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33,意味ない
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医務室を出た後、クラウドは蓮を自室に連れて来ていた。両腕を使えないのは不便だろうから、しばらく生活の世話をしてやるつもりだ。
「座れるか?」
蓮の腰を支え、ベッドに座らせる。一度連れ込まれたことがある、クラウドの自室。整頓されているが、洗濯物が下がっていたり、雑誌や小型冷蔵庫があったりとシオンの自室よりは生活感がある。
「レン、何でも俺に言えよ。やってやるからな」
クラウドは中腰になって蓮の顔をのぞきこむと、伸びきった前髪を上げてやり、にかっと笑う。
「…なぁ」
「おっ!やっと声出したな。何だ?腹減ったのか?」
蓮がようやく口を開き、喜んで頭をなでる。
「何で…そんなに優しくすんだよ」
「はっ?」
思わぬ言葉に耳を疑う。
「もっと、ひでぇことしてくんねーと…俺、すぐ殺られて、ティルを守れねーよ…」
ノームに手酷く痛めつけられ、文字通り痛感した役目に対する覚悟の甘さ。シオンやクラウド、他の護衛たちからもVIPのように敬われ、好意を持たれて、自分は王子の『身代わり』であり、いざとなれば命を軽んじられる立場であることを忘れていた。これでは、王子の金眼を狙う者たちに簡単に殺されてしまう。王子の『身代わり』としての役目を果たせない。
「何言っているんだ?お前、誰に何言われたんだよ?」
「優しくすんな、頼むから…っ」
隣に座り、ほほをそっとなでてくるクラウドの手を、蓮は首を振って払う。
「嫌だね」
クラウドはかまわず両手で蓮のほほを挟み、自分の方を向かせる。
「俺はお前が好きだ。好きな奴に優しくするのは当たり前だろ」
「俺は、この世界の人間じゃねー。存在しねーんだから、好きになったって意味ねーし…何してもかまわねーんだろ?だから、優しくする必要、ねーだろ…っ」
蓮は真っ直ぐ見つめてくるクラウドから目を反らし、必死に訴える。多くはないボキャブラリーで、自分の本来の存在意義を伝えたかった。
「いい加減にしろよ、レン。違う世界の人間だから存在しない?意味ない?お前、俺をバカにしてるのか?」
「…っ」
クラウドの表情が怒りを含み、蓮は言葉に詰まる。
「お前はここにいるだろ!こうやって触れるし、話も出来る!こんなにお前が好きで、心配で、助けてやりたいって思う俺の存在も意味ないって言うのか?!」
「…ああ」
肯定したくないが、するしかない。蓮はまた目を反らし、声を震わせる。
「…そうか。言ってわからないなら、身体でわからせてやるよ」
クラウドは言いながら顔を寄せ、思わずぎゅっと目をつぶる蓮の唇にキスをする。
「ん…っ」
切れた口内の痛みに蓮がびくっと震える。その唇をそっとなめ、また軽くキスをする。
「すっげぇ優しくしてやる…」
耳元でささやきながら、肩にかけてある蓮の上着を取った。
「あ、んんっ痛ぁ…っ」
蓮はベッドに座ったクラウドの膝の上に背後から抱えられ、後孔を指で慣らされながら、ものをしごかれていた。
「レン…もっと、力抜け。怖がるな」
「うぅ…っ」
そう言われても、刺激されるたびに身体は強ばり、腕も脇腹もズキズキと痛む。
「ほら、息を吐け…ゆっくり」
「は…っはぁ…あぁ…っ」
あごを上げられ、クラウドの肩に頭と背を預け、何とか呼吸する。なるべく負担が少なくなるよう、念入りに施されるそこは物足りないというようにクラウドの指を締め付ける。クラウドははやる気持ちを抑え、ゆっくりと指を抜いた。
「入れるぞ、レン」
「っ!」
蓮の両足を抱え上げ、反り返る自身の先に当てる。
「ひ、ん…っ」
今にも飲みこみそうなほどそこはひくついていても、蓮の身体は恐怖で震える。
「大丈夫。俺が動くから、お前は感じるだけだ」
クラウドは少しでもそれを和らげようとささやき、ほほにそっとキスをする。
「く…っああ…あー…っ」
ゆっくりと入ってくる、クラウドの一部。冷たい無機物と違う、熱く脈打つものに粘膜をこすられる。圧迫されて苦しいのに、気持ちが良くて。けれど、頭の隅で背徳も感じていて。
「は…!クラ、ウド…っ嫌、だ…っ」
色々な感覚で頭の中はぐちゃぐちゃで、蓮はクラウドから離れようとするが
「あぐ、うぅーっ!!」
腕の激痛に襲われて涙が散り、息も出来ない。
「レン…っ息しろ…!」
クラウドはびくんびくんと身体を強ばらせて震える蓮のあごを持ち上げ、呼吸を促す。
「ん、はぁ…っ!は、はぁ…っ」
「いいぞ…すぐに、イカせてやるから」
蓮の身体が少し弛緩したことに安堵し、足を抱えてから、萎えかけているものをぐっと握る。
「…あっ!あ…っ!」
しごきながら腰を動かし、的確に蓮の感じる部分を突く。
「気持ち、いいか…っレン…!」
「んぅ…っあ、んん…っ!」
蓮のものはすぐに硬さを戻し、濡れ始める。
「は…っ!イクぞ…っ」
「あっ!あぁっ!あーっ!!」
限界を感じたクラウドが動きを速め、蓮はぎゅうぎゅうとクラウドを締め付けて白濁を吐き出す。同時に身体の中へ放たれた滴りを感じた。
「はぁ…わかったか?生まれた世界なんか関係ない。お前は今ここにいて、俺に抱きしめられている…。存在している確かな証拠だろ…?」
クラウドは熱い息を吐きながら、ぐったりと背を預けてくる蓮に言い聞かせる。
「だから…意味ないとか、優しくするなとか、悲しくなることを言うなよ、レン…」
声を震わせながら、そっと唇にキスをする。
「ふ…ぅ…」
あんなに怖かったクラウドからの好意が、いつの間にか当たり前になっていて。それではダメだとわかったのに、もう戻らせてはくれない。また涙が蓮のほほを伝った。
蓮はそのままクラウドの自室で朝を迎えた。
「ん…」
「お…おはよう、レン」
腕枕をしている蓮が身動ぎ、クラウドも目を覚ます。
「い、痛ぅ…っ」
「大丈夫か?無理するな」
腕の痛みにうめく蓮の背を支えて、起こしてやる。見れば、右腕の湿布も包帯も取れてズレ、左腕を固定していた三角巾は破けている。
「医務室行くか。今日もじいさんいるかな」
「いい…。シオンにやらせるから…」
蓮は寝起きのかすれ声で言い、ふらふらとベッドから降りる。
「はぁ?!何でシオン?!」
クラウドも面食らって、ベッドから降りる。
「履かせろ」
「あ、おう」
床に脱ぎ散らかしてあった下着とズボンを指され、さっと履かせてやる。
「開けろ」
「おう」
ドアの鍵を外して開けてやる。
「…ん?!」
行かせるつもりはなかったのに、蓮の言う通りにしてしまったことにはっとする。
「あ…ちょっ…す、すぐに戻って来いよ!レン!!」
ふらつきながらシオンの自室へ向かう蓮の背に、あわてて叫んだ。
「お…はようございます」
身支度をしていたシオンは、早朝に突然やってきた蓮に面食らう。
「直せ」
「…はい」
包帯のだらんと垂れ下がった右腕を差し出され、思わずうなずいていた。
シオンは蓮の右腕の湿布を貼り直し、包帯を巻いていく。しかし、応急手当ての心得はあるが、医師のように出来るわけではない。包帯はややよれてしまい、左腕もしっかり固定出来ているかあやしい。
「医務室に行かれた方がもっときちんと…」
そう言っても、蓮はシオンの手元を見て何も言わない。
「…」
そうか、この人はこういう人だった。シオンはふっと笑みがこぼれる。きっとこれはただの口実で、昨日の自分の様子を気にして来てくれたのだ。
「ありがとうございます」
「何でお前が礼言うんだよ」
「そうですね」
「変なヤツ」
蓮は内心に気づかれたかと少し顔を赤くし、悪態をついた。
「これでよろしいですか」
「ああ」
「まだ動かさない方がいいですよ」
シオンは右ひじを曲げようとする蓮を止める。
「なぁ、シメたのか、アイツを」
蓮は手をゆっくり握ったり開いたりしながら、聞く。シオンの様子を見に来たのもあるが、確かめたいこともあった。彼なら、自分を襲ったのがノームだと気づいただろうから。
「シメただなんて。彼は認めてもいませんよ」
シオンは何の話かすぐに気づき、苦笑いする。
「ふーん」
「お話ししていただけるのですか」
「無駄なんだろ。話したって」
この世界の人間ではない蓮は誰に何をされようと事件にならない。だからこそ、『身代わり』護衛が出来るのだ。それがわかっていたから、蓮は何も言わなかった。
「それに、アイツがしたことはホントはお前がやることなんじゃねーの」
「…」
「嘘、つくなよ」
黙ったシオンに、釘をさす。
王子の身代わりとして金眼を狙う犯罪組織に捕らえられた時、間違いなく犯される蓮を慣れさせるため、実力ある護衛は蓮と性交することが許されている。
蓮もそれしか聞かされていないが、本当に拉致された場合、おそらく犯されるだけでは済まない。金眼の力を上げるため、拷問という言葉では生ぬるい、ぞっとするような方法で凌辱の限りを尽くされるのだろう。慣れさせるためというなら、ただ『性交する』だけではあまり意味がないと蓮は思っていた。
「初めはお前もアイツと同じだった。なのに、何で…。ティルを、王子を裏切るようなモンだろ…」
初対面の時、役目に従い、シオンは後孔での性交を教えるためだけに蓮を犯した。ノームよりは蓮をいたわる気持ちがあったかもしれないが、少なくとも愛情はなかったはずだ。
「仕方のないことです。あなたを愛してしまったのですから」
「バカじゃねーの、マジで…」
恥ずかしげもなく言うシオンに、蓮はあきれを通り越して涙がこみ上げる。
「確かに、性交が出来るという権利以外に、代々の護衛長には身代わり護衛にあらゆる方法で性的快感を与え、教え込むという役目があります。ですが、その必要がないようあなたを何人からも守る方がよほど良いとは思いませんか」
「…」
「1年前にも言いましたが、我々王室護衛は王のためだけでなく、あなたのためにも存在しているのです。あなたは国にとって、我々…いいえ、私にとって何にも代え難い大切な方なのですよ」
シオンは蓮の前に片膝をつき、そっと右手をとる。
「誓わせてください。私はあなたのためなら何でもいたします、レン」
その手の甲にキスをした。
「座れるか?」
蓮の腰を支え、ベッドに座らせる。一度連れ込まれたことがある、クラウドの自室。整頓されているが、洗濯物が下がっていたり、雑誌や小型冷蔵庫があったりとシオンの自室よりは生活感がある。
「レン、何でも俺に言えよ。やってやるからな」
クラウドは中腰になって蓮の顔をのぞきこむと、伸びきった前髪を上げてやり、にかっと笑う。
「…なぁ」
「おっ!やっと声出したな。何だ?腹減ったのか?」
蓮がようやく口を開き、喜んで頭をなでる。
「何で…そんなに優しくすんだよ」
「はっ?」
思わぬ言葉に耳を疑う。
「もっと、ひでぇことしてくんねーと…俺、すぐ殺られて、ティルを守れねーよ…」
ノームに手酷く痛めつけられ、文字通り痛感した役目に対する覚悟の甘さ。シオンやクラウド、他の護衛たちからもVIPのように敬われ、好意を持たれて、自分は王子の『身代わり』であり、いざとなれば命を軽んじられる立場であることを忘れていた。これでは、王子の金眼を狙う者たちに簡単に殺されてしまう。王子の『身代わり』としての役目を果たせない。
「何言っているんだ?お前、誰に何言われたんだよ?」
「優しくすんな、頼むから…っ」
隣に座り、ほほをそっとなでてくるクラウドの手を、蓮は首を振って払う。
「嫌だね」
クラウドはかまわず両手で蓮のほほを挟み、自分の方を向かせる。
「俺はお前が好きだ。好きな奴に優しくするのは当たり前だろ」
「俺は、この世界の人間じゃねー。存在しねーんだから、好きになったって意味ねーし…何してもかまわねーんだろ?だから、優しくする必要、ねーだろ…っ」
蓮は真っ直ぐ見つめてくるクラウドから目を反らし、必死に訴える。多くはないボキャブラリーで、自分の本来の存在意義を伝えたかった。
「いい加減にしろよ、レン。違う世界の人間だから存在しない?意味ない?お前、俺をバカにしてるのか?」
「…っ」
クラウドの表情が怒りを含み、蓮は言葉に詰まる。
「お前はここにいるだろ!こうやって触れるし、話も出来る!こんなにお前が好きで、心配で、助けてやりたいって思う俺の存在も意味ないって言うのか?!」
「…ああ」
肯定したくないが、するしかない。蓮はまた目を反らし、声を震わせる。
「…そうか。言ってわからないなら、身体でわからせてやるよ」
クラウドは言いながら顔を寄せ、思わずぎゅっと目をつぶる蓮の唇にキスをする。
「ん…っ」
切れた口内の痛みに蓮がびくっと震える。その唇をそっとなめ、また軽くキスをする。
「すっげぇ優しくしてやる…」
耳元でささやきながら、肩にかけてある蓮の上着を取った。
「あ、んんっ痛ぁ…っ」
蓮はベッドに座ったクラウドの膝の上に背後から抱えられ、後孔を指で慣らされながら、ものをしごかれていた。
「レン…もっと、力抜け。怖がるな」
「うぅ…っ」
そう言われても、刺激されるたびに身体は強ばり、腕も脇腹もズキズキと痛む。
「ほら、息を吐け…ゆっくり」
「は…っはぁ…あぁ…っ」
あごを上げられ、クラウドの肩に頭と背を預け、何とか呼吸する。なるべく負担が少なくなるよう、念入りに施されるそこは物足りないというようにクラウドの指を締め付ける。クラウドははやる気持ちを抑え、ゆっくりと指を抜いた。
「入れるぞ、レン」
「っ!」
蓮の両足を抱え上げ、反り返る自身の先に当てる。
「ひ、ん…っ」
今にも飲みこみそうなほどそこはひくついていても、蓮の身体は恐怖で震える。
「大丈夫。俺が動くから、お前は感じるだけだ」
クラウドは少しでもそれを和らげようとささやき、ほほにそっとキスをする。
「く…っああ…あー…っ」
ゆっくりと入ってくる、クラウドの一部。冷たい無機物と違う、熱く脈打つものに粘膜をこすられる。圧迫されて苦しいのに、気持ちが良くて。けれど、頭の隅で背徳も感じていて。
「は…!クラ、ウド…っ嫌、だ…っ」
色々な感覚で頭の中はぐちゃぐちゃで、蓮はクラウドから離れようとするが
「あぐ、うぅーっ!!」
腕の激痛に襲われて涙が散り、息も出来ない。
「レン…っ息しろ…!」
クラウドはびくんびくんと身体を強ばらせて震える蓮のあごを持ち上げ、呼吸を促す。
「ん、はぁ…っ!は、はぁ…っ」
「いいぞ…すぐに、イカせてやるから」
蓮の身体が少し弛緩したことに安堵し、足を抱えてから、萎えかけているものをぐっと握る。
「…あっ!あ…っ!」
しごきながら腰を動かし、的確に蓮の感じる部分を突く。
「気持ち、いいか…っレン…!」
「んぅ…っあ、んん…っ!」
蓮のものはすぐに硬さを戻し、濡れ始める。
「は…っ!イクぞ…っ」
「あっ!あぁっ!あーっ!!」
限界を感じたクラウドが動きを速め、蓮はぎゅうぎゅうとクラウドを締め付けて白濁を吐き出す。同時に身体の中へ放たれた滴りを感じた。
「はぁ…わかったか?生まれた世界なんか関係ない。お前は今ここにいて、俺に抱きしめられている…。存在している確かな証拠だろ…?」
クラウドは熱い息を吐きながら、ぐったりと背を預けてくる蓮に言い聞かせる。
「だから…意味ないとか、優しくするなとか、悲しくなることを言うなよ、レン…」
声を震わせながら、そっと唇にキスをする。
「ふ…ぅ…」
あんなに怖かったクラウドからの好意が、いつの間にか当たり前になっていて。それではダメだとわかったのに、もう戻らせてはくれない。また涙が蓮のほほを伝った。
蓮はそのままクラウドの自室で朝を迎えた。
「ん…」
「お…おはよう、レン」
腕枕をしている蓮が身動ぎ、クラウドも目を覚ます。
「い、痛ぅ…っ」
「大丈夫か?無理するな」
腕の痛みにうめく蓮の背を支えて、起こしてやる。見れば、右腕の湿布も包帯も取れてズレ、左腕を固定していた三角巾は破けている。
「医務室行くか。今日もじいさんいるかな」
「いい…。シオンにやらせるから…」
蓮は寝起きのかすれ声で言い、ふらふらとベッドから降りる。
「はぁ?!何でシオン?!」
クラウドも面食らって、ベッドから降りる。
「履かせろ」
「あ、おう」
床に脱ぎ散らかしてあった下着とズボンを指され、さっと履かせてやる。
「開けろ」
「おう」
ドアの鍵を外して開けてやる。
「…ん?!」
行かせるつもりはなかったのに、蓮の言う通りにしてしまったことにはっとする。
「あ…ちょっ…す、すぐに戻って来いよ!レン!!」
ふらつきながらシオンの自室へ向かう蓮の背に、あわてて叫んだ。
「お…はようございます」
身支度をしていたシオンは、早朝に突然やってきた蓮に面食らう。
「直せ」
「…はい」
包帯のだらんと垂れ下がった右腕を差し出され、思わずうなずいていた。
シオンは蓮の右腕の湿布を貼り直し、包帯を巻いていく。しかし、応急手当ての心得はあるが、医師のように出来るわけではない。包帯はややよれてしまい、左腕もしっかり固定出来ているかあやしい。
「医務室に行かれた方がもっときちんと…」
そう言っても、蓮はシオンの手元を見て何も言わない。
「…」
そうか、この人はこういう人だった。シオンはふっと笑みがこぼれる。きっとこれはただの口実で、昨日の自分の様子を気にして来てくれたのだ。
「ありがとうございます」
「何でお前が礼言うんだよ」
「そうですね」
「変なヤツ」
蓮は内心に気づかれたかと少し顔を赤くし、悪態をついた。
「これでよろしいですか」
「ああ」
「まだ動かさない方がいいですよ」
シオンは右ひじを曲げようとする蓮を止める。
「なぁ、シメたのか、アイツを」
蓮は手をゆっくり握ったり開いたりしながら、聞く。シオンの様子を見に来たのもあるが、確かめたいこともあった。彼なら、自分を襲ったのがノームだと気づいただろうから。
「シメただなんて。彼は認めてもいませんよ」
シオンは何の話かすぐに気づき、苦笑いする。
「ふーん」
「お話ししていただけるのですか」
「無駄なんだろ。話したって」
この世界の人間ではない蓮は誰に何をされようと事件にならない。だからこそ、『身代わり』護衛が出来るのだ。それがわかっていたから、蓮は何も言わなかった。
「それに、アイツがしたことはホントはお前がやることなんじゃねーの」
「…」
「嘘、つくなよ」
黙ったシオンに、釘をさす。
王子の身代わりとして金眼を狙う犯罪組織に捕らえられた時、間違いなく犯される蓮を慣れさせるため、実力ある護衛は蓮と性交することが許されている。
蓮もそれしか聞かされていないが、本当に拉致された場合、おそらく犯されるだけでは済まない。金眼の力を上げるため、拷問という言葉では生ぬるい、ぞっとするような方法で凌辱の限りを尽くされるのだろう。慣れさせるためというなら、ただ『性交する』だけではあまり意味がないと蓮は思っていた。
「初めはお前もアイツと同じだった。なのに、何で…。ティルを、王子を裏切るようなモンだろ…」
初対面の時、役目に従い、シオンは後孔での性交を教えるためだけに蓮を犯した。ノームよりは蓮をいたわる気持ちがあったかもしれないが、少なくとも愛情はなかったはずだ。
「仕方のないことです。あなたを愛してしまったのですから」
「バカじゃねーの、マジで…」
恥ずかしげもなく言うシオンに、蓮はあきれを通り越して涙がこみ上げる。
「確かに、性交が出来るという権利以外に、代々の護衛長には身代わり護衛にあらゆる方法で性的快感を与え、教え込むという役目があります。ですが、その必要がないようあなたを何人からも守る方がよほど良いとは思いませんか」
「…」
「1年前にも言いましたが、我々王室護衛は王のためだけでなく、あなたのためにも存在しているのです。あなたは国にとって、我々…いいえ、私にとって何にも代え難い大切な方なのですよ」
シオンは蓮の前に片膝をつき、そっと右手をとる。
「誓わせてください。私はあなたのためなら何でもいたします、レン」
その手の甲にキスをした。
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