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第二章【旅路編】
11.子蜘蛛奪還!
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数刻後――
あの後、親蜘蛛の出現で腰を抜かした領主は、あっさりと子蜘蛛達を返してくれた。
結局、領主の目的は良くある話で、子蜘蛛達を攫いその糸で金儲けを企んでいたそうだ。
もちろん、国の王様にその事をさくっと報告したので、領主は今王宮の牢屋の中に入っている。
「まったく、子蜘蛛が糸を作れないって、知らなかったんですかねぇ。」
帰りの道中、マクレーンは愚痴を零していた。
「さあ、知らなかったんじゃないか?」
マクレーンの言葉に、アランが頬杖を突きながら答えてきた。
俺も知らなかったからな、と付け加えてきたアランに、マクレーンもそれはそうかと納得する。
「確かに……子供を攫ったら、親が怒って襲ってくるっていう発想も無いような人でしたからね。」
マクレーンはそう言うと、すっかり慣れてくれた子蜘蛛達の頭を撫でた。
「まあ、これに懲りて、もう黄金蜘蛛には手を出さないと約束してくれたので、結果オーライですけど。」
マクレーンはそう言いながら、良かった良かったと頷いていた。
あの後――
騒ぎを聞きつけて、駆け付けて来た王国の騎士たちが、二匹の黄金蜘蛛と街の惨状を、すぐさまノーブルの王に報告してくれたお陰で、現状を理解した王が、今後黄金蜘蛛には手を出さないと言っていた。
「まあ、あそこまで街が破壊されたんじゃ、もう関わりたくないだろうしなぁ。」
アランの呆れも混じった言葉に、マクレーンは苦笑する。
街に来たのは一匹だけだと思っていたが、実は二匹いて、それは子蜘蛛達の父親と母親だった。
一匹が領主の屋敷を襲っていた間、片方が街を破壊しまくっていたらしく、死傷者は出なかったものの、その被害は甚大だった。
もちろん、子を攫われた黄金蜘蛛達にはお咎めはなかった。
王国側に状況を説明したマクレーン達が、黄金蜘蛛達を責任を持ってカーラ山まで連れ帰るという事でマクレーン達の事も見逃してくれた。
そして今、子蜘蛛を助けてくれたお礼にと、親蜘蛛の背に乗せて貰い、帰路に着く途中であった。
「これでこの子達も、少しは静かに暮らせるでしょうね。」
「そうだな。」
二匹の大蜘蛛が仲良く寄り添いながら平原を走る姿を、その背の上で眺めながら二人は苦笑するのであった。
「良かったな。」
「ええ、とりあえず、蜘蛛の糸ゲットです。」
無事、黄金蜘蛛の親子を住処まで送り届けたマクレーン達は、蜘蛛たちから大量の糸をお礼に貰って次の目的地へと向かっていた。
『ねえ、ねえ、次はどこへ行くの?』
そんなマクレーン達の頭上から、呑気な声が聞こえてきた。
そこには、火の精霊カーラが宙へ浮きながら、こちらを見降ろしている姿があった。
あの後、カーラは何故かマクレーン達の後をついて来ていた。
「次は北の大地に向かいます。カーラも居てくれることですし、銀針鼠を探しに行こうかと思います。」
『それいいわね!私がいれば寒さなんて、へっちゃらだもんね♪』
「ええ、よろしくお願いします。」
カーラの質問に、マクレーンが答えると、彼女は嬉しそうに頷いていた。
その和やかな遣り取りに、不満の声を上げる者が居た。
「ちょっと待て!なんか、俺の時と大分対応が違うんじゃないか?」
そう言って、アランはマクレーンに詰め寄ってきた。
「は?当たり前でしょう。空腹で森に倒れていたのを助けてあげたのに、その挙句勝手に付いて来た一文無しの貴方と、火の妖精とじゃ天と地ほどの差があるなんて。」
アランの言葉に、マクレーンはしれっと答えてきた。
「なんか、めちゃくちゃ貶されてる気がするんだが……。」
「その通りですが何か?」
マクレーンの容赦ない口撃に、アランはぐさぐさと貫かれながらも、何とか挫けない様に踏ん張っていたのだが、最後の冷たい一言で呆気なく崩れ落ちた。
「うううう、そんなはっきり言わなくても……というか、なんで精霊が一緒について来ようとしてるんだよ……。」
アランは地面に、へたり込みながらも疑問をぶつけてきた。
「さて、行きますか。」
そんなアランを丸っと無視して、マクレーンは火の精霊と共に、すたすたと歩いて行ってしまった。
「おお~い!ほんとに置いていくなよ~!!」
そんなマクレーンの塩辛対応に慌てたアランは、先程の落ち込みはどこへやら、すくっと元気よく立ち上がると、大急ぎで後を追いかけて行くのであった。
あの後、親蜘蛛の出現で腰を抜かした領主は、あっさりと子蜘蛛達を返してくれた。
結局、領主の目的は良くある話で、子蜘蛛達を攫いその糸で金儲けを企んでいたそうだ。
もちろん、国の王様にその事をさくっと報告したので、領主は今王宮の牢屋の中に入っている。
「まったく、子蜘蛛が糸を作れないって、知らなかったんですかねぇ。」
帰りの道中、マクレーンは愚痴を零していた。
「さあ、知らなかったんじゃないか?」
マクレーンの言葉に、アランが頬杖を突きながら答えてきた。
俺も知らなかったからな、と付け加えてきたアランに、マクレーンもそれはそうかと納得する。
「確かに……子供を攫ったら、親が怒って襲ってくるっていう発想も無いような人でしたからね。」
マクレーンはそう言うと、すっかり慣れてくれた子蜘蛛達の頭を撫でた。
「まあ、これに懲りて、もう黄金蜘蛛には手を出さないと約束してくれたので、結果オーライですけど。」
マクレーンはそう言いながら、良かった良かったと頷いていた。
あの後――
騒ぎを聞きつけて、駆け付けて来た王国の騎士たちが、二匹の黄金蜘蛛と街の惨状を、すぐさまノーブルの王に報告してくれたお陰で、現状を理解した王が、今後黄金蜘蛛には手を出さないと言っていた。
「まあ、あそこまで街が破壊されたんじゃ、もう関わりたくないだろうしなぁ。」
アランの呆れも混じった言葉に、マクレーンは苦笑する。
街に来たのは一匹だけだと思っていたが、実は二匹いて、それは子蜘蛛達の父親と母親だった。
一匹が領主の屋敷を襲っていた間、片方が街を破壊しまくっていたらしく、死傷者は出なかったものの、その被害は甚大だった。
もちろん、子を攫われた黄金蜘蛛達にはお咎めはなかった。
王国側に状況を説明したマクレーン達が、黄金蜘蛛達を責任を持ってカーラ山まで連れ帰るという事でマクレーン達の事も見逃してくれた。
そして今、子蜘蛛を助けてくれたお礼にと、親蜘蛛の背に乗せて貰い、帰路に着く途中であった。
「これでこの子達も、少しは静かに暮らせるでしょうね。」
「そうだな。」
二匹の大蜘蛛が仲良く寄り添いながら平原を走る姿を、その背の上で眺めながら二人は苦笑するのであった。
「良かったな。」
「ええ、とりあえず、蜘蛛の糸ゲットです。」
無事、黄金蜘蛛の親子を住処まで送り届けたマクレーン達は、蜘蛛たちから大量の糸をお礼に貰って次の目的地へと向かっていた。
『ねえ、ねえ、次はどこへ行くの?』
そんなマクレーン達の頭上から、呑気な声が聞こえてきた。
そこには、火の精霊カーラが宙へ浮きながら、こちらを見降ろしている姿があった。
あの後、カーラは何故かマクレーン達の後をついて来ていた。
「次は北の大地に向かいます。カーラも居てくれることですし、銀針鼠を探しに行こうかと思います。」
『それいいわね!私がいれば寒さなんて、へっちゃらだもんね♪』
「ええ、よろしくお願いします。」
カーラの質問に、マクレーンが答えると、彼女は嬉しそうに頷いていた。
その和やかな遣り取りに、不満の声を上げる者が居た。
「ちょっと待て!なんか、俺の時と大分対応が違うんじゃないか?」
そう言って、アランはマクレーンに詰め寄ってきた。
「は?当たり前でしょう。空腹で森に倒れていたのを助けてあげたのに、その挙句勝手に付いて来た一文無しの貴方と、火の妖精とじゃ天と地ほどの差があるなんて。」
アランの言葉に、マクレーンはしれっと答えてきた。
「なんか、めちゃくちゃ貶されてる気がするんだが……。」
「その通りですが何か?」
マクレーンの容赦ない口撃に、アランはぐさぐさと貫かれながらも、何とか挫けない様に踏ん張っていたのだが、最後の冷たい一言で呆気なく崩れ落ちた。
「うううう、そんなはっきり言わなくても……というか、なんで精霊が一緒について来ようとしてるんだよ……。」
アランは地面に、へたり込みながらも疑問をぶつけてきた。
「さて、行きますか。」
そんなアランを丸っと無視して、マクレーンは火の精霊と共に、すたすたと歩いて行ってしまった。
「おお~い!ほんとに置いていくなよ~!!」
そんなマクレーンの塩辛対応に慌てたアランは、先程の落ち込みはどこへやら、すくっと元気よく立ち上がると、大急ぎで後を追いかけて行くのであった。
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