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第1章
第14話 北の森 ②
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「あのさ、臭気の原因ってまだ全くわからないんだよね?本当に魔法が関係するのかな……」
ニートが心配そうに呟いた。
「まあ、教会が動いているくらいだ、何かしら関係あるんじゃねぇか?そういやお嬢ちゃん、教会から指示とかなかったのか?」
「そうそう!そのことなんだけどね!」
魔王の娘は何かを思い出したように声を上げた。
「魔法村にはね、王立魔法教会から派遣された魔法学者さんっていう人がいるの!ずっと魔法村に住んでいて、魔法学の研究をしているんだ~。学者さん、すっごく頭が良いんだよ~!」
「ほう、そいつに会えば良いのか?」
武器屋は立ち止まり、魔王の娘の顔を見た。
「あ……うん、そうなんだけどね……」
魔王の娘は珍しく、歯切れ悪く呟いた。
「学者さん、ちょーっとだけ変わっててね、研究のためになると、部屋に篭もったり、森に篭もったりしちゃうんだ。……あっ!普段はすっごく優しいお兄ちゃんなんだよ!?」
「なるほど。それじゃあそいつが今何処で何してるかわからねぇってことか……」
魔王の娘は「うん……」と呟くと、気を取り直して声を上げた。
「でも大丈夫!!私ね、学者さんの居場所がなんとなくわかるんだ。きっとこの森のどこかにいると思うの!」
「そうなのか?……でも何故わかるんだ?」
「ふふふっ。魔法使いだからだよ!!」
ー時を同じくして、北の森の奥深くー
「……っクション!……ふぅ、誰か僕の噂でもしているのかなー」
白衣に身を包んだその男は、くしゃみをして少しだけずれてしまった眼鏡をかけ直した。
頭には角帽を被り、一本に結んだ髪を垂らしている。
角帽には王立魔法教会を象徴する模様が刻まれている。
この男は魔法学者だ。
「うーん、この花も昨日採ったものと同じか。そうすると、この辺りは大体調べ尽くしちゃったかなー。もっと奥に行かなくちゃー」
魔法学者は植物の採集をしているようだ。
地面に直接座り込んだ彼の周りには、魔法学専門書やノート、スケッチブックなどが広がっている。
魔法学者はそれらを全てまとめてリュックにしまうと「よいしょっ」と立ち上がった。
「……っクション!……ふぅ、やっぱり花粉かなー」
荷物が重いからか、はたまた長時間同じ体勢で座っていたからか、魔法学者の姿はよろめきながら森の奥深く、もっと奥深くへ消えていった。
ニートが心配そうに呟いた。
「まあ、教会が動いているくらいだ、何かしら関係あるんじゃねぇか?そういやお嬢ちゃん、教会から指示とかなかったのか?」
「そうそう!そのことなんだけどね!」
魔王の娘は何かを思い出したように声を上げた。
「魔法村にはね、王立魔法教会から派遣された魔法学者さんっていう人がいるの!ずっと魔法村に住んでいて、魔法学の研究をしているんだ~。学者さん、すっごく頭が良いんだよ~!」
「ほう、そいつに会えば良いのか?」
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魔王の娘は珍しく、歯切れ悪く呟いた。
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「なるほど。それじゃあそいつが今何処で何してるかわからねぇってことか……」
魔王の娘は「うん……」と呟くと、気を取り直して声を上げた。
「でも大丈夫!!私ね、学者さんの居場所がなんとなくわかるんだ。きっとこの森のどこかにいると思うの!」
「そうなのか?……でも何故わかるんだ?」
「ふふふっ。魔法使いだからだよ!!」
ー時を同じくして、北の森の奥深くー
「……っクション!……ふぅ、誰か僕の噂でもしているのかなー」
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頭には角帽を被り、一本に結んだ髪を垂らしている。
角帽には王立魔法教会を象徴する模様が刻まれている。
この男は魔法学者だ。
「うーん、この花も昨日採ったものと同じか。そうすると、この辺りは大体調べ尽くしちゃったかなー。もっと奥に行かなくちゃー」
魔法学者は植物の採集をしているようだ。
地面に直接座り込んだ彼の周りには、魔法学専門書やノート、スケッチブックなどが広がっている。
魔法学者はそれらを全てまとめてリュックにしまうと「よいしょっ」と立ち上がった。
「……っクション!……ふぅ、やっぱり花粉かなー」
荷物が重いからか、はたまた長時間同じ体勢で座っていたからか、魔法学者の姿はよろめきながら森の奥深く、もっと奥深くへ消えていった。
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