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家令たちの心配は的中し、移動する馬車の中は微妙な雰囲気が漂っていた。
お互い言葉を発することなく馬車に揺られていた。
エレノアは馬車が動き出すと、覗き窓から外の様子を眺めてしまい、そんな彼女をランスロットが何か言いたげな顔をしながらチラチラと見ていたのであった。
「きょ、今日は、天気がいいわね。」
突然、ランスロットが取り留めも無く話しかけてきた。
とりあえずこの沈黙をどうにかしようと無難な天気の話を振ってみたのだが、覗き窓から見えた空にはどんよりと厚い雲が覆っていたのだった。
ランスロットは、窓から見える景色に内心冷や汗を流しながら、他に気の利いた話題は無いかと必死に考える。
しかし、そんなランスロットの失言を気にする様子も無く、エレノアは「そうですわね」と相槌を打ってきたのだった。
外を見たまま返事をしてきたエレノアに驚きつつ、ランスロットは難しい顔をすると意を決して口を開いたのであった。
「そ、その……こ、この前の事は悪かったわね。」
「え?」
「ほ、ほら、庭園での事よ。」
「ああそれですか。その事なら、もう気にしていませんので、お気になさらないでください。」
「そ、そうなの?」
「はい。」
己の謝罪の言葉に、あっさりと許してきたエレノアに拍子抜けしてしまった。
もっとこう、罵倒やら嫌味やらを言われるのかと思って身構えていたのだが、どうやら彼女にとっては大した事ではなかったらしい。
ランスロットは、内心ホッとしながらエレノアを見た。
窓の外を見る彼女は、いつもと違ってとても令嬢らしい姿をしていた。
紺色のドレスは細身の彼女の体のラインを引き締め、さらに細く見せていたが、ボリュームのあるスカートのお陰で貧相にはならず華やかな印象を与えていた。
いつも、すっぴんの様な薄化粧だけの彼女の肌は、今は白い肌を更に美しく見せるための化粧が施され、紺色のドレスと相まって彼女の肌は輝いて見える程であった。
そんな、誰が見ても美しいと賞賛される令嬢へと変貌を遂げたエレノアを見ていたランスロットは、急に気恥ずかしくなってしまい彼女を直視できなくなってしまった。
――聞いてないぞ、こんなに綺麗だったなんて……。
ランスロットは内心で呟きながら、チラリとエレノアを盗み見る。
彼女は相変わらずこちらに興味がないのか、窓の外の景色を眺めていたのであった。
お互い言葉を発することなく馬車に揺られていた。
エレノアは馬車が動き出すと、覗き窓から外の様子を眺めてしまい、そんな彼女をランスロットが何か言いたげな顔をしながらチラチラと見ていたのであった。
「きょ、今日は、天気がいいわね。」
突然、ランスロットが取り留めも無く話しかけてきた。
とりあえずこの沈黙をどうにかしようと無難な天気の話を振ってみたのだが、覗き窓から見えた空にはどんよりと厚い雲が覆っていたのだった。
ランスロットは、窓から見える景色に内心冷や汗を流しながら、他に気の利いた話題は無いかと必死に考える。
しかし、そんなランスロットの失言を気にする様子も無く、エレノアは「そうですわね」と相槌を打ってきたのだった。
外を見たまま返事をしてきたエレノアに驚きつつ、ランスロットは難しい顔をすると意を決して口を開いたのであった。
「そ、その……こ、この前の事は悪かったわね。」
「え?」
「ほ、ほら、庭園での事よ。」
「ああそれですか。その事なら、もう気にしていませんので、お気になさらないでください。」
「そ、そうなの?」
「はい。」
己の謝罪の言葉に、あっさりと許してきたエレノアに拍子抜けしてしまった。
もっとこう、罵倒やら嫌味やらを言われるのかと思って身構えていたのだが、どうやら彼女にとっては大した事ではなかったらしい。
ランスロットは、内心ホッとしながらエレノアを見た。
窓の外を見る彼女は、いつもと違ってとても令嬢らしい姿をしていた。
紺色のドレスは細身の彼女の体のラインを引き締め、さらに細く見せていたが、ボリュームのあるスカートのお陰で貧相にはならず華やかな印象を与えていた。
いつも、すっぴんの様な薄化粧だけの彼女の肌は、今は白い肌を更に美しく見せるための化粧が施され、紺色のドレスと相まって彼女の肌は輝いて見える程であった。
そんな、誰が見ても美しいと賞賛される令嬢へと変貌を遂げたエレノアを見ていたランスロットは、急に気恥ずかしくなってしまい彼女を直視できなくなってしまった。
――聞いてないぞ、こんなに綺麗だったなんて……。
ランスロットは内心で呟きながら、チラリとエレノアを盗み見る。
彼女は相変わらずこちらに興味がないのか、窓の外の景色を眺めていたのであった。
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