白銀色の中で

わだすう

文字の大きさ
上 下
43 / 49

43,酔っぱらい

しおりを挟む
「レンくん、好きなお酒頼んでね」

 3人は宿内のバーに来ていた。寡黙な店主が迎えるバーは街の夜景が窓の向こうに広がり、落ち着いた大人な雰囲気が漂う。アキはカウンターで蓮の隣に座り、助けてくれたお礼に何でもおごると酒をすすめる。

「俺、飲めねーし」
「え?レンくん、学生なの?」

 ウェア王国では18歳から飲酒可能だが、学生は禁止されている。

「うまくねーじゃん、酒」
「そんなことないよー!これとか、飲んでみる?」
「あ?何だソレ」

 嫌そうな顔をする蓮にメニュー表を見せ、甘めのカクテルを指す。顔を寄せ、楽しげに会話するふたりは端から見れば仲むつまじい若いカップルのようで。

「…」

 ひと席空けてカウンターに座るクラウドはそんなふたりをただ見つめ、頼んだ強い酒に口をつけた。







 2時間後。

「しょ…っと」

 部屋に戻った蓮は、肩を貸して引きずるように連れてきたクラウドをベッドに放り投げる。

「うー…」

 普段は酒に強いクラウドだが相当飲んで悪酔いしており、真っ赤な顔でうなる。

「しっかりしろよ、酔っぱらい」

 蓮はあきれて叱咤する。結局飲酒はせず、店主が創作したというラーメンのような麺料理を食べて満足していた。

「お前、なんかヘンじゃね?」

 ぼすんとベッドに腰かける。
 あんなにテンションが高かったクラウドが、温泉に入ったあたりからろくに話もしなくなってしまった。基本、人の変化を気にしない蓮もさすがに心配になる。

「…誰の、せいだよ」
「あ?俺が何かしたか」
「何でもない…。もう寝ようぜ」

 クラウドは毛布をたぐり寄せると、もぐりこむ。

「やっぱヘンじゃねーか」

 蓮はふっとため息をつく。

「シねーの?そのつもりだったんだろ」

 このダブルベッドを見てから、いや、旅行に誘われた時点で求められれば拒否する気はなかった。拒否したところで無駄だが。

「…いいのか?抱いて…」

 クラウドは毛布から赤い顔をのぞかせ、おずおずと聞く。

「嫌ならいい。寝る」

 その情けない様にまたあきれ、蓮もベッドに上がって毛布をたぐる。

「えっ!ちょ、切り替え早くないか?!」
「うぇ、酒クセ。水かぶって来い」と、焦ってのしかかってくるクラウドの顔をぎゅっと押す。

「そしたら…好きに、しろ…」
「レン…っ」

 目を反らし、ほほを赤く染めてつぶやく蓮のかわいらしさに、クラウドは酔いが吹っ飛ぶほど心をつかまれる。飛び起きると、冷たいシャワーを浴びに行った。





 淡い灯りの中、ダブルベッドがふたり分の重さできしみ、重なったふたつの影が揺れる。

「あ、くぅ…っ」
「ん…レン…」

 首筋から胸元まで舌でなぞられ、蓮の身体は欲に忠実にほてってくる。

「酔っぱらい、の、クセに…っよく、タツな…んん…っ」

 蓮の下半身にこすりつけられるクラウドのものも熱く猛り、さっきまでベロベロだったとは思えない。

「かわいい恋人の誘いで、起たない訳ないだろ?」
「ぃあ…っ!」

 クラウドは蓮の腰を抱き寄せ、ふたりの猛るものを一緒に握りこむ。

「1回、イっておくか…?」
「あっ!や…っ」

 耳元でささやくと、そのままリズミカルにしごく。胸元を押してくる蓮を構わず抱きしめ、彼と自分のものを絶頂に追い上げる。

「んぅ…っは、ああぁっ!」
「ん…!」

 びくんと蓮の腰が跳ね、クラウドはうめき、吹き出た白濁がクラウドの手を濡らす。

「ふぁ…っあぁ…」

 絶頂の余韻に震える蓮を抱いたまま、濡れた指先を後孔へ滑らす。

「ぐ、んん…っや、だ…!」
「ふ…好きにしていいんだろ?レン」
「…っ!」

 身体をよじらせる蓮にささやけば、蓮は自分の言ったことを思い出してぐっと唇を噛む。

「ぅあ…っ!」

 固く閉じる後孔に濡れた指が押し込まれ、大きく蓮の身体が跳ねる。何度されても慣れることのない施しに、びくびくと震えながら耐える。

「大丈夫だ…気持ちよくなるまで、慣らしてやるから…」
「うぅ…」

 クラウドは大きな目に涙を浮かべる蓮の頭をなで、じっくりとそこをとろかしていく。過敏な粘膜をこすられ、前立腺をこねられ、やがてそこは柔らかくクラウドの指を締めつけ始める。

「あ…っく、クラウド…!も、ぃ、イク…っ」

 指だけでまたイッてしまいそうになり、蓮はぎゅっとクラウドの頭を抱えこむ。

「…っと!ちょっと、待て…レン」
「はぁあ…っ!」

 夢中になっていたクラウドはハッとして指を抜き、絶頂を止められてガクガク震える蓮を頭から離す。

「一緒に、イクぞ」
「ん…」

 再び硬く起ち上がったものを蓮の濡れそぼるそこにあて、深く唇を重ねる。

「んん…ふあ、あぁ…っ」
「は…レン…っ」

 ぐっと抱く力を込めると、ゆっくりと蓮の中に己が埋まっていく。熱く濡れ、ひくひくとうごめくそこはたまらなく気持ちよく、愛おしい。

「あ!く、ん…っ」

 圧迫感に耐える彼の気を紛らわそうと、胸の突起を口に含み舌で転がす。

「ん、クラ、ウド…っイ、イキた、い…」
「ああ…いいぜ、レン」

 限界を訴える蓮の震えるものを握り、ちゅっと唇に軽く口づける。

「好きだ、レン…っ好きだ…!」
「っあぁ!ああぁーっ!」

 欲と愛しさをぶつけ、蓮と己を再び絶頂に追い上げた。






「あ?アキが…何て?」
「絶対お前に気があるだろ。せっかく、お前とふたりきりで過ごすはずだったのに…」

 クラウドは不満げな顔で、ぐったりベッドに伏せる蓮の横に寝そべり、彼の乱れた黒髪をなでる。

「嫉妬かよ。情けねー」

 様子がおかしかった理由がわかって蓮はへっと嘲笑う。

「嫉妬して、悪いかよ」
「らしくねーな。お前、気に入らないヤツはすぐ殴るじゃねーか」
「ほ、保有者を殴れるか!」

 クラウドは顔を赤くして言い返す。金眼保有者の血縁である彼は他人の保有者に対しても守りたいという気持ちが強く、蓮に近づくアキに文句を言うことも出来なかった。

「それに、お前もまんざらじゃなかっただろ?年も近いし…触られても嫌がってなかったし…」

 12も年上で触れようとするだけで嫌がられる自分に比べ、彼の方が蓮に相応しいのでは、とまで考えてしまった。

「あー…聞いてなかったんか」
「え?」
「アイツに連絡先とか聞かれたけど、何も教えてねーぞ」

 ま、教えらんねーけどと蓮はふっとため息をつく。クラウドが飲んだくれている間、アキから住所やら仕事やら今後会えるかどうかやらを聞かれたが一切答えなかった。ウェア城で王の身代わり護衛をしているなんて言えないし、ましてや異世界の住人だという素性を知られる訳にはいかない。アキは金眼保有者であるが、ただの一般人なのだ。

「アイツ、多分…自分を守ってくれるヤツを探してんだろ」

 蓮は必死にすり寄り、引き留めようとしてくる彼を思い返す。さすがの蓮も保有者を邪険にあしらうのは気が引けた。

「でも、それは俺じゃねー」
「…」
「俺が守るのはひとりだけだ。お前も知ってんだろ」

 蓮が守る者。この国を治める神々しい黄金色。

 初めから、何も心配する必要などなかったのだ。蓮がここにいるのはウェア王のため。他人が何をしようと、彼の心がそちらになびくことは絶対にないのだから。

「…ああ」

 クラウドはそんなことでふてくされたのが恥ずかしくなり、ごまかすように蓮の頭をポンポンと叩いた。

「アイツなら、そのうち見つけんじゃね」
「そうだな」

 金眼保有者は人を惹きつける力がある。アキもきっと蓮に頼らずとも、相応しい者を見つけるだろう。

「寝る。明日、朝風呂行くからな」

 蓮は寝返りをうち、毛布にもぐりこむ。

「…朝っ?!まだ入るのか?ふやけるぞ!」

 一泊で風呂3回は予想外過ぎてクラウドは焦るが

「…くー…」

 蓮はすでに静かな寝息をたてていた。

「…」

 何の邪魔もなく、彼とふたりきりで過ごしたくて計画した旅行だけれど。この愛しい少年はどこにいようと人を惹きつけ、結局心はウェア王にあるのだ。わかっていたけどな、とクラウドは自嘲する。

「よしっ、一緒にふやけるかっ!」
「ぅぐ」

 毛布の上から勢いよく覆いかぶさり、うめく蓮をぎゅうと抱きしめた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

涙は流さないで

水場奨
BL
仕事をしようとドアを開けたら、婚約者が俺の天敵とイタしておるのですが……! もう俺のことは要らないんだよな?と思っていたのに、なんで追いかけてくるんですか!

帝国皇子のお婿さんになりました

クリム
BL
 帝国の皇太子エリファス・ロータスとの婚姻を神殿で誓った瞬間、ハルシオン・アスターは自分の前世を思い出す。普通の日本人主婦だったことを。  そして『白い結婚』だったはずの婚姻後、皇太子の寝室に呼ばれることになり、ハルシオンはひた隠しにして来た事実に直面する。王族の姫が19歳まで独身を貫いたこと、その真実が暴かれると、出自の小王国は滅ぼされかねない。 「それなら皇太子殿下に一服盛りますかね、主様」 「そうだね、クーちゃん。ついでに血袋で寝台を汚してなんちゃって既成事実を」 「では、盛って服を乱して、血を……主様、これ……いや、まさかやる気ですか?」 「うん、クーちゃん」 「クーちゃんではありません、クー・チャンです。あ、主様、やめてください!」  これは隣国の帝国皇太子に嫁いだ小王国の『姫君』のお話。

出戻り聖女はもう泣かない

たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。 男だけど元聖女。 一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。 「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」 出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。 ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。 表紙絵:CK2さま

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

神獣の僕、ついに人化できることがバレました。

猫いちご
BL
神獣フェンリルのハクです! 片思いの皇子に人化できるとバレました! 突然思いついた作品なので軽い気持ちで読んでくださると幸いです。 好評だった場合、番外編やエロエロを書こうかなと考えています! 本編二話完結。以降番外編。

生贄として捧げられたら人外にぐちゃぐちゃにされた

キルキ
BL
生贄になった主人公が、正体不明の何かにめちゃくちゃにされ挙げ句、いっぱい愛してもらう話。こんなタイトルですがハピエンです。 人外✕人間 ♡喘ぎな分、いつもより過激です。 以下注意 ♡喘ぎ/淫語/直腸責め/快楽墜ち/輪姦/異種姦/複数プレイ/フェラ/二輪挿し/無理矢理要素あり 2024/01/31追記  本作品はキルキのオリジナル小説です。

ある日、人気俳優の弟になりました。2

樹 ゆき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。穏やかで真面目で王子様のような人……と噂の直柾は「俺の命は、君のものだよ」と蕩けるような笑顔で言い出し、大学の先輩である隆晴も優斗を好きだと言い出して……。 平凡に生きたい(のに無理だった)19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の、更に溺愛生活が始まる――。

ある日、人気俳優の弟になりました。

樹 ゆき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。 「俺の命は、君のものだよ」 初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……? 平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。

処理中です...