やはり俺は大天才だ。


そうと決まれば、主人公に猛アタックだ!!
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