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第一章【出会い編】
69.第一章エピローグ とりあえず、おつかいは無事終わりました!
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「う~頭が痛い。」
「ほら、しっかり歩いてください。」
マクレーンたち一行は、無事にバラックの転柱門に到着していた。
あれから闘技場の人間達が関わってくる事は無かった。
「さて、僕はこのまま東の大地に帰りますけど、ニコルさんはどうするんですか?」
「ええ、僕も用事が済んだので帰ります。」
マクレーンの質問に、ニコルは嬉しそうに答えてくる。
「そうですか、ではお気をつけて。」
「はい……マクレーンさんも……その」
別れの挨拶をしようとすると、ニコルが名残惜しそうに言ってきた。
「また、会えますよね?」
「ええ、そのうちまた会えますよ。」
マクレーンの言葉にニコルは破顔する。
すると、先程まで隣で呻いていた男が話しに割って入ってきた。
「お~い、俺を置いて話を進めるなよ~。」
見ると頭を抱えたまま辛そうな顔で、こちらを見るアランがいた。
「アランさん、もう大丈夫なんですか?」
ニコルがわざとらしく心配そうな顔をして聞いてくる。
「ああ、なんとかな。でもまさか、鉱山でワイン飲み過ぎて寝こけちまうなんて……。」
そう言いながらアランは、ばつが悪そうな顔をした。
実はあの後、ニコルに頼んで気が付いたアランに一服盛ってもらったのだ。
そうと知らないアランは眠り続け、今朝やっと目を覚ましたところだった。
ちょっと、薬が強すぎましたかね。
マクレーンは内心で冷や汗を流しながらアランを見る。
彼は気づいた様子もなく、ぶつぶつ独り言を言っていた。
「まあ、でも最後の最後でいいもの採れたし、まあいっか♪」
アランはそう言うと、懐に入れていた宝石を取り出しながら嬉しそうに呟いた。
「それ、換金しなくていいんですか?」
「ん?ああ、これはお土産にする。」
「……誰の?」
「もちろん、赤の魔女への♪」
そう言ってアランは、持っていた宝石の原石を上に放るとキャッチし、にかりと笑ってきた。
その言葉にニコルとマクレーンは顔を見合わせる。
「本気ですね。大丈夫ですか?」
「う~ん、いざとなったら、あの森で巻くしかないか……。」
まだ諦めていなかったのか、と執念深いアランにニコルとマクレーンは顔をつき合わせながら、げんなりする。
こそこそと会話しながら、有頂天に宝石を見つめるアランを見て溜息を吐いた。
「と、とにかく帰りましょう。」
「そうですね。」
二人は力なく頷くと、転柱門へ向かった。
「それでは、マクレーンさん、アランさんお世話になりました。」
転柱門の前で二人に深々と頭を下げながら、別れの挨拶をするニコル。
「お元気で。」
「おう、またな!」
ニコルは笑顔で手を振ると、体が光に包まれあっという間にその場から消えたのだった。
「さて、俺達も行くか。」
「はい。」
マクレーン達も揃って転柱門の中へと入る。
マクレーンは、宝石を見つめたまま、にやにや物思いに耽るアランをちらりと見遣る。
――さて、このお使いも無事済んだ。あとはこの人か……。
マクレーンは胸中で嘆息すると、あちらに着いた後、どうやって彼を巻こうかと思案する。
そして光の粒子に体が包まれ、彼らは元居た場所へと戻っていったのであった。
「ほら、しっかり歩いてください。」
マクレーンたち一行は、無事にバラックの転柱門に到着していた。
あれから闘技場の人間達が関わってくる事は無かった。
「さて、僕はこのまま東の大地に帰りますけど、ニコルさんはどうするんですか?」
「ええ、僕も用事が済んだので帰ります。」
マクレーンの質問に、ニコルは嬉しそうに答えてくる。
「そうですか、ではお気をつけて。」
「はい……マクレーンさんも……その」
別れの挨拶をしようとすると、ニコルが名残惜しそうに言ってきた。
「また、会えますよね?」
「ええ、そのうちまた会えますよ。」
マクレーンの言葉にニコルは破顔する。
すると、先程まで隣で呻いていた男が話しに割って入ってきた。
「お~い、俺を置いて話を進めるなよ~。」
見ると頭を抱えたまま辛そうな顔で、こちらを見るアランがいた。
「アランさん、もう大丈夫なんですか?」
ニコルがわざとらしく心配そうな顔をして聞いてくる。
「ああ、なんとかな。でもまさか、鉱山でワイン飲み過ぎて寝こけちまうなんて……。」
そう言いながらアランは、ばつが悪そうな顔をした。
実はあの後、ニコルに頼んで気が付いたアランに一服盛ってもらったのだ。
そうと知らないアランは眠り続け、今朝やっと目を覚ましたところだった。
ちょっと、薬が強すぎましたかね。
マクレーンは内心で冷や汗を流しながらアランを見る。
彼は気づいた様子もなく、ぶつぶつ独り言を言っていた。
「まあ、でも最後の最後でいいもの採れたし、まあいっか♪」
アランはそう言うと、懐に入れていた宝石を取り出しながら嬉しそうに呟いた。
「それ、換金しなくていいんですか?」
「ん?ああ、これはお土産にする。」
「……誰の?」
「もちろん、赤の魔女への♪」
そう言ってアランは、持っていた宝石の原石を上に放るとキャッチし、にかりと笑ってきた。
その言葉にニコルとマクレーンは顔を見合わせる。
「本気ですね。大丈夫ですか?」
「う~ん、いざとなったら、あの森で巻くしかないか……。」
まだ諦めていなかったのか、と執念深いアランにニコルとマクレーンは顔をつき合わせながら、げんなりする。
こそこそと会話しながら、有頂天に宝石を見つめるアランを見て溜息を吐いた。
「と、とにかく帰りましょう。」
「そうですね。」
二人は力なく頷くと、転柱門へ向かった。
「それでは、マクレーンさん、アランさんお世話になりました。」
転柱門の前で二人に深々と頭を下げながら、別れの挨拶をするニコル。
「お元気で。」
「おう、またな!」
ニコルは笑顔で手を振ると、体が光に包まれあっという間にその場から消えたのだった。
「さて、俺達も行くか。」
「はい。」
マクレーン達も揃って転柱門の中へと入る。
マクレーンは、宝石を見つめたまま、にやにや物思いに耽るアランをちらりと見遣る。
――さて、このお使いも無事済んだ。あとはこの人か……。
マクレーンは胸中で嘆息すると、あちらに着いた後、どうやって彼を巻こうかと思案する。
そして光の粒子に体が包まれ、彼らは元居た場所へと戻っていったのであった。
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