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11.醜女姫と騎士団
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第一王子妃が部屋へと帰ると、物々しい雰囲気で出迎えられた。
「あら、これはどうしたことかしら?」
部屋の前に騎士が数名、見張りを立てていたので訳を聞こうと側へ寄ると、何故か部屋へ入らないように止められてしまった。
「あら、どうして?ここは、わたくしの部屋よ。」
王子妃は、きつく睨み付けてくる騎士に怯むことなく、そう言って部屋へと入ろうとした。
「なりませぬ。今部屋では捜索をしている最中ですので。」
「捜索?薬草なら、この前持って行ったばかりでしょう?」
そう言って、騎士にやんわりと抗議する第一王子妃に気づいた侍女たちが、慌てて部屋の外へと出てきた。
「お嬢様、何処へ行っていたのですか!?」
「もう、いきなり居なくなるから心配したんですよ!」
出てきた二人の侍女に、順番に叱られてしまった。
「ごめんなさい、気分転換にちょっと書庫へ読書をしに行ってたの。それよりも、この騒ぎは一体何事なのかしら?」
第一王子妃は、侍女の剣幕を華麗に交わすと、訊ねてきた。
「それが……。」
侍女が眉根を下げて事情を話そうとした所、部屋の中から大きな声が聞こえてきた。
「だから無いと、何度も申し上げてるはずです!!」
「隠し立てすると貴様も牢屋に行くことになるぞ!!」
何やら穏やかではない単語が飛び交ってきたので、第一王子妃は、どさくさに紛れて中へと突入していった。
そんな彼女の後を、侍女と見張りの騎士が血相を変えて付いて行く。
「牢屋に入れるとは、随分物騒なことをおっしゃいますのね。」
「うっ……これは、王子妃様。」
部屋の中にいた騎士団長が、第一王子妃に気づくとバツが悪そうに顔を顰め、渋々といった感じで頭を下げてきた。
「騎士団長殿、これはどういうわけですか?私の留守の間に勝手に入るとは……。いくら王家直属の騎士といえども、許される行為では無いはずですよ?」
「誠に以て返す言葉もございません。ですが、貴女様の部屋に”毒薬がある”と密告を受けたもので……。」
騎士団長は、第一王子妃の怒りを喰らい、平身低頭謝罪しながらも、しかしながらと抗議してきた。
「それは、誰からの密告ですか?」
「それは、申せません。」
「守秘義務ですか?」
「はい。」
騎士団長はそう言って、深く頭を下げた。
「わかりました。では気の済むまで探してください。」
「ご理解感謝いたします。では早速」
「ただし!」
「はい?」
捜索の許可を得られた騎士団長が、家探しを始めようと顔を上げた所で、王子妃に待ったをかけられた。
出鼻を挫かれた騎士団長は、呆けたような顔をしながら第一王子妃を見る。
「もし、毒が出て来なかった時は、それ相応の覚悟をしておいてくださいね。」
そう言って第一王女妃は、ローブから覗く口元で、にったりと笑ってきたのだった。
その瞬間、ぞぞぞぞぞ~、と騎士団長……いや、そこに居た騎士全員の背筋に、悪寒が走ったことは言うまでもなかった。
「あら、これはどうしたことかしら?」
部屋の前に騎士が数名、見張りを立てていたので訳を聞こうと側へ寄ると、何故か部屋へ入らないように止められてしまった。
「あら、どうして?ここは、わたくしの部屋よ。」
王子妃は、きつく睨み付けてくる騎士に怯むことなく、そう言って部屋へと入ろうとした。
「なりませぬ。今部屋では捜索をしている最中ですので。」
「捜索?薬草なら、この前持って行ったばかりでしょう?」
そう言って、騎士にやんわりと抗議する第一王子妃に気づいた侍女たちが、慌てて部屋の外へと出てきた。
「お嬢様、何処へ行っていたのですか!?」
「もう、いきなり居なくなるから心配したんですよ!」
出てきた二人の侍女に、順番に叱られてしまった。
「ごめんなさい、気分転換にちょっと書庫へ読書をしに行ってたの。それよりも、この騒ぎは一体何事なのかしら?」
第一王子妃は、侍女の剣幕を華麗に交わすと、訊ねてきた。
「それが……。」
侍女が眉根を下げて事情を話そうとした所、部屋の中から大きな声が聞こえてきた。
「だから無いと、何度も申し上げてるはずです!!」
「隠し立てすると貴様も牢屋に行くことになるぞ!!」
何やら穏やかではない単語が飛び交ってきたので、第一王子妃は、どさくさに紛れて中へと突入していった。
そんな彼女の後を、侍女と見張りの騎士が血相を変えて付いて行く。
「牢屋に入れるとは、随分物騒なことをおっしゃいますのね。」
「うっ……これは、王子妃様。」
部屋の中にいた騎士団長が、第一王子妃に気づくとバツが悪そうに顔を顰め、渋々といった感じで頭を下げてきた。
「騎士団長殿、これはどういうわけですか?私の留守の間に勝手に入るとは……。いくら王家直属の騎士といえども、許される行為では無いはずですよ?」
「誠に以て返す言葉もございません。ですが、貴女様の部屋に”毒薬がある”と密告を受けたもので……。」
騎士団長は、第一王子妃の怒りを喰らい、平身低頭謝罪しながらも、しかしながらと抗議してきた。
「それは、誰からの密告ですか?」
「それは、申せません。」
「守秘義務ですか?」
「はい。」
騎士団長はそう言って、深く頭を下げた。
「わかりました。では気の済むまで探してください。」
「ご理解感謝いたします。では早速」
「ただし!」
「はい?」
捜索の許可を得られた騎士団長が、家探しを始めようと顔を上げた所で、王子妃に待ったをかけられた。
出鼻を挫かれた騎士団長は、呆けたような顔をしながら第一王子妃を見る。
「もし、毒が出て来なかった時は、それ相応の覚悟をしておいてくださいね。」
そう言って第一王女妃は、ローブから覗く口元で、にったりと笑ってきたのだった。
その瞬間、ぞぞぞぞぞ~、と騎士団長……いや、そこに居た騎士全員の背筋に、悪寒が走ったことは言うまでもなかった。
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