裏社会に巻き込まれたらセックスを強要された件

こうたろ

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3章

悪しき存在

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「で?・・・」



『で?じゃ無いわよ!あんたが伊集院さんにお願いしないからこっちは大変なのよ!少しは親孝行しなさい!』



受話器から跳ぶ怒号が耳に鳴り響くので少し離す。

それでも母の怒りの声はしっかり届いた。

受話器を顔の正面に持ってきて耳に当てないようにする。



「だから、で?・・・なんで俺がヤクザを潰すから手を貸してくださいなんてお願いしなきゃならないんだよ。自分たちで蒔いた種なんだから自分たちで言えよ」



『あんたは私たちの子供でしょ!言うこと聞きなさい!』



どこに子供を売る親が・・・いや居るな、つい最近の人身売買で大量に居たな。

夕飯の支度をしているモニカがカウンターからこちらを見る。

俺はやれやれと首をかしげるとモニカも苦笑する。



両親が広瀬組というヤクザに不動産の譲渡を要求し断られたので伊集院家が動くと思ったけど一行に動かないので俺に連絡をしてきた。

受話器をモニカから受け取り母の第一声『どういうことなのよ!』から既に2時間が経過していた。

女性は長電話が好きだとよく聞くがこれはそういったものには当てはまらないだろう。

とにかく捲くし立てる母に状況が分からず事情を説明してもらい頭の中で整理していたが伊集院家の名前が出た途端また怒鳴りだしてもう一度制する羽目になった。



途中千歳と千春は居るのかを聞いたがそれ処ではないとこちらの話を聞こうとしない。

我ながら駄目な親だ。

仕方が無いので電話の途中でリーナたちを2人が通う中学校へ向かわせた。

何事も無ければ良いが・・・



電話の内容から伊集院家が後ろ盾になっていると思い込んでいるみたいだけど何でヤクザなんかに、強気すぎるだろ。



「何度も言うけど、伊集院家がこんなことで動くはず無いから、守ってくれるなんて幻想捨てて素直に謝りに行けよ」



『ふざけるんじゃないわよ!!何で私が謝らないといけないの!さっさと潰してきなさい!』



あ~、会話が成立しない。

仕方ない、言うだけ言ってあげるか・・・無理だと思うけど。



「はいはい、分かった分かった」



『さっさとしなさいよ!』



一度電話を切って伊集院家本邸にかける。

数コール後メイド、では無く男性の声が聞こえた。



『はい、伊集院です』



メイドは悠里の趣味なので本邸には普通に男性も居る。

俺を本邸に連れて行ったのも男性の黒服さんだったしあいつが異常性癖なだけで伊集院家は普通の人の家系だ。



「章人です。お久しぶりです」



『ああ、章人様、この度はいかがいたしましたか?』



最初に会ったときも親切だったが俺が悠里の関係者となってからはこちらにも敬意というかそういった配慮をしてくれている。

やってることはアレな内容もあるが上流階級に付き従っている風格がある。



「私事で申し訳ないんですが広瀬組ってヤクザ知ってます?」



『広瀬組ですか?ええ、存じております。比較的目立つ動きをしないところですね。何かありましたか?』



「本当に申し訳ないんですが、俺の親が伊集院家の名前を使って恐喝しているようで・・・出来れば口添えして欲しいなぁと・・・」



電話越しでもへっぴり腰で離してしまう日本人の癖だ。

モニカがカウンターに身を乗り出してこちらを見てニコニコ微笑んでいる。

・・・絶対楽しんでる・・・



『一度御当主様に話を通してきます。少々お待ちくださいこちらからかけ直します』



よろしくお願いして電話を切る。

ああ、緊張する。



「章人様?お疲れですか?」



オークションで購入した少女の中で唯一悠里からこちらに移された新人メイド見習い白波 紬が心配そうにこちらを見上げていた。

彼女はモニカに料理を教わっていたが当のモニカがこちらを見ている。

スパイシーなカレーの香りが鼻をつく、どうやら夕飯の支度はほとんど出来ているようだ。



「ああ、ちょっと疲れたかな」



「じゃあ私お疲れ取ります。マッサージが良いですか?それともえ、えっちですか?・・・」



ソファにどかっと身体を投げる俺の元へ来る。

紬は性的なことを考えたのか頬を赤くしてもじもじと少し俯いた。

その顔は悲観的ではなくどこか期待しているような緩んだ表情だった。

立派に悠里好みに成長している紬に対し俺は肉体的よりも精神的な癒しを欲していた。

ちょいちょいと手招きする。

えっちをされると思ったのかより一掃赤くなる紬を抱き寄せて膝の上に座らせる。



「お、お願いしま・・・え?」



後ろから弄ばれると思っていたのだろうぬいぐるみのように抱きしめられ頭を撫でられている紬は困惑している。

可愛い~。癒される~。



陽炎さんから返答の電話がくるまでの間紬可愛さを堪能する。







リーナと、楓、小夜、他数名の上山マンションで働くメイドたちが広瀬組の屋敷を制圧して上山 千歳と千春を回収してから数十分が経過した。

媚薬の効果が切れてきて正気に戻った千歳と千春は絶対に乗る機会の無いような後部座席対面式の高級車でさっきまでの出来事に後悔の念を感じていた。



(私・・・どうしてあんなことを・・・最悪・・・何かの夢であって欲しい)



(まだ乳首がぴりぴりする・・・男の人なんて嫌!・・・お兄ちゃん・・・)



2人の対面にはリーナが座り運転は楓、助手席に小夜が座っている。

彼女たちは章人の命で2人の安全を確認するために所属する中学校へ向かった。

しかし、双子は既に帰宅しており学校から家までの道を捜索したが発見できずようやく広瀬組が動いていることを察した。

もちろん行動は迅速に行った。

普通なら誘拐前に回収することが出来た、いやそもそも誘拐される事態にすらならなかった。

それほどまでに両親の怠慢は尾を引いていた。

その両親はその時間、自らの身を守るために、先ず伊集院家に連絡する・・・こともせず章人に怒鳴りつけていた。



メイドたちが広瀬組に着いたとき組からの迎撃に遭ったが刀を持とうが銃を持とうが常に格闘技の訓練をしているメイドが10人ほど、簡単には行かなくとも直ぐに屋敷中は制圧されてほぼ意識不明者の山が出来上がった。

特にリーナはすごかった。

初めてそれらしい命令を章人から頂いたのでかなり張り切り、振り下ろされる切っ先を白刃取りで掴み、数発の銃弾は反射で回避した。

仕える者としての嗜好のメイド服が銃弾による穴が空くと鬼神の如く敵に蹴りを打ち込み3人を巻き込んで壁に叩きつけ意識を刈った。



一番やばいのはメイドが全員素手だったことだ。

もし章人がこの場を目撃していたらメイドへのSMプレイなどする気がなくなるだろう。

・・・反撃が怖くて・・・



「あの、私たちはどこへ・・・」



「あなたたちのお兄様のところです」



章人の存在に2人はあからさまに反応する。

千歳は苦虫を潰したように千春は最後の希望にすがるように正反対の反応だった。



車は上山マンションの地下駐車場に止まり千歳と千春はリーナに連れ添って降りる。

他にも同じような車が2台止まり、メイドたちが出てきてそれぞれ部屋に戻っていく。

彼女たちは返り血や服が破けたりなどで着替えるために戻った。

着替え後は再び常務に戻る。

リーナたちもそれぞれの部屋に戻る。

千歳と千春はリーナに連れて歩き、風呂と着替えを頂く。

それなりに気持ちが落ち着いてきた2人は改めてマンション内を見渡す。

まるでホテルのような絨毯の廊下に大きな吹き抜け岩盤の大浴槽、こんな豪華なところに章人が住んでいるとは到底思えなかった。



リーナがエレベーターを操作して29階に到着する。

扉が開いて直ぐ目の前、廊下はあるが横には続いておらずちょっとした広間の先に扉があった。

リーナがチャイムを鳴らすと扉が開き、中から同じメイド服を着た小柄な少女が顔を出した。



「リーナさん。章人様がお待ちしております」



「ええ、紬はちゃんとお料理出来たかしら?」



「はい、モニカさんに教えてもらってカレーを作りました。そちらの方々もどうぞお入りください」



双子よりも圧倒的に年下だが落ち着いた接客はまるで目上のような感じがした。

部屋の中の廊下を進み突き当たりの扉を開けるとソファに座りゴールデンタイムのアニメを視聴している章人が眼に入った。







「お兄ちゃん!」



こちらを見るなり飛び出す千春を受け止める。

勢いを殺しきれずにソファに転がる。

千春は俺に強くしがみつき事の深刻さを理解する。



「お帰りリーナ。内容は小夜から電話で聞いてる。お疲れ様、それと有り難う」



「そんな!お礼なんて。仕える者として主の役に立てたことが何よりの至福です」



恭しく頭を下げるリーナ。

千春は俺の腕の中で泣きじゃくりその頭をそっと撫でる。



「ふざけないで」



しかし、一件落着とはならない。

静かな怒りを灯している千歳は俺を睨みつける。



「全部兄さんのせいなんだからね。何をしたかは知らないけどこの人たちに関わったおかげで母さんたちがヤクザにかかわってしまったんだよ。助かったからよかったとでも思ってるの?」



全ての原因が俺だと思い込んでいる千歳の非難は止まらない。



「勉強も出来ない、運動も出来ない、たいした特技も無い、容姿も優れていなければ友達も居なくていっつも一人で孤立して、それが格好良いとでも思ってるの?母さんも父さんも兄さんのことで頭を悩ましてそれでいて本人は我関せず・・・もう私たちに・・・」



「止めて!!」



巻く立てる千歳を止めたのは他でもない双子の千春だった。

初めて聞くような千春の大声に俺は唖然として千歳も押し黙る。



「お兄ちゃんは悪くない!お母さんたちがヤクザに勝手に手を出したのが原因なんでしょ!それをお兄ちゃんが嫌いだからって押し付けて・・・お兄ちゃんはあんなことしない!このメイドさんたちで私たちを助けてくれたんだよ!頭良いのにそんなことも理解できないの!?いつもいつもお母さんたちの顔色疑って、それなら今すぐ家に帰れば良いじゃない!」



俺にしがみ付きながら顔だけ千歳の方を向いて激昂する。

俺の記憶が正しければ2人が、特に千春が言い合うのは初めてみる。

千歳も千春がここまで言うのが予想外みたいで口ごもっている。

千春の方もかなりの勇気を振り絞ったのか俺の服を掴む力が強まった。



「とりあえずお食事に致しませんか?お二人も本日は疲れたでしょう。お部屋を用意します」
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