僕のおつかい

麻竹

文字の大きさ
上 下
82 / 93
第一章【出会い編】

58.聖地巡礼なのに何故か鉱山見学に連れて行かれました!

しおりを挟む
「やっぱり鉱山来たんだから現場見て行かなきゃな!」

次の日、あれから聖地巡礼を真に受けたアランがガイドブック片手にキラキラした笑顔でそう言ってきた。
どうやら案内を買って出てくれるらしい。
いらんことを……と内心毒吐くがマクレーンは笑顔で「そうですね」と頷いた。
とりあえず聖地巡礼を隠れ蓑にこっそり『おつかい』を済ませてしまおうと考えたのだった。



アランが真っ先に向かった先は鉱山だった。
鉱山といっても穴の中に入っていくわけではない。
大地から隔離されたウイッチブレイク(浮島)には山などもちろんない。
ではどうやって採掘するのかというと――。

「ふわぁ~深いですね~。」

びゅおおおおおと吹き上げる風に眩暈が起きそうになりながらニコルは下を見下ろしていた。
マクレーン達は今バラックの端にある採掘場に来ていた。
足元には断崖絶壁。
小さな掘っ立て小屋の側には巨大な大木の柱が立っている。
幾重にも補強を加えた頑強な柱は小屋のすぐ真後ろにある断崖絶壁の下へと伸びていた。
そして柱にはこれまた太いロープが張られている。
柱の先端には巨大な滑車が括りつけられており、そこにロープが通っている。
柱の構造をまじまじと見ているとガラガラとロープが滑車を通っていく音が聞こえてきた。
見ると丁度ロープが括りつけられた巨大な檻のような乗り物が上がってきたところだった。

柱の側にいた男達がロープの巻き取り機に付いている長いレバーを傾ける。
男数人で動かすほどの巨大なブレーキが悲鳴を上げた。
巨大な檻―― エレベーター ――はその音とは裏腹にすうっと床板の位置が地面と平行になるように止まると格子の引き戸が開いて中に入っていた人達が出て行く。
空っぽになったその中に小屋の外で待っていた人達が次々と入っていった。

「俺たちも行こう。」

アランの声にマクレーン達は不安そうな顔でエレベーターの中に入っていった。
カシャンと硬質な音とともに扉が閉まる。
ゆっくりと下へ降りていく。
落下の独特な浮遊感に嫌な想像が頭を過ぎったがなんとか無事に下まで到着した。
何事も無く地面を踏み締められたことにほっと胸を撫で下ろす。

「夢と希望の採掘場へようこそ。」

見かけない顔に観光客と悟ったのだろう、鉱夫の一人が揶揄するように帽子を頭から外しながらそんな事を言ってきた。

「ここは初めてかい?許可証があれば誰でも一攫千金を望めるぜ。」

鉱夫はにやりと笑いながらそう言うと横穴の中へと消えていった。

ここバラックの採掘場は断崖絶壁の壁の中にある。
壁には所々穴が空いておりその穴の所には壁に面して足場の様に平たい地面があった。
先程乗ってきたエレベーターで降りた場所は唯一地上へと繋がる出入り口らしい。
それ以外の穴は中で蟻の巣の様になっており他の壁の穴へと繋がっている。
まるで迷路みたいだ、と不安になりながらアランに勧められるがまま中へと入っていったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル
ファンタジー
旧題:私は『聖女ではない』ですか。そうですか。帰ることも出来ませんか。じゃあ『勝手にする』ので放っといて下さい。 【 聖女?そんなもん知るか。報復?復讐?しますよ。当たり前でしょう?当然の権利です! 】 地震を知らせるアラームがなると同時に知らない世界の床に座り込んでいた。 同じ状況の少女と共に。 そして現れた『オレ様』な青年が、この国の第二王子!? 怯える少女と睨みつける私。 オレ様王子は少女を『聖女』として選び、私の存在を拒否して城から追い出した。 だったら『勝手にする』から放っておいて! 同時公開 ☆カクヨム さん ✻アルファポリスさんにて書籍化されました🎉 タイトルは【 私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください 】です。 そして番外編もはじめました。 相変わらず不定期です。 皆さんのおかげです。 本当にありがとうございます🙇💕 これからもよろしくお願いします。

亡き妻を求める皇帝は耳の聞こえない少女を妻にして偽りの愛を誓う

永江寧々
恋愛
二年前に婚約したばかりの幼馴染から突然、婚約破棄を受けたイベリス。 愛しすぎたが故の婚約破棄。なんとか笑顔でありがとうと告げ、別れを終えた二日後、イベリスは求婚される。相手は自国の貴族でも隣国の王子でもなく、隣の大陸に存在する大帝国テロスを統べる若き皇帝ファーディナンド・キルヒシュ。 婚約破棄の現場を見ており、幼馴染に見せた笑顔に一目惚れしたと突然家を訪ねてきた皇帝の求婚に戸惑いながらもイベリスは彼と結婚することにした。耳が聞こえない障害を理解した上での求婚だったからイベリスも両親も安心していた。 伯爵令嬢である自分が帝国に嫁ぐというのは不安もあったが、彼との明るい未来を想像していた。しかし、結婚してから事態は更に一変する。城の至る所に飾られたイベリスそっくりの女性の肖像画や写真に不気味さを感じ、服や装飾品など全て前皇妃の物を着用させられる。 自分という人間がまるで他人になるよう矯正されている感覚を覚える日々。優しさと甘さを注いでくれるはずだったファーディナンドへの不信感を抱えていたある日、イベリスは知ることになる。ファーディナンドが亡き妻の魂を降ろそうとしていること。瓜二つの自分がその器として求婚されたことを。 知られていないと思っている皇帝と、彼の計画を知りながらも妻でいることを決めた少女の行く末は──…… ※中盤辺りまで胸糞展開ございますので、苦手な方はご注意ください。 2024年11月14日に完結しました。

俺と合体した魔王の娘が残念すぎる

めらめら
ファンタジー
魔法が使えない中学生、御崎ソーマ。 ソーマはある事件をきっかけに、異世界からやって来た魔王の第3王女ルシオンと合体してしまう。 何かを探すために魔物を狩りまくるルシオンに、振り回されまくるソーマ。 崩壊する日常。 2人に襲いかかる異世界の魔王たち。 どうなるソーマの生活。 どうなるこの世界。 不定期ゆっくり連載。 残酷な描写あり。 微エロ注意。 ご意見、ご感想をいただくとめちゃくちゃ喜びます。

見捨てられた(無自覚な)王女は、溺愛には気付かない

みん
恋愛
精霊に護られた国ルテリアル。精霊の加護のお陰で豊かで平和な国ではあったが、近年ではその精霊の加護も薄れていき、他国から侵略されそうになる。戦いを知らない国王は、スネフリング帝国に助けを求めるが、その見返りに要求されたのは──。 精霊に護られた国の王女として生まれたにも関わらず、魔力を持って生まれなかった事で、母である王妃以外から冷遇されているカミリア第二王女。このカミリアが、人質同然にスネフリング帝国に行く事になり─。 ❋独自設定有り。 ❋誤字脱字には気を付けていますが、あると思います。すみません。気付き次第修正していきます。

拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~

ぽん
ファンタジー
⭐︎コミカライズ化決定⭐︎    2024年8月6日より配信開始  コミカライズならではを是非お楽しみ下さい。 ⭐︎書籍化決定⭐︎  第1巻:2023年12月〜  第2巻:2024年5月〜  番外編を新たに投稿しております。  そちらの方でも書籍化の情報をお伝えしています。  書籍化に伴い[106話]まで引き下げ、レンタル版と差し替えさせて頂きます。ご了承下さい。    改稿を入れて読みやすくなっております。  可愛い表紙と挿絵はTAPI岡先生が担当して下さいました。  書籍版『拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜』を是非ご覧下さい♪ ================== 1人ぼっちだった相沢庵は住んでいた村の為に猟師として生きていた。 いつもと同じ山、いつもと同じ仕事。それなのにこの日は違った。 山で出会った真っ白な狼を助けて命を落とした男が、神に愛され転移先の世界で狼と自由に生きるお話。 初めての投稿です。書きたい事がまとまりません。よく見る異世界ものを書きたいと始めました。異世界に行くまでが長いです。 気長なお付き合いを願います。 よろしくお願いします。 ※念の為R15をつけました ※本作品は2020年12月3日に完結しておりますが、2021年4月14日より誤字脱字の直し作業をしております。  作品としての変更はございませんが、修正がございます。  ご了承ください。 ※修正作業をしておりましたが2021年5月13日に終了致しました。  依然として誤字脱字が存在する場合がございますが、ご愛嬌とお許しいただければ幸いです。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

旅行先で目を覚ましたら森長可になっていた私。京で政変と聞き急ぎ美濃を目指す中、唯一の協力者。出浦盛清から紹介された人物が……どうも怪しい。

俣彦
ファンタジー
旅先で目を覚ましたら森長可になっていた私。場面は本能寺直後の越後。急ぎ美濃に戻ろうと試みると周りは敵だらけ。唯一協力を申し出てくれた出浦盛清に助けられ、美濃を目指す途中。出浦盛清に紹介されたのが真田昌幸。

処理中です...