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第1章
第20話 幻術使い
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「 “幻術使い” ちゃんっていう女の子がいるの!」
「幻術使いだぁ?」
「幻術使いちゃん?」
武器屋とニートは声を揃えて聞き返した。
「うんうん!小さい女の子なんだけどね、特定の相手に幻影を見せることができる術者なんだよ。私はまだちゃんと会ったことないけど、」
「それって、教会の子じゃないよね?」
ふいに魔法学者が口を挟んできた。
「え?あっ、うん!そうだよ!教会の子じゃないんだけど、よく教会のお庭で遊んでたから一部の人たちの間ではちょっと有名かな~。学者さんも知ってた?」
「うん、多分僕もその子を見たことがある気がするよ。でも、ちゃんと会ったことはないかな……」
「あの、えーっと、話が見えないんだけど……」
魔王の娘と魔法学者の話についていけないニートは、おずおずと声を出した。
「その、見たことはあるとか、ちゃんと会ったことはないとかって、一体どういうことなんだ?」
「ああ、そうだね。まずは幻術使いちゃんについて説明するね」
魔法学者は一息ついてから話を続けた。
「幻術使いちゃんはさっき言った通り幻影を見せる術を使うんだけれども、その幻影がちょっと厄介なんだ。例えば、僕が女の子の姿を見たとするよ?その女の子が、自分は幻術使いですって言ってたら、ああそうなんだーって思うよね?だけどね、僕が見たその女の子こそが、幻術使いちゃんが見せていた幻影だった、っていう可能性もあるんだ。……なかなかに厄介でしょ?」
魔法学者は苦笑いして続けた。
「だから僕たちは、幻術使いちゃんの幻影を見たことはあるけれど、幻術使いちゃん自身に会ったことはない、って思っているんだ。そもそも幻術使いちゃんの幻影術は完璧だから、教会の者たちでも見破ることが困難なんだ……あっ!これ別に僕の言い訳とかじゃないからねっ!?幻術使いちゃんは本当に凄い子なんだよ、って言いたかっただけだからね~!!」
一人あたふたしている魔法学者を尻目に、武器屋は「なるほどなぁ」と呟いた。
「でもよ、魔王の娘なら見破ることができるんじゃねぇのか?いくら強え幻術使いったって、魔王の娘の力の方が押されるなんてことはないだろ?」
武器屋の率直な疑問に魔王の娘は「もちろん!」と笑顔で応えた。
「私が本気を出せば、魔法関係でできないことは何もないよ!でもね、幻術使いちゃんはまだ、自分の姿を私たちに見せたくないんじゃないかなって思うの。悪い子じゃないんだし、幻術使いちゃんがみんなの前に出てきたいって思ったときまで、私は待っていたい……って思ってたんだけど、う~ん……」
魔王の娘は渋い表情になった。
「学者さんにいじわるしたからな~」
「ま、まあまあ!魔法使いちゃんが助けてくれたおかげで、僕は全然大丈夫だったし!それにまだ幻術使いちゃんのせいって決まった訳じゃないし!」
ぷんぷん、と頬を膨らませている魔王の娘をなだめようと、魔法学者は必死だ。
「幻術使いちゃんだってばー!私にはわかるの~!!」
わいわいと騒がしくなってきた睡蓮沼のほとりに、一人の足音が近付いてきていた。
「幻術使いだぁ?」
「幻術使いちゃん?」
武器屋とニートは声を揃えて聞き返した。
「うんうん!小さい女の子なんだけどね、特定の相手に幻影を見せることができる術者なんだよ。私はまだちゃんと会ったことないけど、」
「それって、教会の子じゃないよね?」
ふいに魔法学者が口を挟んできた。
「え?あっ、うん!そうだよ!教会の子じゃないんだけど、よく教会のお庭で遊んでたから一部の人たちの間ではちょっと有名かな~。学者さんも知ってた?」
「うん、多分僕もその子を見たことがある気がするよ。でも、ちゃんと会ったことはないかな……」
「あの、えーっと、話が見えないんだけど……」
魔王の娘と魔法学者の話についていけないニートは、おずおずと声を出した。
「その、見たことはあるとか、ちゃんと会ったことはないとかって、一体どういうことなんだ?」
「ああ、そうだね。まずは幻術使いちゃんについて説明するね」
魔法学者は一息ついてから話を続けた。
「幻術使いちゃんはさっき言った通り幻影を見せる術を使うんだけれども、その幻影がちょっと厄介なんだ。例えば、僕が女の子の姿を見たとするよ?その女の子が、自分は幻術使いですって言ってたら、ああそうなんだーって思うよね?だけどね、僕が見たその女の子こそが、幻術使いちゃんが見せていた幻影だった、っていう可能性もあるんだ。……なかなかに厄介でしょ?」
魔法学者は苦笑いして続けた。
「だから僕たちは、幻術使いちゃんの幻影を見たことはあるけれど、幻術使いちゃん自身に会ったことはない、って思っているんだ。そもそも幻術使いちゃんの幻影術は完璧だから、教会の者たちでも見破ることが困難なんだ……あっ!これ別に僕の言い訳とかじゃないからねっ!?幻術使いちゃんは本当に凄い子なんだよ、って言いたかっただけだからね~!!」
一人あたふたしている魔法学者を尻目に、武器屋は「なるほどなぁ」と呟いた。
「でもよ、魔王の娘なら見破ることができるんじゃねぇのか?いくら強え幻術使いったって、魔王の娘の力の方が押されるなんてことはないだろ?」
武器屋の率直な疑問に魔王の娘は「もちろん!」と笑顔で応えた。
「私が本気を出せば、魔法関係でできないことは何もないよ!でもね、幻術使いちゃんはまだ、自分の姿を私たちに見せたくないんじゃないかなって思うの。悪い子じゃないんだし、幻術使いちゃんがみんなの前に出てきたいって思ったときまで、私は待っていたい……って思ってたんだけど、う~ん……」
魔王の娘は渋い表情になった。
「学者さんにいじわるしたからな~」
「ま、まあまあ!魔法使いちゃんが助けてくれたおかげで、僕は全然大丈夫だったし!それにまだ幻術使いちゃんのせいって決まった訳じゃないし!」
ぷんぷん、と頬を膨らませている魔王の娘をなだめようと、魔法学者は必死だ。
「幻術使いちゃんだってばー!私にはわかるの~!!」
わいわいと騒がしくなってきた睡蓮沼のほとりに、一人の足音が近付いてきていた。
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