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ことの始まり
しおりを挟む「教授~?」
俺は課題提出のため、担当教授を探していた。
いくつもの教室を当たってるんだけど、全然見つからない。
此処で最後、見つからなかったら明日提出にしちゃおうかな…と覗き込んだのは教授のラボ。
「ここにもいない…はぁ、折角提出日前に仕上げられたのに。」
そこで、ふと応接用のテーブルにケバケバしい色の瓶が置いてあることに気づいた。
「うわっ、この虹色…どんな着色料混ぜたら精製できるんだよ。」
液体は虹色に輝いており、普通の感覚ではこれが異常な液体であることが判断できる。
ラベルには"Drink me!"とやや主張の強い字体で書かれていた。
「なんか怖いから戻しておこ…」
"ガチャ…"
その時、突然ラボのドアが開いた。
俺は音に驚いて、手の中の瓶を滑らせ…
「!!!」
"パリンッ!!"
「ぁぁあああ…!!!」
「…あ?桜井か、どうした。」
「き、教授…どうしよ、割っちゃった…!」
俺はテーブルに降り注いだ虹色の液体を見て絶望する。
(人の部屋に勝手に上がり込んだ挙句、研究成果らしきものを割ってしまった…!)
本来なら賠償ものの事案だが、教授はチラリと割れた瓶を見て気にした風もなく冷蔵庫へ向かった。
「ああアレね…まぁ、使い所なかったしいい。
それよりも、テーブルの上の紅茶は無事か?そっちの方が手間かかったんだよな。」
そう言われて、俺が瓶を落としたすぐ近くに紅茶があることに気がついた。
紅茶の色は変わらずに澄んだ赤茶色だ。
スンッと嗅いでみるが、匂いも問題ない。
「あ!無事ですよ!!」
「おー、じゃ、それ飲んでいいぞ。良い茶葉だからな。」
「え、いいんですか?!」
「俺は出かけてる間に飲みたいもん変わった。」
(自由だなこの人…)
教授が冷蔵庫を漁っている間、俺は応接テーブルを綺麗にして、紅茶をいただくことにした。
"ゴクッ…"
「ほええ…高い紅茶ってあんまり飲んだことないんですけど、凄く良い香りがするんですね。」
「そうだろ?」
向かい合わせに座った教授がにこやかにマグカップを傾ける。
ちらりと見えたマグカップには、白い飲み物が入っていた。
(あ、牛乳飲んでるんだ。)
「なんて言うんですかね、イチゴみたいな甘酸っぱい香り…」
「ブフォォッ!!!」
そこまで俺が話した瞬間、先生が口から牛乳を吹いた。
「おわあああ!!!何するんですか!」
俺は顔面でその牛乳を受け止めてしまい、先生に猛烈に抗議する。
「す、すまん…いや、それ、イチゴの香りなんてしないストレートティーなんだ。」
「…へ?」
「俺はイチゴの香りが苦手だからな…。
この部屋にあったイチゴの香りのものなんて、さっきお前が机にぶちまけた "特効魅惑薬" しかない。」
俺が誤飲しない様にイチゴの香りをつけた、と恐々としながら語る先生。
「ちょ、ちょっと待ってください。"特効魅惑薬"…?なんですかそれ。」
「友人に頼まれて作ったんだが、どうも効果が上がりすぎて渡すのを断念した代物だ。
…簡潔に言うと"フェロモン増強剤"だよ。」
「…?!?!?!」
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