魔法村 TEEN'(ティーンズ)〜魔王の娘と10代のニートは臭気に毒された村を救う!?〜

まどはな

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第1章

第15話 北の森 ③

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 「ふわぁ~」

 魔王の娘が大きな欠伸あくびをした。

 ここは北の森だ。
 周りには見渡す限りの木、木、木。
 道も既に舗装されていない獣道になっている。
 ニートと武器屋と魔王の娘は、だいぶ森の奥深くまで歩いて来たようだ。

 「ちょっと休憩するか」

 「うん、そうだね~」
 
 武器屋の言葉に目元を擦りながら返事をした魔王の娘はキョロキョロと辺りを確認し、座れそうな場所を探しに行った。

 「どれくらい歩いたんだろう……」

 木が生い茂っている森の中は薄暗く、昼間のはずであるが、夕方のように感じる。

 「早朝に出発してからだいぶ歩いたからな。昼過ぎってところじゃねぇか?」

 武器屋は近くにたくさん落ちている木の枝の中から太めなものを選び、ポケットから出したライターで火を付けた。

 「おお!松明たいまつだ!」

 サバイバル生活に慣れていないニートは、武器屋のちょっとした技に興奮している様子だ。

 「なあ、俺は煙草を吸いたいんだが……お前、煙とか嫌いだろ?向こうで吸ってくるから、お前はここでこれ持ってお嬢ちゃん待ってろ」

 「ああ、うん……」

 武器屋はニートに松明を渡し、煙草を吸いに行ってしまった。

 一人残されたニートは、手に持った松明の火をぼんやりと眺めて時間を潰すことにした。



 「ふんっふんっふ~ん。あ!この辺りがいいかな~」

 鼻歌を歌いながら獣道を歩いているのは魔王の娘だ。
 比較的平らな場所を見つけた魔王の娘は、三人が座れるように、落ちている木の枝や木の実などを退かしていった。

 「うん、これで大丈夫だね!」

 場所を整えた魔王の娘は、ニートと武器屋を呼びに行こうと踵を返して走りだそうとした。
 そのとき、

 「あっ、あれっ!?」

 魔王の娘の視界に “何か” が映った。



 「二人とも遅いな……」

 ニートは未だに手に持っている松明を眺めている。
 魔王の娘は辺りを探索しに行ったきり戻ってこない。
 武器屋も煙草を吸いに行ったきり戻る気配がない。

 「えっ、これボク探しに行った方がいいのか!?」

 まだ昼間とはいえ薄暗い森の中、いつまでも一人でいるのは心許こころもとない。

 「えっ、ど、どっちに行けばいいんだ!?!?……魔王の娘!?は……強いんだったよな……。じゃあ武器屋!?は……強そうだよな……。って、別に強さとか関係ないし!!……ないよな……?何かに巻き込まれたりとかしてないよな!?!?ボクはどうするべきなんだ!?!!」

 ニートは焦り始めていた。
 余談だが、焦っているときのニートは饒舌になるらしい。

 「おい!ニート。何一人で騒いでいるんだ?」

 ちょうどそのとき、武器屋が戻ってきた。

 「ああ、武器屋!良かった……。あの、魔王の娘がまだ戻らないんだ」

 武器屋が戻ってきたことに一瞬ほっとしたニートだが、魔王の娘がまだ戻ってきていないことに心配になり始めた。

 「そうか、お嬢ちゃんが……。そうだな、俺たちも行こう」

 武器屋も魔王の娘が心配なのか、すぐに彼女の元へ向かうことにした。
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