魔法村 TEEN'(ティーンズ)〜魔王の娘と10代のニートは臭気に毒された村を救う!?〜

まどはな

文字の大きさ
上 下
15 / 27
第1章

第14話 北の森 ②

しおりを挟む
 「あのさ、臭気の原因ってまだ全くわからないんだよね?本当に魔法が関係するのかな……」

 ニートが心配そうに呟いた。

 「まあ、教会が動いているくらいだ、何かしら関係あるんじゃねぇか?そういやお嬢ちゃん、教会から指示とかなかったのか?」

 「そうそう!そのことなんだけどね!」

 魔王の娘は何かを思い出したように声を上げた。

 「魔法村にはね、王立魔法教会から派遣された魔法学者さんっていう人がいるの!ずっと魔法村に住んでいて、魔法学の研究をしているんだ~。学者さん、すっごく頭が良いんだよ~!」

 「ほう、そいつに会えば良いのか?」

 武器屋は立ち止まり、魔王の娘の顔を見た。

 「あ……うん、そうなんだけどね……」

 魔王の娘は珍しく、歯切れ悪く呟いた。

 「学者さん、ちょーっとだけ変わっててね、研究のためになると、部屋に篭もったり、森に篭もったりしちゃうんだ。……あっ!普段はすっごく優しいお兄ちゃんなんだよ!?」

 「なるほど。それじゃあそいつが今何処で何してるかわからねぇってことか……」

 魔王の娘は「うん……」と呟くと、気を取り直して声を上げた。

 「でも大丈夫!!私ね、学者さんの居場所がなんとなくわかるんだ。きっとこの森のどこかにいると思うの!」

 「そうなのか?……でも何故わかるんだ?」

 「ふふふっ。魔法使いだからだよ!!」





 ー時を同じくして、北の森の奥深くー

 「……っクション!……ふぅ、誰か僕の噂でもしているのかなー」

 白衣に身を包んだその男は、くしゃみをして少しだけずれてしまった眼鏡をかけ直した。

 頭には角帽を被り、一本に結んだ髪を垂らしている。
 角帽には王立魔法教会を象徴する模様が刻まれている。
 この男は魔法学者だ。

 「うーん、この花も昨日採ったものと同じか。そうすると、この辺りは大体調べ尽くしちゃったかなー。もっと奥に行かなくちゃー」

 魔法学者は植物の採集をしているようだ。
 地面に直接座り込んだ彼の周りには、魔法学専門書やノート、スケッチブックなどが広がっている。

 魔法学者はそれらを全てまとめてリュックにしまうと「よいしょっ」と立ち上がった。

 「……っクション!……ふぅ、やっぱり花粉かなー」

 荷物が重いからか、はたまた長時間同じ体勢で座っていたからか、魔法学者の姿はよろめきながら森の奥深く、もっと奥深くへ消えていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あなたのことなんて、もうどうでもいいです

もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。 元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)

ラララキヲ
ファンタジー
 乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。  ……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。  でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。 ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」  『見えない何か』に襲われるヒロインは──── ※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※ ※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※ ◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。

だいたい全部、聖女のせい。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」 異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。 いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。 すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。 これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

恋の行方

宵闇 月
恋愛
その昔、悲恋の末に心中した恋人が魔王の娘と勇者に転生して再会。 しかも二人が前世の記憶を取り戻したのは勇者が娘の父親である魔王と対峙した時ーー

処理中です...