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2.醜女姫
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「はあ……。」
重い扉の向こうに居るであろう人物を思い出しながら、深いため息が出る。
第一王子は、定例の父王への見舞いにやって来ていた。
重厚な扉が開かれ、中へと足を踏み入れると案の定、奴がいた。
長いローブを身に纏い、目深に被ったフードから覗く顔半分が視界に入り、思わず眉間に皺が寄る。
「父上、お加減はいかがですか?」
「おお、息子よ。よく来てくれた。」
そう言って、ベッドの上で横になっていた国王陛下は、震える手で息子を手招いてきた。
第一王子は一瞬嫌な顔をしたが、すぐさまその表情を引っ込め、何食わぬ顔で国王の側へ行く。
王が臥せっているベッドの脇には、最近婚姻を交わしたばかりの第一王子妃が居た。
彼女は簡素な椅子に座り、父王の手を握りしめている。
長いローブの袖から覗く第一王子妃の皺くちゃの手を見て、第一王子は気付かれないように、一瞬だけ顔に渋面を浮かばせたのだった。
醜女姫。
第一王子妃がこの城にやって来てから、城の者達からは影でそう呼ばれていた。
そう、この第一王子妃は、どういうわけか会った時から長いローブを身に纏っていた。
しかも、ローブから覗く顔は皺だらけで、若い娘とは思えないような、大きな先の尖った鷲鼻が特徴的な人物だった。
初めて会ったとき、本当に何かの手違いで老魔女がやってきたのかと思ったくらいだった。
何かの間違いかと国王に訊ねてみたが、この老魔女のような女こそが、お前の結婚相手だと言われ眩暈がした。
なんとかその場で卒倒するのだけは免れたが、何度見ても老婆にしか見えない婚約者に、嫌悪感しか覚えなかった。
第一王子は、この結婚を何とかして解消できないかと頭を悩ませていた。
見た目通りに性悪な魔女であったならと思ったが、しかし予想に反して第一王子妃は、病床にあった国王陛下を甲斐甲斐しく介護し、そのせいあってか最近では起きて食事も摂れるようになったというのだ。
その為、側で治療する医師達には、すこぶる評判が良く、どんな手を使っても国王から第一王子妃を遠ざける事ができなかった。
そして、あれよあれよという間に婚姻の儀が終了してしまい、今に至るのだ。
「それでは、私は執務がありますので、これで。父上、ゆっくり休んでください。」
「うむ。」
第一王子は恭しく頭を下げると、第一王子妃には一瞥もくれず、さっさと部屋から出て行ってしまったのだった。
「其方には苦労を掛けるな。」
「……いえ。」
第一王子の去って行った扉を見つめながら、国王陛下が謝罪の言葉を述べる。
第一王子妃は、そんな国王に、ゆるく首を振って大丈夫だと微笑み返したのだった。
重い扉の向こうに居るであろう人物を思い出しながら、深いため息が出る。
第一王子は、定例の父王への見舞いにやって来ていた。
重厚な扉が開かれ、中へと足を踏み入れると案の定、奴がいた。
長いローブを身に纏い、目深に被ったフードから覗く顔半分が視界に入り、思わず眉間に皺が寄る。
「父上、お加減はいかがですか?」
「おお、息子よ。よく来てくれた。」
そう言って、ベッドの上で横になっていた国王陛下は、震える手で息子を手招いてきた。
第一王子は一瞬嫌な顔をしたが、すぐさまその表情を引っ込め、何食わぬ顔で国王の側へ行く。
王が臥せっているベッドの脇には、最近婚姻を交わしたばかりの第一王子妃が居た。
彼女は簡素な椅子に座り、父王の手を握りしめている。
長いローブの袖から覗く第一王子妃の皺くちゃの手を見て、第一王子は気付かれないように、一瞬だけ顔に渋面を浮かばせたのだった。
醜女姫。
第一王子妃がこの城にやって来てから、城の者達からは影でそう呼ばれていた。
そう、この第一王子妃は、どういうわけか会った時から長いローブを身に纏っていた。
しかも、ローブから覗く顔は皺だらけで、若い娘とは思えないような、大きな先の尖った鷲鼻が特徴的な人物だった。
初めて会ったとき、本当に何かの手違いで老魔女がやってきたのかと思ったくらいだった。
何かの間違いかと国王に訊ねてみたが、この老魔女のような女こそが、お前の結婚相手だと言われ眩暈がした。
なんとかその場で卒倒するのだけは免れたが、何度見ても老婆にしか見えない婚約者に、嫌悪感しか覚えなかった。
第一王子は、この結婚を何とかして解消できないかと頭を悩ませていた。
見た目通りに性悪な魔女であったならと思ったが、しかし予想に反して第一王子妃は、病床にあった国王陛下を甲斐甲斐しく介護し、そのせいあってか最近では起きて食事も摂れるようになったというのだ。
その為、側で治療する医師達には、すこぶる評判が良く、どんな手を使っても国王から第一王子妃を遠ざける事ができなかった。
そして、あれよあれよという間に婚姻の儀が終了してしまい、今に至るのだ。
「それでは、私は執務がありますので、これで。父上、ゆっくり休んでください。」
「うむ。」
第一王子は恭しく頭を下げると、第一王子妃には一瞥もくれず、さっさと部屋から出て行ってしまったのだった。
「其方には苦労を掛けるな。」
「……いえ。」
第一王子の去って行った扉を見つめながら、国王陛下が謝罪の言葉を述べる。
第一王子妃は、そんな国王に、ゆるく首を振って大丈夫だと微笑み返したのだった。
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