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第一章【出会い編】
43.赤の魔女が街を襲っているようなのですが・・・・
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熱風と火の粉が荒れ狂う中。
マクレーンは目の前に現れた女を静かに見ていた。
魔女は時折振り下ろす腕から生み出した炎で麦畑をどんどん燃やしていく。
そのあまりな蛮行に街の住人やアラン達は成す術も無く立ち竦んでいた。
「な、なんで赤の魔女がこんな所に……。」
「どういうことだこれは?」
非現実的な光景に呆然としていた街の人間達が我に返った途端口々に言い始めた。
確かに。
何故こんな場所に赤の魔女が現れたのか?
ここは風の魔女が統治する場所だ。
しかも風の魔女と赤の魔女はきょうだいである。
正確にはこの世界を統治している4人の魔女達は血を分けた姉妹達であった。
しかも姉妹達は皆仲が良いことで有名だった。
この姉妹達が世界を統治してから数百年、姉妹たちが喧嘩をしたという伝説は一度も聞いたことが無い程だった。
しかも数年に一度執り行われる『聖大魔女会』――4人の魔女が集う日――があるのだが、この日ばかりはあの人間嫌いな赤の魔女でさえも姉妹達と一緒に人々の前に出てきてくれるのだ。
それほどまでに仲の良い魔女達なのに何故赤の魔女はこの地に現れたのか?
しかも姉の領域であるこの大地で暴挙に及ぶ姿は信じ難いものがあった。
そんな事を考えていると突然声が聞こえてきた。
「聞けお前ら!赤の魔女様はこの分断され隔離された世界をまた一つに戻そうとお考えだ!この崇高な計画には沢山の資金がいる!お前らつべこべ言わずに魔女様に有り金全部もってこい!!」
ひゃははははは~と下種な声で笑う盗賊の親玉の熱弁にマクレーン達は半眼になった。
こいつら……。
「なるほどそういうわけか。」
「ええ、赤の魔女を騙ってお金を巻き上げようって魂胆ですね。」
すぐ隣から自分の考えを代弁するかのようにアランとニコルの声が聞こえてきた。
「そうみたいですね。」
マクレーンもその言葉に賛同する。
しかし……。
「ぼく達はあいつらが盗賊だって知っているのでいいですが……。」
「ああ、あの格好じゃ街の人間は騙されるかも知れないな。」
目の前の盗賊達を睨み据えながらアランが頷く。
盗賊たちは盗賊然とした皮の鎧や鉄の剣を隠すため魔女と同じ真っ赤なローブを羽織っていたのだった。
いかにも魔女の従者を装ってはいるが、マクレーン達は数時間前に盗賊達を洞穴で見ていたので、すぐに嘘だと見抜けた。
しかし、盗賊たちの本性を知らない街の人達は、先程の演説を真に受けているものもいた。
「お、おいどうする?赤の魔女様があんなことを……。」
「世界を一つにするって、どういう事なんだ?」
盗賊たちの話を聞いていた街の住人達が、顔を見合わせてひそひそ話し合う声が聞こえてきた。
まずいな、このままじゃ……。
本当に、盗賊たちの言いなりになってしまうかも知れないと、マクレーン達は周囲を見回しながら焦った。
「たぶんあの魔女は盗賊たちの仲間だろう、化けの皮剥がさないと厄介なことになるな……。」
アランは舌打ち混じりに、そう告げてきた。
自体は一刻を争う。
麦畑はどんどん燃えていき、盗賊のホラ話に街の人達が騙されてしまいそうだ。
あの魔女を取り押さえれば済む事なのだが、あの魔女はどういうわけか炎を操れるらしい。
魔法を使えるのは本物の魔女だけなのだが。
いや、一つだけ魔法を扱える方法があった。
マクレーンは目の前に現れた女を静かに見ていた。
魔女は時折振り下ろす腕から生み出した炎で麦畑をどんどん燃やしていく。
そのあまりな蛮行に街の住人やアラン達は成す術も無く立ち竦んでいた。
「な、なんで赤の魔女がこんな所に……。」
「どういうことだこれは?」
非現実的な光景に呆然としていた街の人間達が我に返った途端口々に言い始めた。
確かに。
何故こんな場所に赤の魔女が現れたのか?
ここは風の魔女が統治する場所だ。
しかも風の魔女と赤の魔女はきょうだいである。
正確にはこの世界を統治している4人の魔女達は血を分けた姉妹達であった。
しかも姉妹達は皆仲が良いことで有名だった。
この姉妹達が世界を統治してから数百年、姉妹たちが喧嘩をしたという伝説は一度も聞いたことが無い程だった。
しかも数年に一度執り行われる『聖大魔女会』――4人の魔女が集う日――があるのだが、この日ばかりはあの人間嫌いな赤の魔女でさえも姉妹達と一緒に人々の前に出てきてくれるのだ。
それほどまでに仲の良い魔女達なのに何故赤の魔女はこの地に現れたのか?
しかも姉の領域であるこの大地で暴挙に及ぶ姿は信じ難いものがあった。
そんな事を考えていると突然声が聞こえてきた。
「聞けお前ら!赤の魔女様はこの分断され隔離された世界をまた一つに戻そうとお考えだ!この崇高な計画には沢山の資金がいる!お前らつべこべ言わずに魔女様に有り金全部もってこい!!」
ひゃははははは~と下種な声で笑う盗賊の親玉の熱弁にマクレーン達は半眼になった。
こいつら……。
「なるほどそういうわけか。」
「ええ、赤の魔女を騙ってお金を巻き上げようって魂胆ですね。」
すぐ隣から自分の考えを代弁するかのようにアランとニコルの声が聞こえてきた。
「そうみたいですね。」
マクレーンもその言葉に賛同する。
しかし……。
「ぼく達はあいつらが盗賊だって知っているのでいいですが……。」
「ああ、あの格好じゃ街の人間は騙されるかも知れないな。」
目の前の盗賊達を睨み据えながらアランが頷く。
盗賊たちは盗賊然とした皮の鎧や鉄の剣を隠すため魔女と同じ真っ赤なローブを羽織っていたのだった。
いかにも魔女の従者を装ってはいるが、マクレーン達は数時間前に盗賊達を洞穴で見ていたので、すぐに嘘だと見抜けた。
しかし、盗賊たちの本性を知らない街の人達は、先程の演説を真に受けているものもいた。
「お、おいどうする?赤の魔女様があんなことを……。」
「世界を一つにするって、どういう事なんだ?」
盗賊たちの話を聞いていた街の住人達が、顔を見合わせてひそひそ話し合う声が聞こえてきた。
まずいな、このままじゃ……。
本当に、盗賊たちの言いなりになってしまうかも知れないと、マクレーン達は周囲を見回しながら焦った。
「たぶんあの魔女は盗賊たちの仲間だろう、化けの皮剥がさないと厄介なことになるな……。」
アランは舌打ち混じりに、そう告げてきた。
自体は一刻を争う。
麦畑はどんどん燃えていき、盗賊のホラ話に街の人達が騙されてしまいそうだ。
あの魔女を取り押さえれば済む事なのだが、あの魔女はどういうわけか炎を操れるらしい。
魔法を使えるのは本物の魔女だけなのだが。
いや、一つだけ魔法を扱える方法があった。
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