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第四章【過去】
第五話
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「!!!!!!」
突然目をかっと開いたかと思うと、いきなり飛び起き苦しそうに荒い息を繰り返した。
肩を激しく上下させ何とか呼吸を整えようと深呼吸をする。
「那々瀬さん大丈夫?」
胸を押さえる北斗の横で兇の心配そうな声が聞こえてきた。
のろのろと顔をそちらに向けると心配そうに覗き込む兇と目が合った。
一瞬ほっとするが、先程見た映像を思い出し北斗は顔を歪ませた。
――あれはなんだったのか?
北斗は先程の夢を思い出そうと記憶を辿る。
知らないおじちゃんがいて
母の悲鳴が聞こえてきて
そして
そして・・・・
!!!!!!!!
思い出した途端全身が震えた。
と同時に吐き気が込み上げてきた。
「那々瀬さん!!」
蹲って嘔吐きだした北斗に兇が慌てた。
「気持ち悪い?医者を呼ぼうか?」
口元を押さえて苦しそうにする北斗を心配しながら兇が訊ねると北斗は激しく首を横に振った。
「だ、大丈夫・・・すぐ・・・治まるから。」
「でも・・・・」
「大丈夫・・・だから・・・・ごめん。」
そう言って呼吸を整えようと深呼吸を繰り返す北斗を困った顔で見下ろしながら兇はせめてと、背中を優しくさすってやる。
暫くしてようやく落ち着いてきた北斗に、兇は何か変な夢を見たのではないかと北斗に尋ねた。
北斗は少しの間悩んだ末に先程見た夢を打ち明ける事にした。
「そんなことが・・・・」
兇の言葉に北斗は俯きながら頷く。
「あれは多分夢なんかじゃないと思う。」
先程見た鮮明な夢を思い出し北斗はぶるりと震えた。
自身の腕で自分の体を抱きしめながら不安そうにする北斗を見て居た堪れなくなった。
兇は北斗をそっと抱き寄せると
「大丈夫・・・・俺がついてるから。」
そう言って優しく微笑みながら北斗を見つめた。
「う、うん。」
急に抱き寄せられた北斗は顔を真っ赤にさせて俯く。
突然兇に抱きしめられて恥ずかしかったが、そのお陰で心なしか気持ちが少し軽くなったような気がした。
「ありがとう話してくれて。」
「え?」
恥ずかしそうに腕の中で小さくなっていた北斗は兇の言葉に顔を上げた。
至近距離にある端正な顔に更に頬を染めた北斗を優しい眼差しが見下ろしてくる
「うん、だってそんな辛い出来事話すのも辛かっただろう?」
そう言って北斗の頭を抱き寄せた。
密着する体に北斗があわあわしていると・・・・
「もう大丈夫だから。」
そう言ってちゅっと音を立てて北斗のおでこに口付けをしてきた。
ボンッと激しく音を立てて全身真っ赤になる北斗。
そんな北斗を愛おしそうに見つめる兇の視線に耐え切れなくなった北斗はとうとう
気絶してしまった――
「あ~あ、見せつけてくれるねぇ~~~。」
意識を失った北斗を兇がそっと布団に寝かせていると。
見計らったかのように障子がすっと開いた。
そこには、つまらなそうな顔をした猛が立っていた。
半眼でこちらを見下ろして来る猛を無視して兇は部屋を出る。
兇の動きを目だけで追っていた猛に兇がようやく口を開いた。
「さっきの聞いていたんだろう。」
「まあ・・・途中からだけどね。」
「母親の事は?」
「全部聞いてた。」
「なら話が早い。」
「はいはい、調べておくよ。」
「ああ、頼んだ。」
兇はそう言うと去って行ってしまった。
兇が去って行った廊下を見ていた猛は北斗へと視線をやる。
すやすやと眠る北斗の寝顔を見ながら猛はやれやれと溜息を吐いた。
「まったく君って子は、どれだけ不幸な目に合えばいいんだろうね。」
月明かりに照らされた薄幸な少女を不憫に思いながら猛はそう呟くのであった。
突然目をかっと開いたかと思うと、いきなり飛び起き苦しそうに荒い息を繰り返した。
肩を激しく上下させ何とか呼吸を整えようと深呼吸をする。
「那々瀬さん大丈夫?」
胸を押さえる北斗の横で兇の心配そうな声が聞こえてきた。
のろのろと顔をそちらに向けると心配そうに覗き込む兇と目が合った。
一瞬ほっとするが、先程見た映像を思い出し北斗は顔を歪ませた。
――あれはなんだったのか?
北斗は先程の夢を思い出そうと記憶を辿る。
知らないおじちゃんがいて
母の悲鳴が聞こえてきて
そして
そして・・・・
!!!!!!!!
思い出した途端全身が震えた。
と同時に吐き気が込み上げてきた。
「那々瀬さん!!」
蹲って嘔吐きだした北斗に兇が慌てた。
「気持ち悪い?医者を呼ぼうか?」
口元を押さえて苦しそうにする北斗を心配しながら兇が訊ねると北斗は激しく首を横に振った。
「だ、大丈夫・・・すぐ・・・治まるから。」
「でも・・・・」
「大丈夫・・・だから・・・・ごめん。」
そう言って呼吸を整えようと深呼吸を繰り返す北斗を困った顔で見下ろしながら兇はせめてと、背中を優しくさすってやる。
暫くしてようやく落ち着いてきた北斗に、兇は何か変な夢を見たのではないかと北斗に尋ねた。
北斗は少しの間悩んだ末に先程見た夢を打ち明ける事にした。
「そんなことが・・・・」
兇の言葉に北斗は俯きながら頷く。
「あれは多分夢なんかじゃないと思う。」
先程見た鮮明な夢を思い出し北斗はぶるりと震えた。
自身の腕で自分の体を抱きしめながら不安そうにする北斗を見て居た堪れなくなった。
兇は北斗をそっと抱き寄せると
「大丈夫・・・・俺がついてるから。」
そう言って優しく微笑みながら北斗を見つめた。
「う、うん。」
急に抱き寄せられた北斗は顔を真っ赤にさせて俯く。
突然兇に抱きしめられて恥ずかしかったが、そのお陰で心なしか気持ちが少し軽くなったような気がした。
「ありがとう話してくれて。」
「え?」
恥ずかしそうに腕の中で小さくなっていた北斗は兇の言葉に顔を上げた。
至近距離にある端正な顔に更に頬を染めた北斗を優しい眼差しが見下ろしてくる
「うん、だってそんな辛い出来事話すのも辛かっただろう?」
そう言って北斗の頭を抱き寄せた。
密着する体に北斗があわあわしていると・・・・
「もう大丈夫だから。」
そう言ってちゅっと音を立てて北斗のおでこに口付けをしてきた。
ボンッと激しく音を立てて全身真っ赤になる北斗。
そんな北斗を愛おしそうに見つめる兇の視線に耐え切れなくなった北斗はとうとう
気絶してしまった――
「あ~あ、見せつけてくれるねぇ~~~。」
意識を失った北斗を兇がそっと布団に寝かせていると。
見計らったかのように障子がすっと開いた。
そこには、つまらなそうな顔をした猛が立っていた。
半眼でこちらを見下ろして来る猛を無視して兇は部屋を出る。
兇の動きを目だけで追っていた猛に兇がようやく口を開いた。
「さっきの聞いていたんだろう。」
「まあ・・・途中からだけどね。」
「母親の事は?」
「全部聞いてた。」
「なら話が早い。」
「はいはい、調べておくよ。」
「ああ、頼んだ。」
兇はそう言うと去って行ってしまった。
兇が去って行った廊下を見ていた猛は北斗へと視線をやる。
すやすやと眠る北斗の寝顔を見ながら猛はやれやれと溜息を吐いた。
「まったく君って子は、どれだけ不幸な目に合えばいいんだろうね。」
月明かりに照らされた薄幸な少女を不憫に思いながら猛はそう呟くのであった。
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